第2話「人魚の村」
今夜もあの歌声が聴こえてくる、その声は透き通る様な美しい音色なのだが、何処か寂しく悲しげで聴き入る私はいつもその声を聴くたびに涙が溢れて来ていた。
私はその晩勇気を出して歌声のする方へ行ってみた。歌声は村の入江の方から聴こえており私は音色に釣られて歩き出した。
入江に着くと岩の上で歌を奏でる一匹の美しい人魚が居た。彼女は1人月夜に照らされながら煌めく鱗の付いた足を海に浸けたまま、美しい声で歌っていた。
私は1人彼女の歌を離れて聴いていた。
すると突然彼女の歌が終わる、そして私の方を向いた、私は咄嗟に隠れたが彼女には全てバレていた。
「貴方、私の歌を聴いてくれたの?」
私は彼女の呼びかけに岩陰から答えた。
「ええ、あまりにも美しい音色だったからつい、でも」
「でも?」
「貴方の歌はとても悲しそうだったの」
私は正直に彼女に言った。
「貴方、優しいのね皆私の歌はとても綺麗で良い音色とは言ってくれるけど、誰も私の気持ちには気付いてくれないの」彼女が寂しげに言った。
「でも、貴方は私の本当の気持ちに気付いてくれたはそれだけで私は歌ったかいがあったの」
「私にもその歌教えてくれる?」
「貴方が望むなら毎日でも毎晩でも教えてあげる」
この日から私と彼女の二人だけの時間が始まった。
列車の中で向かいに座るアリアが俺に読み聞かせてくれた。
「この話は今から100年前に実際にあったお話だ。」
アリアが童謡集を閉じていった。
「とても良い話でしたけどこれが今回の任務と関係するんですか?」
「今回の任務で訪れる村がこのお話の舞台となった村なんだ。」
「それじゃあ、人魚は実在するんですか?」
「それはまだ分からないが今回の依頼はかなり不気味な事件だ。」アリアはそう言うと任務の資料を広げる。
事件が起きたのは2週間前今回向かう漁村ラミン村で不可解な現象が起きた。その日村は海への感謝の儀式として祭りを開いた、人々は飲めや歌えの大騒ぎそんな時に美しい歌声が聴こえて来たらしい。
殆どの者は気にも止めずに騒いでいたのだが、村の若者が1人その歌に釣られて消えて行った。翌日になってもその若者は戻って来ることはなく村中総出で探した。
すると入江の方で倒れている若者を村の捜索隊が発見した。若者は当時の記憶が無く何事も無かったのだが夜になると人魚が呼んでいると言って、また居なくなろとしていた。その時に家族が止めに入ったのだが若者は気が狂ったように暴れ出し。
家を飛び出して行った。そして翌日村の砂浜には全身フジツボに塗れた若者の遺体が見つかった。
「村民はこれを人魚の呪いと言ってパニックになったらしくてな、そこで私達がこの村の調査に派遣されたんだ」アリアが資料から犠牲者の写真を出す。
その顔はフジツボがびっしりと付いており、直視すると吐き気を催す程だった。
「これは酷いですね、でも童謡では人魚は少女に歌を教える位友好的なんですよね?」
「流石に100年も前だし分からないな、とにかく今は資料に目を通しておいてくれ、まだ後3時間はあるからな」アリアはそう言うと童謡集を開きまた読み返していた。
「第2話」 「完」
「第3話に続く」




