エンカウント! ㊹
「へぇ? 今の、どうやったんだ?」
「・・・お、女の子の秘密です」
「そりゃあ、訊かねえ方が良さそうだ」
ツッコミにくいだろうと考えて口にした私の答えに、男性がワハハと楽しそうに笑う。
敵か味方か分からない正体不明の男性に手札を晒せるわけないじゃん。
助けてくれと頼んだわけじゃないけど、助けて貰った格好になったのは事実。
だからと言って信用したわけじゃない。
そうは言っても、フレンドリーな感じで警戒し辛い雰囲気の人なんだよなあ。
一応、ルナリアも警戒はしてる様子だけど、興味の方が勝っている気配が背中から伝わってくる。
そりゃまあ、これだけ意味不明な人に興味を持たないわけがないよね。
ルナリアは強い人が好みだし。
興味は有っても口を開かないってことは、シカと熊を倒しても私が「足」で宙に留まったままなことで、男性たちを警戒していることがルナリアにも伝わっているんだろう。
それよりもだ。
取り急ぎでこの人たちに訊いておかないといけないことがある。
「・・・あの。周りに隠れてる6人って、お知り合いですか?」
「凄いな。アンタ。正確な人数まで分かるのか」
アクティブソナーの反応に気付いたのは男性が熊と組み合っているときだった。
男性を追って接近してきた反応が、50メートルほどの距離を置いてピタリと止まって動かないんだから、監視というか、警戒されて近付いて来ないんじゃないかと想像は付く。
しかも、人間にしては魔力の反応が強い。
この男性の魔力反応に意識を向けてみれば、熊どころか蜻蛉の親玉よりも反応が強い。
終始、フレンドリーな態度を崩していないけど、人間離れした魔力を内包する正体不明な男性たちに気を許せるわけがない。
あ。お母様たちの反応がこっちに向かってきてるな。
バンダースナッチの始末は付いたっぽい。
お母様たちと合流できれば、もう安心だ。
だったら、話を煙に巻いてお母様たちが追い付いて来るまでこの場を繋いでおけば良いよね。
「・・・女の子の―――」
「分かった分かった。訊かねえって」
驚いた様子の男性に答えを返そうとしたら、もう良いって感じにパタパタと手を振られた。
私たちに背中を向けた男性が大きく手を振ると、木の幹や地面の起伏に隠れていた6人が姿を現す。
頭にターバンみたいな布を巻いた5人は成人男性で、羽織った外套のフードを目深に被っている一際体躯が小さな子は女の子かな?
ターバンの人たちは見たことがない意匠の衣服を着ているけど、熊を倒した男性とフードの女の子は王都で見掛けた感じの衣服を着ている。
ん? 視線を感じて目を向けたら、ターバンの1人が目を剥いてこっちを見てるね。
私? いや。私たちかな?
森の中で軍服を着た女児2人組に会うことがそうそう起こることじゃないのは分かるけど、そこまで驚かなきゃいけないこと?
ちょっと宙に浮いて見えるだけじゃん。
ターバンの人たちに警戒されてるのは分かるんだけど、むしろ、女児2人の私たちの方が“事案”の警戒をする側じゃない?
召喚したジアンさんは魔獣の討伐には間に合わなかったけど、事案の取り調べには間に合うと思うよ?
事案未遂の容疑で捕まえた方が良いかな。
魔力の手を伸ばし掛けたら、目を剥いていたターバンの人がビクッと肩を震わせた。
あれ? この人、もしかして魔力の手が見えてる?
試しに、捕食時のクリオネみたいに数本の「手」をワッと挙げてみたら、ターバンの人がビクッと身を引いた。
やっぱり見えてるっぽいな。
蛇とカエルみたいにターバンの人とジーッと見つめ合っていたら、パタパタと軽い足音をさせてフードの女の子が男性の傍へ駆け寄ってきた。
「テツさん」
「「んん? テツ?」」
女の子が口にした男性の名前に、ルナリアと2人して反応してしまった。
「んん?」
「・・・あ。ヤバ」
私たちが自分の口を押さえるのと同時に男性が振り返る。
聞き覚えが有る名前だけど、ドネルクさんから聞いた人と同一人物だとは限らないものね。
お母様たちと合流するまでは迂闊な行動を取らない方が良い。
何とも言えない場の空気が気まずい雰囲気に変わりつつあるところへ、私たちに絶大な安心感をもたらす女声が響いた。
「フィオレ! ルナリア!」
「「お母様!」」
身体強化魔法を使っているのか結構なスピードで走ってくるお母様たちに手を振っていると、カサッと落ち葉を踏む音が耳に届く。
音源に目を向ければターバンの人たちが背中を向けて立ち去ろうとしている。
あっ、ちょっと! それ、拙いって!
「・・・何もしないから逃げなくて良いよ! むしろ、逃げちゃうとややこしいことになるから!」
「「えっ?」」
私が制止するとターバンの人とテツと呼ばれた男性の2人が私を見る。
エンカウント!㊹です。
言論封殺!
次回、シックスセンス!?




