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幕間4話 「親愛なるレオへ」

今もあの姿が目に焼き付いている。暗い地下の広間そして広間に鎮座する矯正用の椅子。そしてその椅子に横たわる身体中を切り刻まれ血塗れで虫の息の少年。


それは私の双子の弟レオナルドの姿だった。


「レオ!」


大聖堂の広間に声が響く。


朽ち果てて廃墟となった大聖堂ここは教団の拠点の一つだった。


どうやら私は眠っていたらしい、眠ると何時も見るあの光景そう今から5年前のあの悪夢の地下室を思い出す、当時の私には双子の弟のレオナルドが居た。気弱で寡黙何時も私が側に居ないと駄目な子だった。


そんなレオもあの地下室であの男に切り刻まれた、何度も私はレオを呼んだ血塗れになりながらだんだん瞳の光が消えていくレオを見て私は初めてこの世界に絶望した。


男は私にも手を掛けようとしたがそれを私達の育ての親マザー•グレースが止めた。私は虫の息のレオナルドと離され連れて行かれた。必死にレオに叫ぶ中私は地下室から連れて行かれた。


あれから5年私は17歳になった。私はあの後マザー•グレースによって教団の施設へと連れて行かれた。


そして私は教団の者達からあらゆる拷問を受けた。まずは指に針を刺され泣き叫んだ、その激痛に私は何度も気を失ったがその度に水を掛けられ意識を返されていた。


後に聞いたのだが教団は覚醒者を作り出す為、儀式と称し苦痛を与え続けていくのだという。


拷問は覚醒者になるまで行われ私の身体はボロ雑巾の様に悲惨な物へとなっていた。毎日続く拷問それでも私はレオの仇を取るために痛みに耐え続けていた。


そして私が拷問を受けて100日目彼女に会った。


その日私は椅子に縛られていた、椅子に縛られて行われる拷問は主に指を痛め付けるものだっただが私は既に20日目に全ての指が腐り落ちていた。それ以降椅子に縛られる事はは無かったのだが。


「久しぶりね、リサ•クライフ可哀想にまだ覚醒出来ていないのね」傷だらけの私の前に全ての元凶であるマザー•グレースが現れた。


「こ、こ、殺してよ、もう、、耐え、、られないの、、」私は全ての歯を抜かれた口で何とか答えた。


「残念だけどそれは私が決める事じゃないのよリサ、全ては神の意思によって決まるの」マザー•グレースは慈しみを込めた目で私を見る。


「でも今回で駄目なら貴方は廃棄されるは、そうならない為にも神に祈るのね」マザー•グレースが部屋から出ると、何時もの拷問官が入ってくる。その拷問官の名前はギャレット•ウィンダム人間を痛め付けるのに快感を覚える変態だった。


「おはようリサ!今日も相変わらず惨めで醜悪な姿だね生きてるのが不思議なくらいだよ」ギャレットは笑みを浮かべながら私を見るその瞳には私を見下す暗い感情が写っていた。


「今日で君ともお別れか、初めて会った時はあんなに私に対して暴言や生意気な態度をとっていた君が今ではお淑やかな淑女だね!ほら見てご覧よ私の教育で生まれ変わった君の姿を!」


ギャレットは背丈程の写し鏡を部屋に入れると鏡を私に向ける。


「嫌、、止めて、、、止めてよ!」


私は自分の今の姿を見たくなかった、長く黒かった髪は所々引き千切られ頭皮にはあの男にやられた熱した油を掛けられた火傷があった。


顔も紫色に変色し右目が腐り落ち、その暗い空洞には白い(うじ)が湧いていた。唇はすでに切り取られており歯茎が剥き出しになっており、ガリガリに痩せ細った身体は複数の打撲による痣と切り傷がありその切り傷を塞ぐための縫合後から黄色い膿が湧いていた。


「全く誰がこんな酷い事をしたんだろうね、、、私か?いやぁすまないね唯のジョークだよ笑ってくれよ!」ギャレットは一人私に話掛けながら嗤っていた。


「さてと今日で君への教育も最後だこれで覚醒者になれなければ君は死ぬ、せいぜい神様に祈るんだね」


ギャレットは冷たい表情にかわると焼き窯を持ってきた。


「最後の私からのプレゼントはこれだ!」


ギャレットは焼き窯から真っ赤に焼けた鉄の棒を取って見せた。


「これを君の大事な所に入れる、初めてだったかい?大丈夫もし血が出てもこれなら傷ごと焼いてくれるさ。


ギャレットは冷たい笑みを浮かべながら言った。


「止めて!、、、お願い!それだけは許して!」


私は必死に懇願する。


「可哀想に本当は私がお相手したかったんだが、残念な事に今の君では私は絶頂(イケない)んだよだからこれで許してくれよ!」


ギャレットは私の足を開くとそのまま熱く焼けた棒を挿れた。


「あつ!グギぃァァァ!」


今までの拷問よりも苛烈で残虐な行為だった、私は椅子に縛られながら全力で暴れた、部屋は肉の焼けた臭いと痛みから垂れ流された糞尿の悪臭で立ち込めていた。


「良いね!良いよリサ!これこそ君が最後に見せる命の輝きだよ!さあもっと見せてくれ!」狂人は更に2本の棒を挿れた。私は痛みに耐えきれず最後の力を振り絞り舌を噛み切った。


「待て!待て待て待て待て待て待て!自決だと!?それでは私の今までの下拵えが台無しだ!死ぬなリサ!頼む後生だ最後は私に決めさせてくれ!」


口の中の血で溺れながら私は狂人に対して復讐した気になっていた、レオ今から貴方の元に行くからね私は消えゆく意識の中、心の中で最愛の弟に会えるよう願っていた。


「やあ気付いたかな?」目を覚ますとそこは暗闇の空間だった、辺り一面闇に包まれており静寂が私に覆い被さっていた。


「まだ起きたばっかりで混乱しているのかな?」


私はさっきの声に反応する様に振り返った。するとそこには純白のワンピースを着た美しい少女が居た。


「綺麗、、」私はその姿を見て無意識に言葉が出た。


「いきなりそんな事言われると照れるなぁ、、」


少女は白い肌を桃色に染めながら美しいブロンドの髪を触る。


「初めましてだねリサ•クライフ私の名前はルナ君にある選択を選んでもらう為に来たのさ」


目の前の少女ルナは優しく笑い掛けながら言った。


「選択?私はどうなったの?」私が恐る恐る聞くとルナは溜息を付きながら憂いげな顔で答えた。


「残念ながら君は死の境を彷徨っているんだよ」


ルナの言葉を聞き私は一人納得していた。


「おや、意外と落ち着いてるんだねてっきり僕は泣き叫んだり、はたまた発狂すると思ったんだけどね」


「もう良いの私には大切な家族が居た、だけどあの子はレオはもう居ないだから私も死んでレオの所に行きたいの!」私はルナに自分の気持ちを打ち明けた。するとルナが急に笑い出す。


「何が可笑しいの?私の願いはそんなに馬鹿らしい?」


「いやぁごめんね一つだけ君に伝え無きゃいけない事があるんだ」ルナは一息落ちつけながら言った。


「レオナルド•クライフは生きて居るよ」


その言葉を聞き私は全身の力が抜けたのを感じた。


「レオが生きている?レオが?レオが!」


私の頬を大粒の涙が伝っていた。


「良かった、本当に良かった!」


その姿を見てルナが優しく微笑む。


「君達姉弟は本当に仲が良いね嫉妬しちゃうよ、さあ嬉しい報せを聞いた後で本題に入ろうか?」


ルナの表情がスッと無感情な顔に変わる。


「今君は生死の境を彷徨っているそんな君には二つの選択肢がある。」ルナが指を2本出しながら答える。


「一つは目はデッド、君は安らかな死を迎えその魂は楽園へと送られる」ルナが指を一つ曲げ続ける。


「2つ目はフリークス、君には僕と契約してもらい異形の化物になるんだ死後は楽園へは行けず僕のものになってもらうよ」


「レオは弟はフリークスに成ったのね?」


私が聞くとルナは深紅に染まった瞳を輝かせる。


「本当に君達は仲良しだねそうだよレオはフリークスを選び化物に成ったのさ!」


「だったら私の答えも決まっているは」


私は覚悟を決めて言った。


「私はレオに再会出来るなら化物にでも悪魔にでもなるは」その言葉を聞きルナが冷たい笑みを浮かべる。


「契約成立だね、あぁ待ち遠しいよ君達2人が僕のものになる日がね」ルナは頬を染め恋する乙女の顔になる。


「それじゃあまた会いましょうねルナ」


「うん、また会おうねリサ」


私はルナに別れを告げると再び深い眠りへと着いた。


「クソ!なんて事だ!今まで掛けた時間が無駄じゃないか!」拷問室で既に息絶えたリサの亡骸を他所にギャレットが叫ぶ。


「後少しで完成だったのに!何故だ!何故なんだ!」


ギャレットは我を忘れており背後の彼女に気付かない。


「最悪の目覚めね、最初に見たのがあんただなんて」


ギャレットが驚愕し振り向くそこには彼が教育する前の姿のリサが居た。


「リサ!なんて事だ!あの醜くも愛らしい君が居なくなっているじゃないか!」ギャレットが錯乱状態で向かってくる。


「さあまた一からやり直そう!さあ!」


ギャレットが掴みかかる瞬間ギャレットが崩れ落ちる。


「あれ?何だ?何故私が倒れる?」


ギャレットが足を見ると彼の足を複数の影が貫いていた。


「私の足がァァァ!クソ!何をした小娘!?」


ギャレットが絶叫する中リサは酷く落ち着いていた。


「これがルナのくれた贈り物ねありがとう」


リサは満面の笑顔を浮かべると暗い地下室の闇が一斉にギャレットを貫いた。


「さあ、行きましょうか」リサは穴だらけになり血を噴水の様に噴き出すギャレットを置き部屋を後にした。


それが私の初めての覚醒だった。あれから5年私は表向きは教団の所属でありながらいつかクーデターを起こす為仲間を募り鍛錬を続けていた。


「団長こんな所に居たんですね」大聖堂の扉が開かれ赤毛の少女が入ってくる。


「もう、探したんですよ?さあ行きましょうかステファノさんが待ってますよ」


「ごめんね、マルシェすぐに行くよ」


私の目的はただ一つ最愛の弟であるレオに再会する事それまで私は生き続ける。


「必ず会おうね親愛なるレオ」


「団長行きますよ!」


「ああ、直ぐ行くよ」


いつか再会するその時まで私の戦いは続く。


幕間の物語 最終話 完


次回 新章 「嘆きの聖女と追悼の鐘」掲載予定


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