精霊魔法というもの ㉓
「・・・あっ。お母様。お昼の後にもう少しテツさんたちと話したいんだけど、お母様も良い?」
「何の話だ?」
私の申し出にお母様が首を傾げる。
「・・・“獰猛くん”―――、ゴーレムの話とか、ちょっと色々」
「構わんが、私が居る必要が有るのか?」
用件をハッキリと言わない私にお母様が怪訝そうに眉根を寄せるけど、ここはゴリ押しする。
「・・・必要なんだよ」
「ふむ? 良かろう」
私としては、結構、大事な話だからね。
ウォーレス領的にも大事かな。
何やら有りそうだと分かってくれたらしいお母様が了解をくれた。
そのまま食堂でお昼ご飯を一緒に摂って、度々の延期で王都へ戻れずに居たドネルクさんがようやくの帰路に就く。
「では、またな」
「おう。道中、気を付けてな」
馬上で別れを告げるドネルクさんにお母様が声を掛け、頷き返したドネルクさんが未来の伴侶にも声を掛ける。
「エゼリア嬢も、また近い内にな」
「はい。ドネルク様もお気を付けて」
柔らかい笑みで返したエゼリアさんの言葉を受け取って、ドネルクさんは馬の腹を軽く蹴った。
従者を引き連れたドネルクさんの背中が通りの角を曲がって見えなくなるまで見送って、後ろを振り返る。
ケイナちゃんとの約束を果たさないとね。
「・・・じゃあ、テツさんたち。ちょっと良い?」
「構わねえよ」
テツさんが代表して快諾をくれた。
ドネルクさんが帰ったなら、少しだけ情報統制のハードルが引き下がる。
それでもストレートには口に出せないから、お母様を見上げて用件を暗示する。
「・・・お母様。話って、“私のこと”なんだけど」
「フィオレの? ミセラたちなら構わんのだな?」
「・・・うん」
用件を問題なく察してくれたお母様が、早速、情報統制に動く。
「エゼリア! アンリカ! 獲物をレティアへ持ち帰る! トリアたちも手伝ってやれ!」
「了解しました!」
一仕事終えて雑談に興じていたエゼリアさんたちがお母様に返事を返して、私も次の段取りに取り掛かる。
魔獣の積み込みを始めるとなれば、アスクレーくんもそっちに付いていく妙案だよ。
「・・・ミセラさん。お茶を淹れて貰って良い?」
「承知しました」
ミセラさんの先導で食堂へ戻り、今度はお誕生日席ではなく横並びでテツさんたちと向かい合った席に着く。
食堂内に居るのは、お母様とルナリアとミセラさんたちと私に、テツさんたち7人。
今から開示する情報でテツさんたちの不安を1つ減らして、私たちとテツさんたちの関係を強固にすることを目的とする。
再びお茶が用意されて、最初に口火を切ったのはテツさんだ。
「で? ゴーレムの話だったな」
「・・・テツさんは気付いてると思うけど、私って、元日本人なんだよ」
根幹となる情報をストレートに明かせば、エルフ族一同が瞠目する。
テツさんは反応を示さず、じっと動かない。
「そうなのですか?」
「・・・ゴーレムの傍でテツさんと話していたのは、その件」
目を真ん丸にしたケイナちゃんから恋敵認定を食らわないように、無罪を主張しておく。
状況を把握したお母様が首を傾げた。
「なぜ、バレたんだ?」
「・・・あのゴーレム―――、“獰猛くん”って、日本ではそこそこ知名度が有る空想上の生物を基にしてるんだよ」
バレた相手がテツさんで良かった。
頭の端でチラッと、今からでも壊した方が良いのかと考えたけど、他にバレちゃ困る相手って勇王ぐらいのはずだし、勇王は30年前に拉致られてきたはずだからギリギリ知らないだろう。
納得顔でお母様が頷く。
「ああ。テツ殿も知っているから、作った者が分かれば、お前の身の上も分かるという理屈だな」
「・・・うん。私が迂闊だった」
要望が通って領民たちが喜んでしまっている以上、今さら壊すのは避けたい。
ぬか喜びさせられたことで怒って暴動とか起こされても困るしなぁ。
「まあ。仕方あるまい。咄嗟に想像できるものなど選んでは居られん」
目の前に敵が居て、敵のことを考えるのが最優先な戦闘中のことだからね。
戦闘経験がまだまだ足りない私が取った行動に、戦闘経験豊富なお母様も理解を示してくれた。
「・・・ごめんなさい」
「もう良い」
バレた相手がテツさんだったのは結果オーライだけど、余計な心配を掛けてしまったことを素直に詫びれば、フッと表情を緩めてお母様が首を振ってくれる。
黙って聞いていたテツさんが痛ましそうに眉根を寄せた。
精霊魔法というもの㉓です。
情報共有!?
次回、憑いてる!?
※ ちょっと遅刻しました!




