精霊魔法というもの ⑤
ドワーフ族! ドワーフ族だよ!?
お母様のサーベルだってドワーフ族なら複製品を作れるかも知れないし、王様から貸して貰ってる魔法道具の複製品を作れるかも知れない!
刻印術式の解析が出来るかも知れないし、何なら、もっと違う魔法道具の作り方を知っている可能性だって有る!
取っ掛かりが見えなくて困っていた色々な問題に解決の糸口が見えて、私のテンションがレッドゾーンまで爆上がりする!
よしんば、刻印術式の情報を持っていなかったとしても、ピアノ線やワイヤーを作ってくれるだけでも十分に需要が有るんだよ!
主に、私の!!
本気で王国の未来を左右する可能性が有るんだから、それはもう、1秒でも早く捕獲―――、いやいや、身柄を確保―――、あ。待て待て待て! 警戒されると拙いから、もっとマイルドな言い方で!
え~っと? 保護? これだ!
「・・・保護しなきゃ! ドワーフ族に何か有ったら人類の損失だよ!」
「大袈裟だな!? まあ、方向性には同意するが」
拳を握りしめて私が力説しても、テツさんは苦笑している。
何を悠長な!
「・・・急ぐよ! 獲物の血抜きなんて後で良いから一刻も早く―――、あ痛っ!」
「もう! 落ち着きなさい!」
ぺったりと油断を貼り付けてあった後頭部に打撃を受けて両手で頭を抱える。
何事かと背中へ顔を振り向ければ、ルナリアが手刀で素振りしていた。
「・・・むー」
どうやらテンションが上がって暴走した私を止めるために、あの手刀を私の後頭部へ振り下ろしたらしい。
酷いことするなぁ。
「私たちの領地に入れば悪い奴は居ないから、安心して良いわよ!」
「そりゃあ頼もしいな」
負んぶされた状態のくせにルナリアが反り返り、テツさんが微笑ましそうに笑う。
「フィオレも! 領境の関所に伝言を伝えさせれば良いだけでしょうが!」
「・・・関所を通り過ぎてたらどうするの?」
一理あるけど、すでに通過した後に伝言したところで意味は無いよね?
「その人たちも待ってる間、レティアの町に入るんでしょ? 城門の守備兵に伝えて領主館で待たせておけば良いじゃない」
「・・・あー。それでも良っか? 領主館だと怖がって萎縮しちゃいそうだけど」
反社会的な事務所並みに領民から怖がられて、エゼリアさんたち女性騎士が清涼剤として動員されていたのがレティアの領主館だよ。
ピーシーズやピーシスガードが増えて色が薄まったとはいえ、今でも暑苦しい脳筋の巣窟であることに変化はないからね?
「悪いことをしていないなら堂々としていれば良いのよ!」
「・・・それもそっか」
ハイ。論破~。された方だけど。
牢屋へ入れたりはしないだろうから、多少怖くても耐えて貰うしかないな。
まあ、ピーシス領を出る前に関所でお仲間が捕まることを願おう。
サクサクと落ち葉を踏む音が近付いて来たことに気付いて目を向けてみれば、あのターバンの人だ。
蝶を目で追い掛ける猫みたいにジーッと私の上に目を凝らしているところを見ると、魔力の手を観察しているらしい。
近くで顔を見ると、この人もエラい美形だな。
年の頃は20代半ばぐらいに見えるけど、見た目に似合わないお爺ちゃんみたいな落ち着きが有るような気がしてチグハグさを感じる。
興味津々で魔力の手を見つめる姿は夢中になっている子供みたいだし、余計にチグハグさが増して“年齢不詳”って言葉が似合いそう。
興味に負けた様子でターバンの人が魔力の手を指す。
「ねえねえ。それって、ただの魔素かな?」
「・・・どう思います?」
わざと質問に質問で返してあげる。
ふっふっふ。簡単に教えて貰えると思うなよ?
テツさんとだってお互いに探り合いの段階なんだから、手の内を訊きに来るにはまだ早いでしょ。
私はそう思ってるんだけど、図々しいというか、自分の興味以外は眼中にないというか、この人は頓着する様子がない。
この感じ・・・!
キュピーン! と私の脳裏に閃光が走る。
分かった。この人もオタクだ。
間違いなくバルトロイさんやアスクレーくんと同じ臭いがする。
「どういう理屈なのか分からないけど、面白い魔素の使い方だね。防御術式に似ているようにも見えるけど、少し違うよね? ヒト族の術式は詠唱術式だと思っていたけど、キミは詠唱をしている様子もないしどうなってるんだろう? それにキミ、どうやって浮いてるの? その、手のような足のようなものも別々に動いてるみたいだし、どうやって動かしてるのか、もの凄く気になるんだけど」
立て板に水でスルスルと質問が続いて、答える暇さえ与えてくれない。
自分の興味には忠実で、堰を切ったように饒舌になる辺りも、オタク臭がプンプン漂ってくる。
あの魔力を目で見る方法とバーターでなら教えても良いかな?
私の天敵に成り得る技術がどういうものかは知っておきたいし。
精霊魔法というもの⑤です。
新たなオタク!?
次回、撒き餌!?




