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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第1巻2巻同時発売中・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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第2次領有宣言 ㉕

「その割にゴーレムはそのままだな」

「・・・違いは有機物か無機物か、かな?」

 尻切れ蜻蛉といえば、“2号”が抱きしめていたはずの“親玉”の死骸も見当たらない。


 つまりは、ダンジョンの一部になった“2号”を通じて“親玉”もダンジョンに吸収されてしまったのだろう。

 パッと思い付く“2号”と“親玉”の相違点は物質としての違いだ。

 私が立てた仮説―――、というか、耳慣れない単語にお母様が首を傾げる。


「何だ? それは」

「・・・生物由来の物質か、そうじゃないかの違い? 厳密に言うと定義が違うんだけど、加熱して炭になるかならないか、だっけかな」

 いい加減な知識で本当に申しわけない。

 私の知識って根底に有るのが食べられるか食べられないかと、どうやって生き残るかに関連して興味を持ったものだから、メチャクチャ偏ってるんだよ。


「生物か、そうじゃないか、か。魔獣は生物でゴーレムは生物じゃないな」

「・・・迷宮は生物由来のものを吸収して、それ以外のものは制御を奪って一体化するけど吸収はしない?」

 死骸と“2号”を見比べているお母様と2人で事実関係を挙げ合って考察する。


 究極的には「取り込む」という意味では同じなんだけど、インプットの方式が2種類ある?

 インプットが有ると言うことは、アウトプットも有るんだろうか?

 興味が尽きないな。

 お母様が最後に目を向けたのは陥没して空に向けて口を開けているダンジョン自体だ。


「だとしたら、この穴も塞げるんじゃないか?」

「・・・確かに。塞いじゃう? なんて判断はないよね」

 触れた無機物の制御は奪うけど吸収してしまうわけではないのなら、大穴の容量を上回る無機物を一体化させてしまえば飽和して穴が塞がる理屈になる。


 でも、砂糖が採れるかも知れないとみんなが期待している以上、利益を上回るリスクでもなければ放棄する選択肢は無いと思われる。

 事実、私の中に放棄の選択肢は1ピコたりとも存在しない。

 だって、このダンジョンは可能性の塊なんだよ?


 お肉と魔石の両立は採掘場でも両立できているけど、嗜好品が生み出す人間の熱量は桁が違う。

 いや。熱意のベクトルが違う、といった方が良いんだろうか。

 欲望という底無しの熱意が有れば、今までとは違う何かが生まれる可能性だって有る。

 魔法技術という鍵が見つからなくても、欲望が何らかの新技術を生み出してブレイクスルーを起こすかも知れないんだよ。


「そうだな。塞いでしまっては研究できん。利益を生む可能性を思えば塞いで無かったことにする判断は有り得ん」

 研究対象としての存続が真っ先に来るのがお母様らしいけど、お母様の判断も私と全く同じだった。

 領民を養い、国力を高めるのは、王家から国土の一部を預かる領主一族の義務だからね。

 リスクを無視するわけじゃないけどおカネの匂いはもっと無視できない。


 生臭い話だけど、私がおカネ―――、国力増強に血眼になるのは、かなりの問題がおカネで解決できてしまうからだ。

 国家というものは豊かになればなっただけ強くなる。

 強くなった分だけ、大切なものを守りきれる可能性が高くなる。

 今、私たちが直面している問題は、リスクの程度をどう評価するかだけど。


「・・・でも、危険になったときには塞いでしまえる可能性が有ることは分かった」

「緊急避難的措置が執れる可能性を見付けただけでも大きな成果だぞ」

「・・・うん」

 お母様も私も、ダンジョンを有効活用したい考えは同じだから、どうしても擁護的な意見になる。


 魔獣の大発生や手に負えない脅威が顕在化するような“最悪の事態”が発生しそうなときに、緊急停止装置のように打てる手が有るのとないのとではリスク評価が変わるんだよ。

 抑え込める手段が有るなら、そこまで怖れなくても良いよね?


 私の中で大幅にリスク評価を引き下げたことで優先順位に変化が生じて、さっきから気になっていた“モノ”が猛烈に気になって来た。

 よって、お母様に指し示す。


「ところでお母様。あの階段が中途半端で途切れちゃってるのが気になるんだけど」

「階段? あれがどうした?」

 お母様が首を傾げるのも仕方がないよね。


 私が気になっているのは、厳密に言えば階段ですらなく、仕事を途中で投げ出したかのように見える中途半端感だから。

 どうでも良いことと言えば、どうでも良いことなんだけど、やり残した感が強くて気持ちが悪い。

 そして、危険度評価を引き下げたことによって、ダンジョンというものに対しての興味もムクムクと頭を(もた)げてきている。


「・・・探索を冒険者に任せるのなら、下まで階段を付けてあげた方が良いのかなって」

「ふむ? 今のところ危険は無さそうでは有るな」

 私がでっち上げた屁理屈にお母様が思案顔をする。


 落ち着いた感じで思案顔はしているけど、お母様の好奇心ゲージがレッドゾーン近くにまで高まっていることに気付かない私ではない。

 もしもお母様のお尻に尻尾が生えていれば、千切れんばかりにブンブンと振っているだろうことを私は見抜いている。

 なぜなら、それは、悪魔の囁きを口にしている私も同じだからだ。


 確かに私たちは「危険なことはしない」とお父様に約束した。

 だから、「危険なことは」しない。

 ただ、ちょこちょこっと外部委託する職場の労働環境を整えるだけだ。

 大義は私たちに有る。


「・・・迷宮の中にも外にも、危険が及ぶ範囲内に魔獣の反応はないよ」

「体内保有魔力の方はどうだ?」

 目の奥が笑っているお母様に澄まし顔で訊かれて平たい胸を張る。


「・・・ぜんぜん平気」

「なら、階段を付けつつ入口まで降りてみるか」

 ヨシ! お母様、大好き!

 冒険に目を輝かせるヤンチャ坊主みたいにニヤリとお母様が笑って、私は小さくグッとガッツポーズを取る。


「・・・異変を感じたら緊急脱出するから、このまま行くね」

「おう。土の生成は私がしてやるから、複製と整形に集中しろ」

「・・・うん。ありがと」

 高度10メートルから「足」を縮めて地面から2メートルほどの高さにまで下がれば、もう大穴の中だ。


 魔石を通してお母様が土を生成して、私が魔力の手で受け止めた土は爆速コピーされて「手」から零れ落ちる。

 空間固定した踏み段が受け止めたコピー土を吸収して形を成していく。

 1段1段、斜めに下った“2号”のコンニャク板に階段が貼り付いて、ダンジョンの一部として仲間入りを果たす。


 そうして10メートルもコンニャク板―――、いや。コンニャク“坂”を下りきれば、“2号”の頭がめり込んだ大穴の底に到達する。

 そこに有るのはポッカリと口を開けた横穴だった。



第2次領有宣言㉕です。


ダンジョン考察!

次回、不思議空間!?

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― 新着の感想 ―
フィオレ湖もダンジョンなんじゃないかな〜と思ってるんだけど 同じ水系地下資源として参考にならないかな
ダンジョンマスターが出てきたりして
砦の壁まで含めてダンジョンなってダンジョンが認識したら、砦中にウゾウゾと蜘蛛がひしめいたりするんかな (*´ω`*)コワイナー
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