幼女サバイバー ⑧
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
土手の斜面に芽吹き始めている野草をチェックしながら森の方向へと川岸を遡上して上流を目指す。
花の蕾を付け始めている「カラスノエンドウっぽい何か」の新芽を摘まみ採っては口へ運び、ギボウシが新芽を出していることを横目で確認する。
青臭さの中に、ほのかな甘みが有って、カラスノエンドウは生食で普通に食べられる。
葉の茎の部分が食べられるギボウシは毒が有るバイケイソウと似ていて紛らわしいけど、葉の葉脈の付き方を見れば誤食することは無い。
可食部分が少ないし茹でなきゃ灰汁が強いから、今は採らないけどね。
フキノトウやノブキも確認したけど、こっちも茹でなきゃ食べられないから、今はパス。
伸び始めたばかりのセリの群生を見つけたので、引き抜いて小川の水で洗って根の先を毟って茎を齧る。
セリも生食できる野草だけど、湯通ししないと苦味と渋みが有るので大人の味だね。
子供の敏感な舌には刺激が強いので、セリが大量に採れても、おなか一杯にまでは食べられそうにない。
肥大した根に強力な毒が有るドクゼリも見つけたから、護身用の武器が手に入ったら採りに来よう。「トリカブトに近いぐらい」って言ったら、どのぐらい強力な毒か分かるよね。
皮膚からも吸収される神経毒で、痙攣や麻痺を引き起こすから、食べるどころか素手で触るのも止めたほうが良い。
その毒を護身用の武器の刃に塗っておくんだよ。
私と一蓮托生のこの子を守るためなら、毒を塗った武器で襲撃者を毒殺することだって私は躊躇わないよ。
小川でセリを洗うときに川エビが居ないか探してみたけど居なかった。
川魚は、体長20センチメートルは有りそうな魚影をちょくちょく見るから、ワナを作りたいなあ。
小川に川魚が棲息しているのを確認できた以上、捕らないという選択肢は無い。
ワナ作り用の素材も集めなきゃ。
紐と細い枝で巻き簾を編んで籠を作って内向きの返しを付ければ、川魚用のワナは意外と簡単に天然素材でも作れるんだよ。
漁師さんがカニを捕るカゴ網漁具とワナの原理は同じだね。
力が強い大きな魚だとワナを壊されて逃げられちゃうだろうけど、体長20センチメートル程度の魚ならそこまで力は強くないし、巻き簾の目を細かく編めれば編めるほど、より小さな魚まで捕れる。
紐は藁で縒るか蔓草か何かで代用かな。
試行錯誤の作業は嫌いじゃないし、トライアンドエラーで頑張って捕ろう。
川魚の身は吸虫や有棘顎口虫なんかの寄生虫が居ることが多いから、切実に火を起こす手段が欲しいよね。
まだ渓流って感じではないけど、小川を遡上するにつれ徐々に増えてきた木々や大岩の地形を避けながら森の奥へと踏み入って行く。
まだ人里に近い辺りだからか、この森って広葉樹が多いんだね。
奥へ入れば入るほど、段々と木々が太く大きくなってきている気がする?
ちょうど、いま私が手を突いたこの樹なんて、幹の太さは私が5人手を繋いでも一周できないほどだし、樹の高さは30メートル以上あるんじゃないだろうか。
30メートルって10階建てのビルと同じぐらいの高さだよ。
木々に遮られて見えていなかったけど、森の中に入ると、予想していた以上に地形が起伏に富んでいて、微妙に標高も上がってきているように思う。
そこここに野生動物の息遣いが色濃く息づいているように感じられて、警戒心が引き上がると同時に、お肉にありつけそうだと安心感も増してくる。
時折、倒木も有ってキノコを見つけたけど、見たことのない姿と色だったので、いくら空腹でも食べるのは自重した。
生きている小動物にでも食べさせれば毒キノコかどうかの判別は可能だと思うので、いつか試そうと心のノートにメモしておいた。
さて、食べ物を探すばかりじゃなく、寝込みを襲われない寝床も探さなきゃね。
朽ちた倒木の洞は危険かな? などと考えつつ食べられるものを探しながら下草を掻き分けて進むと、ぽっかりと広場のように開けた場所に出た。
数本の樹が倒れていて、直径100メートルほどの空間に明るい陽光が降り注いでいる。
あっ! 緑色の絨毯のようにシダ類の下草が覆う地面の真ん中辺りに、思わぬ植物の群生を見つけて駆け寄った。
「野イチゴ!」
早生種もいくつか有ったはずだけど、白い花に混じって実を付け始めたばかりに見える蔓草には、早くもぽつぽつと赤く色付き始めたものが見受けられる。
葉の形が私の知る野イチゴ類と微妙に違うし背丈が高い気がするけど、どう見ても野イチゴの一種だと思う。
野イチゴの旬は晩春から初夏だったはずだけど、この辺りの気候は私の推測よりも温暖なのかもしれない。
野イチゴ類に毒がある品種は無かったよね? と、少しだけ警戒心を残しながらも、赤く熟した実を摘んで口に運んでみる。
「ん~~! 甘酸っぱい!」
苦味も刺すような刺激も無いから、毒は無いものと判断した。
野イチゴ類の中ではヘビイチゴが食用に向かないと言われているけど、ジャムなどに加工して食べる地域もある。
そのヘビイチゴだって花弁の色が黄色だから他の野イチゴ類との見分けは簡単だし、美味しくないだけで誤って食べても毒は無い。
素晴らしい! これは勝てるかも!
何に勝つのかは、さて置き、野イチゴの茂みに突入し、熟した実を探して摘まんでは、どんどん食べる。
弱りきった体に果糖が染み渡って涙と鼻水が出て来るよ。
果たして、この涙と鼻水は私が流しているものなのか、この子が流しているものなのか。
どっちでも良いよね。
命にかかわるほど、おなかがすいているときの甘い果物の美味しさは、地獄の底で天使を見つけたぐらいに格別なのは、私も知っているもの。
糖分を供給された脳細胞が活性化して、思考が鮮明になった気がする。
落ち着いて周りを見回すと、ここの広場で野イチゴの他に生えているシダ類の下草は、ワラビっぽいかな? ワラビの新芽が食べられるのも夏の初めまでだ。
どのみち、シダ類の新芽は灰汁抜きしなきゃ食べられないから保留になるけど。
「おお。タイムっぽいのも生えてるね」
試しに葉先を一枚摘まんで口に運ぶ。
毒が有ったら怖いから、軽く噛んで嚥下せずに舌の上で転がしてみた。
青臭さと一緒に、柑橘類っぽい爽やかな香りが鼻の奥に抜ける。
暫く待ってみても嫌な感じの苦味や痺れは来ないね。
毒は無いものと判断して嚥下する。
「ヨシ、ヨシ。良いね」
タイムは殺菌効果が高く防腐効果も有るハーブで、肉や魚の保存食を作るときに塩と一緒に揉み込んで使える。
試したことは無いけれど、食中りを防ぐ胃腸薬的な効果も期待が出来たら良いな。
幼女降臨エピソード⑧です。
サバイバルフィールドに到着しました!
ご都合主義バンザイ!




