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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第3巻発売&コミカライズ、もうすぐです!】  作者: 一 二三


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エンカウント! ⑩

 推測通り、明朝ドネルクさんとバルトロイさんは交代部隊と一緒に王都へ戻ることになって、エゼリアさんとアンリカさんの家族も交えた晩餐はとても賑やかなものとなった。

 遠い親戚から近い親戚に関係が変わるし、元々、良好な関係だったから話も弾む。


「今回の南部訪問は、陛下に追い立てられただけの甲斐は有ったな」

 和やかに笑うドネルクさんは完全に締めのセリフになってるね。

 王様に何を言われて追い立てられたんだか。


「どのみち来るつもりだったのだから、遅かれ早かれだっただろう?」

「それはそうだが、思ったよりも早く魔獣素材の流通に目処を付けることが出来た」

 首を傾げるお父様ではなくドネルクさんは私に目を向けてくる。


 お? それは砂糖のことかな?

 料理に使えると領主館の料理人さんから太鼓判を貰えただけじゃなく、今は安定的な輸送に適した固形化の研究に取り掛かってるらしいよ。


 魔石は西方諸国へ流す気はないけど、砂糖なら良いよ。

 あっ。そうだ。

 ちゃんとお礼を言っておかなきゃ。


「・・・ドネルク叔父様もバルトロイ叔父様も、色々とご助力いただいて、ありがとうございました」

「いいや。こちらこそ、空の魔獣への対抗策を色々と見せて貰ったことに感謝している」

「うむ。今回の来訪は本当に実り多いものだった」

 しっかりと頭を下げてお礼を伝えると、ドネルクさんもバルトロイさんも柔らかく笑って首を振る。

 元々、本音をぶつけ合う関係だったお母様が、口角を引き上げてバルトロイさんを茶化しに掛かる。


「お前は新しい術式を覚えて喜んでいるだけじゃないのか?」

「何を言う。東部でも空の魔獣には手を焼いていたし、罠の技術で群れの魔獣に対抗できることが分かった。これはとても大きな成果だぞ」

 バルトロイさんさんが真面目な顔で言い返せば、ハインズお爺様が重々しく頷く。


「我らとしても、北部の中枢と東部の中枢との関係が強まったことで背後の憂いが大きく減じた。中央とも今まで以上に良好な関係を維持できよう」

 王妃様とお母様は子供の頃からの親友だし、テレサとルナリアと私も親友と呼んで良い関係なんじゃないかな。

 王妃様とテレサが居る限り、王家とウォーレス家の関係は揺るがないだろうし。

 師匠であるハインズお爺様の言葉を受けて、ドネルクさんも重々しく懸念を口にする。


「後は西部か」

「なに。西部とて王家直轄領に戻ったお陰で統治しやすくなった。西部以外の結束が強まった結果、ここ数十年間で国内情勢は最も安定してきている」

 先王陛下時代の治世を知るマルキオお爺様が重くなった空気を緩和する。

 お父様とお母様の頑張りで統治能力が低い貴族家を排することが出来たからね。

 数ヶ月前までの息が詰まるような状況を思えば、そりゃあみんなの表情も明るくなるよ。


「・・・王家直轄領に戻ったから協力がしやすくなったよね」

 邪魔をする貴族が居なくなったのなら、私も西部地域の復興に知恵を貸しても良い。

 王家直轄領が豊かになれば直接的に王妃様やテレサが恩恵を受けるからね。

 王家が影響力を取り戻せばテレサの治世が楽になる。


 でも、私は西部地域の特色をよく知らないから、その辺りの情報から集める必要が有るよね。

 カレリーヌ様は小国連合諸国の出身だったんだっけ?

 地図から消えた旧ジュノー王国の場所って、確か、あっち方面だったはず。

 どこから手を付けたものかと考えていると、お母様のジト目が飛んできた。


「お前。西部にまでちょっかいを出す気か?」

「・・・“平和は次の戦争までの準備期間”だよ? 安定しているときだからこそ、全力で国内を豊かにして敵の襲来に備えなきゃ」

 ネットの軍事板で知った言葉だけど、真理を突く格言だと私は思っている。


 誰の名言かと調べてみたら意訳らしくって、某大陸国家の作家さんの言葉だと言ってる人がいたけど、元ネタを調べてみたら某大陸国家の作家さんはそのものズバリな言葉は残していなかった。

 じゃあ真の元ネタは? といえば、古代ローマ時代の軍事論に記された“平和を望む者は戦争を準備せよ”の方だったっぽい。


 この記述から最も普及している拳銃弾の名前の由来になった“汝平和を欲さば(シー・ウィース・パー)戦への備えをせよ(ケム、パラ・ベルム)”ってラテン語の格言に変化して、2000年近く経った現在も世界中で語り継がれている。

 真の格言って時代を超えるんだね。

 目を丸くして私を見たドネルクさんが感心したように溜息を吐く。


「嬢ちゃんの目は、すでに次を見ているんだな。“融和派”や“中立派”の連中にも聞かせてやりたいものだ」

「いや。確かに、派閥などという狭小な視野で争っている場合ではなかろう。今までの派閥争いは、まるで“井の中の蛙”だ」

 お褒めに預かってるみたいだけど、丸パクリだからね?

 偉いのは私じゃなく古代ローマ人だよ。


 それはそうと、めちゃくちゃ欧米系のバルトロイさんの口から日本の諺が出てくると違和感がすごいね。

 元ネタは4000年の国の故事だっけ。

 言い回しがそのまま日本の諺だから、日本からの拉致被害者がこっちの世界に伝えたんだろう。


 まあ、バルトロイさんは「狭小な視野」ってバッサリと切り棄てちゃうけど、領地経営が上手く行かなくて目先のおカネしか見えなくなっている貴族も多いんじゃないかな。

 何だっけ? “貧すれば鈍する”?


「・・・豊かになれば全体を見渡す余裕も生まれると思うんです」

「豊かさが余裕を生む、か。その通りだな」

 溜息雑じりに零れたドネルクさんの感想にバルトロイさんも頷く。


「王国の立場が強くなれば“融和派”とて強気な外交が出来よう。王国のためになる外交ならば、“保守派”も反発せぬ」

「“保守派”もだな。“融和派”や“中立派”が落ち着けば、少しは“保守派”も軟化するだろう」

 選択した方法論は違っても、元は同胞だからね。


 葛藤を飲み込むように目を閉じるハインズお爺様の言葉にお父様も同意する。

 ずいぶんと軟化したのはお爺様もお父様も同じだ。

 派閥争いから家族の命を奪われたのに、お爺様もお父様も過去の遺恨を飲み込もうとしてくれている。

 ハインズお爺様たちの判断を見届けたマルキオお爺様も頷く。



エンカウント!⑩です。


飲み込む遺恨!

次回、進撃の!?

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― 新着の感想 ―
「王国の立場が強くなれば“融和派”とて強気な外交が出来よう。王国のためになる外交ならば、“保守派”も反発せぬ」 ほんとコレ 国のための外交
「平和を求めるのならば、面前で鳴いてはならぬ」という言霊が降って参りました。ご笑納くださいw
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