エンカウント! ③
これ、点と点が線で繋がって、全ての要素ファクターが揃ったんじゃない?
森を拓いて領土を広げれば広げるほど、この無尽蔵とも言える資源が手に入る。
森の土を混ぜ込んで耕せば、使えなくて放置されていた荒れ地も農地に変えられる。
天候が荒れることも滅多に無い温暖な気候の上に、地下水も豊かで、魔獣が獲れる限り肥料の材料にも困らない。
ナーガ川が過去に氾濫して水害が起こったなんて話は一度も聞いたことがない。
そして、ヤル気に満ちた人手も有る。
農作物に疫病でも流行らない限り、これで農業政策が失敗するわけがない。
まさに勝ち確。
少なくとも、失敗するビジョンが思い浮かばない。
青々と実る農作物。
見渡す限り黄金色に揺れる小麦の海。
山脈のように積み上がる食料の山々。
「・・・ふふっ。ふふふふふふ」
妄想が捗る!
素晴らしい! ご飯がたくさん!
色々と知恵を絞ってきた私の頑張りがもうすぐ結実する!
「・・・ふひ。ふえへへへへ」
「なに地面を見て気持ち悪い笑い方してるの?」
「・・・へっ?」
不意に掛けられた聞き覚えの有る声に、私の意識が現世へ帰ってくる。
ハッと目を向ければ、腰に手を当てたペッタンコ奉行が怪訝な表情で反り返っていた。
「・・・あ。ルナリア」
「まあ良いわ。お帰り!」
「・・・た、ただいま」
何とか挨拶は返したけど顔が火照ってくるのを自覚する。
油断した。脳内妄想に浸って変な笑い声を上げてるところをバッチリ見られた。
「お母様は?」
「・・・執務室で地図の清書をするって」
お構いなしに訊いてくるルナリアの問いに、普段通りを取り繕って答える。
「ふーん。お昼ご飯は一緒に食べられそうね!」
「・・・そうだね」
1時間もしない内に5の鐘が鳴るだろうし、一旦、作業を終えて領主館に帰るのだろう。
それは良いんだけど、これ、どこまで切り拓くつもりなんだろう?
改めて着々と広がりつつある更地に目を向ける。
快調に作業が進んでいるのは良いんだけど、この調子で開拓したら、あっという間に採掘場までの森が消えて無くなりそうだ。
確かに森を切り拓く許可は貰ったけど、ここまでの状況はお父様たちも想定していないんじゃないだろうか。
「・・・ねえ。何か作業の進捗が早くない?」
「そうなのよね。エゼリア叔母様たちもすごいけど、バルトロイ叔父様はさすがだわ」
おっと。私の想像とは違った答えが返ってきたぞ?
やり過ぎじゃね? って意味で遠回しに訊いたつもりだったんだけど、バルトロイさんまで一緒になって暴走してるっぽい。
「・・・さすがって?」
「風ジェットカッターはまだだけど、魔力の手はもう4本使ってるのよね」
「・・・へぇ。それは早いね」
アンリカさんが上手くはぐらかして抑え込んでいるものだと思ってたけど、常識人のように見えても魔法が絡むとお母様でも手を焼いて面倒くさがるほどの人だしね。
アンリカさんでも抑え切れていなかったか。
「王都へ帰還する前に習得するって言い始めてアンリカ叔母様と一緒に練習を始めたんだけど、叔父様は1本目が使えるようになるのも早かったのよ。残りの3本を使えるようになるのも早かったわ」
「・・・さすがは前魔法術師団長だね。ルナリアとアンリカ叔母様の教え方が上手かったのか、それともバルトロイ叔父様のイメージの取り込みが早いのかな?」
肩を竦めてルナリアが首を振る。
「わたしはコツを訊かれて、フィオレが言っていた通りに答えただけよ?」
「・・・私が言ってたコツって?」
4本に増やすコツなんて教えたっけ?
「“手足の延長で、手足は4本有る”ってヤツ」
「・・・そういや言ってた、かな?」
私の首が傾ぐ。
言ったっけ? いや。言ったかも。
追い込まれたその場の勢いで言ったのだろうから、何を言ったか自分でもよく覚えてないんだよね。
これは良くないな。
言った言わないの話でも、積み重なると自分の信用を落としちゃう。
反省している私に構わずルナリアがさらに踏み込んでくる。
「それ以上は、どうやって出せば良いの?」
「・・・ど、どうしても数が足りなくなったら勝手に増えるんじゃないかな」
私も仕組みを解明できているわけじゃないから答えにくい質問だなあ。
真面目に答えたつもりだけど、ルナリアは訝しげに首を傾げる。
「それ、ホントに? またコツを訊かれたときに、そう答えて良いのね?」
「・・・わ、私も必要に迫られて頑張ったら増えただけで、本当に増えるかは自信ない」
「そっかぁ。必要に、ねぇ」
私が正直に白状すると、ルナリアは空を見上げた。
疑問を残しながらも一応は納得してくれたみたいだね。
エンカウント!③です。
暴走中!?
次回、聴き取り!?




