エンカウント! ⑤
「王都騎士団の駐屯地がどんなのか?」
「魔法術師団の駐屯地がどんなのか?」
「・・・そうです。参考にしたくって」
領主館の食堂で昼食を一緒に摂りながら質問をぶつけると、ドネルクさんとバルトロイさんは仲良く首を傾げる。
「ああ。新しく開設するアレか?」
「学校―――、養成施設だったか」
「・・・どんな施設が有ってどんな配置になっているか教えてください」
お二人とも何の話かは理解はしてくれたけど、直ぐには答えてくれない。
でも、そんなことは想定内だ。
結構、無理のある質問なんじゃないかと考えながらも、説得に掛かる。
「一応、軍事機密なんだがな。参考にする必要が有るのか?」
「・・・王都の施設に似せておけば、王都から来た人も、こっちから王都へ行く人も混乱せずに済むかなー、と思いまして」
きっと、そう言われるだろうと思っていたけど、こっちで育った子たちが王都で勤めることも有るかもよ? と臭わせてみる。
場合によっては王都の人員の再教育を、こっちで請け負うことだって有るかも知れないじゃん?
臭わせた意味も理解してくれた様子で、ドネルクさんが思案顔になる。
「ふむ・・・。本音は?」
「・・・王都と較べて良くも悪くもない施設にしておけば、王宮が文句を付けにくいんじゃないかなー、と」
お二人とも身内になったんだしと、お望み通り本音をブチ撒ければ、お二人が揃って目を細める。
勝ちに行くつもりもなければ負けに甘んじるつもりもないよ?
「嬢ちゃんは本当に面白いな。だが、悪くない」
「ああ。良い判断だな。良かろう」
「・・・ありがとうございます!」
ヨシ! 協力を取り付けたよ!
手放しで喜んだのも束の間、バルトロイさんから待ったが掛かる。
「しかし、騎士団と魔法術師団の駐屯地では多少違うぞ」
「・・・違うというのは?」
首を傾げる私の問いに、先に口を開いたのはドネルクさんだ。
「騎士団では集団行動と個人技術の訓練を重視する。乗馬技術も必須だしな」
「・・・広い訓練場と乗馬訓練場でしょうか」
重視する部分か。
訓練場と乗馬訓練場は領主館にも付属してるものね。
バルトロイさんも魔法術師団で重視するものを教えてくれる。
「魔法術師団では座学と個人技術だな。騎士団と違って術式を実際に発動できる的場が必要になる。もちろん、行軍について行ける必要が有るのだから乗馬技術も必須だな」
「・・・座学を教わる教室―――、学舎でしょうか。的場というのは弓の的のようなものですよね?」
ウォーレス領、というか、ピーシス領では魔法の基礎は各家庭で教わるもののようで、領主館の中に領軍の教室のようなものは無いね。
魔法をブッ放す場所ための的場も、城壁外に出れば原野や森が目の前に有るせいか領主館の敷地内には無い。
イメージ的には弓道場の射場と的場みたいなもので良いんだろうか?
でも、爆発系や燃焼系の術式を打てる場所だと頑丈な土塁で隔離しないと危険そうだし、水魔法を練習する子が居たときのために水捌けも考慮しておいた方が良さそうかも。
他領から預かった貴族子女を魔法の練習なら森でやって来いと放り出すわけには行かないだろうしなあ。
安全面を思えば施設内に作った方が良さそうだ、などと考えていたら、バルトロイさんの意見を聞いたドネルクさんが補足をくれる。
「的場は騎士団でも有った方が良いな。座学や儀礼を学ぶ必要が有るから学舎も欲しい」
「・・・学舎に的場に訓練場に乗馬訓練場・・・。結構、というか、丸っきり重複してますよね。重視する部分に違いは有っても必要な施設に違いは無さそうです」
必要な施設を口に出して数え上げているとバルトロイさんが首を傾げた。
「訓練場もか?」
「・・・魔法術師も体力は必要だとお母様から教わりましたから、ルナリアや私も基礎訓練は続けていますよ? ルナリアは剣術の訓練を続けていますし、私も槍の練習をすることは有ります」
一番最初にお母様から教わったことだから、毎日ではなくとも訓練は私も続けるようにしている。
私の答えにバルトロイさんが納得顔で頷く。
「小さな子供にしては体力が有ると思っていたが、そういうことか」
「・・・魔法術師も生き残らないことには戦力になりませんから、治癒魔法術師にも剣術や槍術は学ばせるようにしようかと」
私の答えに今度はドネルクさんが満足そうに頷く。
「それは良いな。魔法術師がバルトロイのように自分の身を守れるようになってくれれば、騎士団の負担も多少は減る」
「魔法術師団は学術研究院の影響が強いからな。どうにも柔軟性に欠ける嫌いが有る」
ドネルクさんの同意にバルトロイさんが苦笑する。
ははぁ。アカデミーの影響か。
魔法オタクの集まりとは聞いていたけど、インドア寄りなんだろう。
雰囲気が想像できたし、なんか納得しちゃったよ。
騎士もバカだと出世できない、というか、ナンナちゃんちのお父さんやお兄さんたちみたいに血筋はピーシス家系の末席なのに、兵士止まりで騎士になれない人たちも居るんだよ。
脳筋具合の重篤さも個性の1つなんだろうけど、末娘のナンナちゃんが示している通り家系としての基礎スペックは高いんだよね。
つまり、教育次第でピーシス血統の騎士も数を増やせる余地が有る。
そこにエクラーダ系と西部地域の領民も加えれば、無限大とまでは言わなくても優秀な騎士を増やせる可能性は非常に高い。
西部地域の住民だって元を辿ればリテルダニア王家と同じ民族で、リテルダニア王家だって元は大陸東部開拓のために西方から進出してきた戦闘民族だからね。
エンカウント!⑤です。
見えてきた養成施設の姿!?
次回、検討!?




