幕間2話 「常闇の夜叉」
「今宵は新月か外は霧雨が降っているな」宿の2階から外を眺める一人の男が居た。男は片手にお猪口を持ちもう片方の手には自らの愛刀を抱えていた。
「異国の旦那様今夜は冷えますよさあこちらへいらして下さい」男が声の方を見ると美しい遊女が着物をはだけさせ奥の和室に引かれた布団の上で男を誘った。
「こんな美人にお呼ばれするなんてこの国に来た甲斐があったな」男は軍服の様な制服を脱ぐと女の所へと向かった。
「旦那様綺麗な瞳をしていますね」遊女がそう呟きながら男の顔を撫でる。
「ああ、母親譲りの碧眼でないつも羨ましがられたよ、たがな俺なんかよりも君のその白い肌の方が綺麗だよ」男の口説き文句を聞き遊女が頬を紅く染める。
「旦那様ったらお上手ですね、でもやはり男は皆外面しか見ていない馬鹿ばかりだな!」
遊女がそう叫ぶとたちまち遊女の顔が鬼面に代わる男は直ぐに女から即座に離れる。
「またかよ、俺の相手するは皆こればかりだな」
見上げる程の鬼女となった女が叫ぶ。
「異国の男とは珍しいさぞ変わった味がするのだろうな、さあ今宵の我の供物となれ!」
鬼女か低い唸り声と共に飛び掛かる。
「お熱いね、それじゃあお仕事と行きますか」
鬼女の爪が男に触れる瞬間鬼女に痛みが走る。見ると鬼女の腕がはね飛ぶ、「お前様、わっちと言うものが在りながらまた女遊びか?」
「すまねえな昼膳、機嫌なおしてくれよ?」
鬼女が後ろへと仰け反り見ると男の隣に着物を着崩した妖艶な女が居た。
「誰だその女は?さっきまで居なかった筈!」
鬼女の問いに女が答える。
「わっちの事か?わっちはこの男の武器であり相方、そしてこの男の伴侶だ」女が自身ありげに銀色の髪をかき上げながら言った。
「おい、おい、伴侶は言い過ぎだろ?」男が慌てて反論するが。
「わっちでは不服か?」女の鋭い指摘を受け男は渋々黙る。
「何を痴話喧嘩などしている!お前等2匹我の供物にしてやろう!」鬼女が鋭い鉤爪をふり乱し襲いかかる。
「まあよい、この件はあやつを片付けてから話すとしようかお前様?」
「ああ、そうだな頼むぜ相棒!」
男の呼び掛けに応える様に女が頷くと、髪に付けた簪を手に取る。
「一尾の力よ顕現せよ!」女が唱えると簪の見た目が変わり金色の槍に変わる。
「お前様使え!」その槍を男に渡すと男が槍を構える。
「今日はこれかじゃあ使わせてもうぜ」
男は槍を構えたまま鬼女を迎えうつ。
「そんな槍一本で我を貫けると思うか?死ねえ!」
鬼女の鉤爪が届く瞬間男が動く、男は瞬時に懐に入り込むと鬼女の心臓目掛けて槍を突いた。
槍は鬼女の皮膚を貫き心臓に届くかと思われただが鬼女の皮膚の下は分厚い筋肉の層になっており届かない。
「残念だったな人間!」鬼女が勝ち誇って言った瞬間。
「切り札は最後に見せるもんだぜ?」
男はニヤリと笑うと槍に自らの力を込めながら言った。
「水の精よ我の呼び掛けに応えよ!」
男が唱えると鬼女が苦しみだす。
「何だ?我の身体の内で何かが暴れ出している?ゴボ、グバ、ゲババ!」途端に鬼女が溺れだすそして鬼女はのたうち周りながら陸の上で溺死した。
「相変わらず残忍だなお前様よ、まあそんなお前様だからこそわっちは惹かれたのだがな」
女が鬼女の横で倒れ込む男に近づく。
「悪いな昼膳、今夜はお預けだまた次の晩にしてくれ」男が言うと女が仕方ないと頷く。
「分かった、だが次にわっちを呼んだ時はまとめて相手をしてもらうぞ?」女はそう言うと男の愛刀へと変わった。
男はそのまま目を閉じ深い眠りへと着いた。
「定期連絡を行いたい教会に繋いでくれ」翌朝男は宿を出ると近くの連絡所へと向かった。
「お久しぶりです司教様、パラディン•アーサー•イグナトフ定期連絡を行います」
アーサーは今回教会からの要請で極東の国、大和へと来ていた。その要請とは大和の国で最近新たなるフリークスが見つかった為その保護の為に駆り出されていたのだ。
「先日宿で化物に襲われましたがこの国ではあれが日常茶飯事なのですよね?」報告書によるとこの国では太古の昔から妖や物の怪と呼ばれる異形の者達が跋扈していたと言う。そしてこの国の人間達にも異形の血が引き継がれておりたまに覚醒遺伝により異形として生まれると言う。
「今回の保護対象の村まで後少しですので保護対象を確保次第また連絡します」アーサーは報告を終えると腰に差した愛刀から思念が送られて来る。
「お前様、昨日の傷は大丈夫か?」
「ああ、問題無い心配してくれてありがとうな」
俺がフッと笑いながら言うと。
「お前様、あまりわっちを惑わすでない我慢出来ぬだろう?」熱の籠もった声で言う相方にすまないと言い俺は近くの馬車に乗って目的地まで向かった。
「異国の旦那、ここから先は俺達は近付けないんだなんでもこの先の村で夜叉が出たらしいからな」
馬車の主人が心配そうに言う。
「大丈夫、そう言う者の扱いには慣れているので」
アーサーは馬車の主人に見送られながら暗い山道を進んで行った。
3時間後
「ここが例の村か」山道を抜け開けた場所に出た見ると麓の方に小さな集落があった。だがその村には人の気配が無く閑散としていた。
すっかり日が落ちてしまい辺りは暗闇に包まれていた。アーサーは一人閑散とした村を散策する。そしてある家屋に人影が見えたので向かった。
「夜分遅くにすいません話を伺いたいのですが?」
アーサーは家屋の中で蹲る男に話かける。
「すいません?お話を、、」アーサーが苛立ながら聞いた瞬間男が無言で立ち上がり振り向く、するとその顔は腐っており顔中大量の蛆が湧いていた。
アーサーは急いで家屋から飛び出た、だが飛び出た村の広場にも大量の屍鬼が湧いていた。
「昼膳、力を貸してくれるか?」アーサーが問い掛けるが返事が無い。
「クソ!こんな時に休眠中か」アーサーは直ぐに精霊を呼び出す。
「火の精よ我の呼び掛けに応えよ!」アーサーの呼び掛けに応えるように俺の手に火球が集まる。
「燃え尽くせ!」アーサーは手に集まった火球を地面に叩き付ける、すると地面から火柱が上がり屍鬼を焼き尽くした。
「お前様、すまないな昨日力を使い過ぎておって眠っていた。」昼膳が人の姿になり言ってくる。
「良いぜそんくらい、それに本番はこれからだ」
屍鬼が燃え上がる光に照らされながら今回のターゲットが現れた。
その姿は背丈は2メートル程、長く腰まで伸びた黒髪に漆黒の羽織りを纏いその顔は白い般若の面で隠されていた。そして手には背丈程ある薙刀を持っていた。
「あれが今回の保護対象常闇の夜叉だ今まで見て来た化物の中でも断トツの存在感だな」
夜叉は薙刀を左右に振るその振った風圧で燃える屍鬼の炎が消えた。
「お前様今回はわっちの全ての力を貸そうぞ」昼膳が今までにない程の警戒をしていた。
「分かった、じゃああれを貸してくれ」
アーサーが言うと昼膳が静かに頷く。
「九尾の剣よ我が愛しの伴侶に力を託せ!」
そう唱えると昼膳がいつもの刀の姿に戻る、だが今回はいつもと違った。
「使わせてもらうぜお前自身を!」
アーサーは昼膳を手に取ると鞘から引き抜いた。
その刀身は光輝き常闇を照らし出した。
「パラディン•アーサー•イグナトフ参る」
アーサーはそう言って夜叉に向かって行く。
夜叉は薙刀を大振りに横に振るだがアーサーはその攻撃を避けそして夜叉の伴侶の面を切り上げた。
夜叉の面が壊れそこから闇の瘴気が溢れ出す。
「これでトドメだ!」アーサーは光り輝く刀身を横薙ぎする。そして夜叉の身体が横にズレ瘴気と共に消えていった。
「目が覚めたかい?」朝日に照らされながらアーサーが少女に話しかける。
この少女は夜叉の瘴気が消えた後に倒れていた。
「お母さんとお父さん、それに灯里は?」
少女はアーサーに抱かれながら聞いた。
「すまない、私が来た時にはすでに」アーサーの言葉を聞き少女が涙を流す。
「皆私のせいで死んだんだ、私が夜叉を抑えられなかったから。」
「これは事故だ君には力を扱う方法を知らなかっただけだ、今回は不慮の事故だ」
アーサーは優しく頭を撫でながら言った。
「私これからどうなるの?」
「君には私と同じ教会の庇護下に置かれる、この国を離れて私の国に来てもらいたい。勿論強制はしない君が選んでくれ」アーサーは静かに答えた。
「もう大和には帰って来れないの?」
「君が力を制御出来るようになればいつか帰れる」
少女は少し考えてそして言った。
「私も貴方の国に行きますそしてこの力を制御出来るようになって必ず戻ってきます」
アーサーは優しく頷くと自己紹介を始めた。
「名乗ってなかったね私の名前はアーサー•イグナトフ教会に属する狩人だ」
アーサーの紹介を受けて少女も言った。
「私は葉月、日下部葉月」
少女がそう言って立ち上がる。
「それじゃあ歓迎するよハヅキ今日から君は私の弟子だ」アーサーが手を差し伸べる。
「よろしくお願いします、師匠!」ハヅキがはにかみながら言った。二人は手を繋ぎ朝日を背にしながら廃村を後にした。
第2話 完
次回第3話に続く




