幕間の物語 第1話 「凍てつく領地の若き当主」
ドグテニア連邦の辺境にある氷に覆われた地、その土地の名は永久凍土の氷の都ハースト領。
私レベッカ•ハーストの故郷であり先祖代々受け継がれて来た財産だった。
レオとロニーと別れた後私は当初の計画通りハースト家の屋敷へと帰還した。屋敷と言っても他の貴族と比べて見すぼらしくかつてドグテニアの腹心と呼ばれた先祖の代と比べると家の権威は地に堕ちたも同然の状況だった。
そんな時に伝説の当主シルベット•ハーストの能力に目覚めた私は家の再興と力の制御の為にアカデミーに4年間在籍しつい先日卒業を迎え故郷へと帰還したばかりだった。
「相変わらず辺鄙な土地ね一面氷に覆われてて寒いったらありゃしない」私は小声を言いつつ高台にある屋敷へと足を進めた。
屋敷に着き扉を開いた中は私が出て行った時と変わらず暗く、外よりも冷え込んでおり中央の階段の踊り場には初代当主であるシルベット•ハーストの荘厳な絵画が飾られていた。
「帰ったか我が娘よ、美しく育ったな」
階段の上から声がした、見るとやせ細って衰弱した初老の男が居た。
「ただいま帰りました、お父様もお変わり無いようでなによりです」私は父であるバーディ•ハーストへと会釈した。父はかつてこのハースト領を治める領主だった、だが私が6歳になる頃両親はある病に掛かった。
この病はこの土地由来の風土病であり発症すると身体の体温が急激に下がりやがて死に至るのだ私の母は昔から身体が弱く発症して1年後に死んだ、父はこの病に掛かった後も領主としての仕事をやっていたが次第に身体が衰弱していきやがて日常生活を送る事さへ困難になっていた。
父の状況を見ていた周囲の臣下達も次第に離れて行き最終的に父は領主の地位を追われ今では私と二人かつての先祖の生家でもあったこの土地と屋敷へと送られたのだった。
そして私も12歳の頃に両親と同じ病が発症した。父は懸命に看病したのだが私も母と同じ様に身体が弱く衰弱していった。私も父ですら助からないと思った矢先に奇跡が起きた。彼女は私の脳内に語り掛けてきた。
「汝、運命を受け入れるか?このまま死を受け入れるならそれでも良い、だが生きたいのなら我を受け入れよ」私はその言葉を聞き言った。
「死にたくないよ、私まだ死にたくない!」
父が驚いた顔をしていたが私は気にせず彼女との契約の言葉を口にした。
「我、冷血なる淑女なり、我、そなたとの契約を果たそう!」その言葉の後私の身体は冷気に包まれそしてこの日初めてシルベットが顕現したのだ。
私が目を覚ますと父の病は治っていた、私は父からシルベットとの契約を聞いた。
シルベットの契約の条件は一つだけ、それはかつて栄華を極めたハースト家の再興だったそれを条件に彼女は私に力を与えると言ったらしい。
私は俯く父に心配ない、全部覚悟しているそう伝えた瞬間父は優しく抱きしめてくれた。
こうして私はシルベットとの契約を果たす為狩人となりアカデミーへと入学したのだ。
そして現在ハースト領は父の弟であり私の叔父であるバーニー•ハーストが治めていた。
父の時からバーニーはいけ好かない男だった、真面目な兄とは違いバーニーは粗暴で女癖が悪く周囲の評判も良くは無かった。だが父が病に冒された頃からバーニーは他の臣下達を丸め込み従わず父に忠誠を誓う臣下は次々に謎の死を遂げた。やがてバーニーの権力が強まり父は領主の地位をバーニーに奪われてしまった。
「お父様話があります」
私は父と共に客間でアカデミーの話をしていた際に本題を切り出した。
「言ってみなさい」父は真剣な顔で言った。
「私がこのハースト家の当主となりハースト領の領主になります」
その言葉を聞き父は少し間を置くそして父はゆっくりと口を開いた。
「バーニーを君の叔父を殺す覚悟はあるか?」
父はかつての様な鋭い眼光で私を見つめる私はその目を真っ直ぐ見つめて言った。
「覚悟は出来ています、今からこの地はこのレベッカ•ハーストが治めます」その言葉を聞き父はニヤリと笑った。
「やあ、レベッカ久しぶりだねバーニー叔父さんだよ?」私は今ハースト領辺境伯であるバーニーの屋敷へと来ていた。
バーニーの屋敷は私達が居た氷の土地とは違い人々が活気付く街の中心街にあった。
建物は豪華な作りになっており私達の屋敷よりもきらびやかに見えた。
私は使用人の案内で叔父の部屋まで通されそして今対面していた。
「8年ぶりだな、見ない間に本当に美しくなったな」
バーニーは私の身体を舐め回す様に見てきた、私はとても不快だったが、ぐっとこらえて本題を切り出した。
「叔父様がこのハースト領の領主になられて6年経ちますね、その間ハースト領は以前よりも豊かになり発展してきましたこれは全て叔父様の功績ですね」
私が褒めるとバーニーが機嫌よく頷く。
「しかし、最近この領内である噂を聞きました、なんでも最近この土地に怪しい教団が出入りしているとそれに叔父様もその教団に加担していると。」
「何が言いたい?」バーニーはさっきまでの温厚な態度とは違い獣の様な眼光で見てくる。
「叔父様貴方は古き教団と言う名を知っていますか?」
「何処でその名を聞いた?」叔父がそう言うと叔父の部屋の壁から黒いフードを被った男達が現れた。
「私の可愛い姪よ今なら聞かなかった事にしようたがそれ以上言うなら」
バーニーが合図を送ると男達が静かに武器を抜いた。
「やはりクロでしたか残念ですよ叔父様」
私はやれやれといった仕草をする。
「改めて自己紹介をさせていただきます、私の名はレベッカ•ハースト教会に所属する狩人であり本日を持ってこの地の新たな領主となる者です」私が頭を下げながら言う。
「狩人だと?それに新しい領主だと?貴様の様な小娘にはお仕置きが必要だな、手足の腱を切り一生私の性奴隷にしてやろう」バーニーが下卑た笑みを浮かべながら手を下ろすそして周囲の男達が一斉に斬り掛かって来た。
「羅雪」私が唱えると無数の氷柱が地面から突き出し男達の身体を貫いた。
「何だその力は!」バーニーは氷柱に貫かれ痙攣する男達の姿を見て言った。
「こんな凡骨が今のハースト家の当主とは情けない」
その言葉を聞きバーニーがレベッカを見る彼女は冷たく見下した視線を送る。
「何だと!貴様!叔父でありハースト領当主である俺を愚弄するのか!」
「ますます醜いなもう良い貴様は死ぬが良い凡骨よ」
その瞬間バーニーは激昂したままの表情で首が飛ぶ首がコロコロと床を転がる様を見て彼女は笑った。
「これで今日からお前がこのハースト領の主だ、せいぜい励むのだぞ我が愛しの子よ」そう言って彼女シルベットが消えレベッカが我に変える。
「おいしい所だけ持って行っちゃって、後始末は私か」レベッカは部屋の惨状を見て溜息をつく。
「当主としての最初の仕事が後始末か先が思いやられるわね」こうしてハースト領の新たなる領主が誕生した。その名をレベッカ•ハースト弱冠16歳の若き当主だ。
幕間の話 1話 完
次回第2話に続く。




