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ングラ・ライ国際空港にて

作者: 海山 里志

 耳慣れた四点チャイムが鳴る。ブルーバックの出発便表示板が、成田行きの便の搭乗手続き開始を告げる。

「これで、お別れなのね……」

 目の前の褐色の美人――アニタが俯いて呟く。私は彼女の頭をそっと撫でた。

「でも、会えなくなるわけじゃない。君が望むなら、LINE通話も毎日だって……」

「でもそこにあなたの温かさも、匂いも、鼓動もないわ!」

 アニタは顔を上げ、目に涙を浮かべて叫ぶ。私は彼女を抱きしめ、頭に鼻をつけ深呼吸して言った。

「じゃあ、今感じてくれ」

 アニタは私の背中に腕を回し、胸に顔を押し付けた。

「私の想いは、ここインドネシアの太陽より熱いわ」

「感じているとも。その光は、日本にいる私の心もきっと優しく温めるだろう」

 私たちはしばらく互いの存在を確かめ合った。そっとどちらからともなく身体を離し見つめ合った。

「なるべく早く戻る。その時は、結婚しよう、アニタ」

「待っているわ、あなた」

 私たちはそっと口づけを交わす。それを最後に私は踵を返す。

「無事に帰ってきてね! あなた!」

 アニタの見送りに、私は振り返り、手を振った。その時、耳慣れた四点チャイムが再び鳴る。

「ガルーダインドネシア航空880便東京成田行きにご搭乗のお客様にお知らせいたします。ガルーダインドネシア航空880便は機体不具合のため、本日欠航いたします」

 お互い目が点になる。直後アニタが駆け寄り、抱き着き、頬にキスをしてきた。

「これでもうしばらく一緒にいられるわね、あなた!」

「あ、ああ……」

 私は内心参ったなと思いながらも、悪くないとも思ってしまうのだった。

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― 新着の感想 ―
アニタにとってはよかった。 インドネシアでは実際にありそうですね。
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