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序章「姉弟」

この世界は理不尽で溢れている。僕達姉弟はそれを痛感していた。 僕達姉弟は産まれながらに望まれない存在だった。


スラム街で娼婦の子として産まれた僕ら双子は母にとって邪魔な存在でしか無かった。毎日の様に酒浸りの母親の暴力を恐れ僕は姉であるリサと共に家とも呼べない様なあばら家を飛び出した。


覚えているのは母親の怒鳴り声と子供ながらにやっと自由を手に入れた満足感と深い哀しみだった。


そして僕らは慈善団体に保護され、孤児院に預けられ現在に至る。


「レオ!レオナルド!どこに居るの!」僕らは旧い孤児院で10人程の子供達と暮らしていた。


この孤児院は街の慈善団体が経営しており皆身寄りの無い子供や僕らの様に虐待を受けた子供達を預かり12歳になったらそれぞれ里親の元へ送られる事になっていた。


僕とリサがここに来たのは丁度6年前の冬の日、身寄りの無い僕達を職員の人や子供達が温かく迎えてくれた。ここで僕とリサは家族の温もりと言うものを感じられた。


「レオ!ここに居たのね!もう返事してよ〜」そう言いながら姉のリサが話し掛けてきた。


「何だよ、リサ!僕は昨日図書室で見つけた本を読んでいたのに、これじゃ落ち着いて読めないよ。」と僕はリサに文句を言った。


「しょうがないじゃない、シスターが私達二人を呼んでるんだから!行くわよ!」そう言って僕はリサに連れられ院長室へと行った。


「貴方達もこの孤児院へ来て6年が経ちましたね、来週には二人とも12歳の誕生日を迎えます、それに伴い貴方達二人も里親の元へと送らねばなりません。」と院長先生は答えた。


「先生私やっぱり行きたくありません、私は初めて家族と呼べる友達や先生達と出会えました。それなのにまた知らない土地に行かないと行けないなんて、それに私レオと離れ離れになりたくありません!」


そう言ってリサは僕に抱きつき離れたく無いとアピールする。「安心なさいリサ里親へは貴方とレオ、二人一緒で引き取ってもらえます。それに私達も定期的に二人の様子を見に行きます、決して貴方達を見捨てたりしません。」


そう言って院長先生が僕達二人を優しく抱きしめてくれた。


「私達もいよいよ里親の元へ行くのね」そう言って、リサが少し寂しそうに言った。

「そうだねでも院長先生達も定期的に会いに来てくれるみたいだし、僕も居るから大丈夫だよ」とリサに言った。


「そうね、何だかんだ言って私達二人で生きて来たし新しい所でもやって行けるわね!」リサが明るい声で言った。


「所でレオ、今なんの本を読んでるの?」とリサが言った。

「これは世界の色んな伝承が載った本なんだ、これには恐ろしい怪物や不思議な妖精に付いて書いてあるんだ!」そう僕が答えると「ふーんまあ男の子はそう言う話が好きよね。」とリサ興味なさげに言った。


「今頃里親に行った子達はどうしてるのかな?仲良しだったミッシェルとかダニエルとか元気かな?」


そうリサが呟いた。「きっと今頃里親の元で元気に暮らしているさ、今日はもう遅いしそろそろ寝るねおやすみ。」と僕が言うとリサもリサもおやすみと言ってその日は眠りについた。


そして一週間後僕達は誕生日を迎え12歳になった。


「さあ今日で貴方達も12歳になりましたね、明日には里親の元へと行く事になります。この孤児院に来て貴方達は本当に立派に育ちました。私達達も寂しくなりますが貴方達の新しい門出を祝福します。今日でここでの暮らしも最後になりますその前に他のお友達に別れの挨拶をしましょう。」そう言って僕らは孤児院の子供達に別れの挨拶を行った。


そして孤児院での最後の夜が来た。


「今日でここともお別れね、やっぱり寂しいは」と

リサが言った。「そうだね、ここでの暮らしは短かったけど、それでも皆や先生が温かく迎えてくれたから今があるんだね」と話すとリサが「今日で最後だし先生達にも挨拶しようよ!」とリサが言った。


「ねえ、リサもう消灯の時間過ぎてるのに大丈夫かな?」と僕が言うとリサが「だってこの時間帯じゃないと先生達も忙しいでしょう?それに最後だし大目に見てくれるはずよ」と言って院長室へと向かった。


院長室の前に着きドアをノックしようとすると話声が聞こえてきた。「ええ、大丈夫です今度の被験体はきっと上手く行きます。必ず成功させます。」と何やら奇妙な言葉が聞こえてきた、その時「いけないなぁ盗み聞きするなんて」


いきなり背後から声が聞こえて振り向くとコートを羽織った男がいた。「ごめんなさい!盗み聞きするつもりは無かったんです!」僕は慌ててそう言ったが男はゆっくりと視線を僕らの後ろに向けると静かに答えた。


「マザーグレイスいけないじゃないか被験体に全て聞かれてしまったよ」と言った。その言葉に反応して振り向くと院長先生が立っていた。


「申し訳ありません、ミスターモレノこれは私の不手際です」と静かに答えた後に先生はゆっくりと僕らを見ると言った。「残念ですが貴方達は今から来てもらいます。貴方達がいけないのよレオ、リサ」といつもは優しい先生の顔がこの時は、家畜を見る様な冷たい表情に変わっていた。


「ごめんなさい!ごめんなさい!許して!聴いた事は誰にも言いませんから!」とリサが泣き叫ぶがモレノと先生は黙っていた。


「マザーグレイス、本当は少し先になるはずだったが今から実験を始める」とモレノが言う。「実験てなんですか!?嫌だ許してお願い!」と叫んだが遅かった。

僕達は二人に見つかった後直ぐに、院長室の隠し通路から孤児院の地下へと連れ込まれた。


その場所は何かの医療機器が沢山有り、僕らは歯医者で使われる様な拘束椅子に無理矢理座らされていた。


「君たちは神を信じるかい?」といきなりモレノが語りかけてきた。


「神様?信じられないよ!神様が居るのなら何故僕等姉弟を助けてくれないんだよ!今だってそうじゃないか!」そう僕が質問に答えるとモレノは穏やかな声で言った。


「君は一つ大きな勘違いをしている、神と言うのは慈悲を与える存在ではなく、我々をより高潔な存在へと変えてくださる、そしてそれに至るまでに洗練をお与えになるそれこそが我々が行う義務なのだよ」


そう答えるとモレノは置いてあった医療器具の中からメスを取り上げるとこう言った。

「その洗練とは痛みによる魂の覚醒だ!!」


そう答えたのを聴いた瞬間僕は鋭い痛みと共に隣に居るリサの悲鳴を聞いた。


「イヤァァァー!止めて!レオ!レオ!」


痛みが走った先を見ると深々と下腹部にメスが刺さっていた。「痛い!、痛い!、痛い!、止めて!止めて下さい!」最初の痛みが走った後僕の身体の至る所が切付けられ、血が噴き出していた。


「素晴らしい!これでこそ洗練と言うもの!さあ、これに耐えれば君も生まれ変われる!さあ頑張るのです!」


そう嬉々として答える狂人が僕の身体をひたすらに切り刻んでいた。「さあ、彼が終われば貴方の番ですよお嬢さん、共に神の祝福を受けましょう!」とその狂人はリサを見つめながら答えた。


「ミスターモレノすいませんがもう一人の方はあの方が気に入って居られますので連れていきます。」と院長先生がリサを見て言った。


「そうでしたか、それは残念お嬢さんまた縁が有りましたらお会いしましょう」と言いモレノはリサを院長先生に引き渡した。


「え!?嫌よ!レオを離して私の弟も解放して!」そう言ったが院長先生はそれを無視してリサを連れて行く「レオ!レオ!」リサが叫んでいたが僕はもう意識が薄れていった、「リサ、、、」そう呟くと僕は意識を失った。


「やあ、起きたかい?お寝坊さん」聞き慣れない声が聞こえて僕は目を開けた。


目を開けるとそこは真っ暗な闇だったそして僕の目の前には白い美少女がいた。


「やあ、初めましてだね僕の呼びなは色々とあるがとりあえず君にはルナと名乗ろう」そう言ってルナは楽しげにしかし儚げな雰囲気で話をしてきた。


「率直に言うが君は今死の淵に立たされている、そこで僕は君の意志に応えて今目の前に現れている」と

ルナは言った。


「僕の意志?」そう答えるとルナはそうさと言いこう続けた。「君の運命は今終わり掛けている、だが極稀に僕を呼び出し2つの選択肢を受けられる者が居るんだ」とルナは言う「そう君はそれに選ばれたのさ!おめでとう!」そう言ってルナは手を叩いて祝った。


「その選択肢ってなんなの?」と答えるとルナはさっきまでのおチャラけた態度と代わり静かにだが冷たく言った。


「一つめの選択肢はデッドつまり死だこれを選ぶと君は安らかに死に天国へと行けるよ」と穏やかにだが冷たく言った。


「そして2つめの選択肢はフリークつまり異形の怪物として生まれ変われる、こっちはあまりおすすめしないが、選べば君は契約を結び永遠にその魂は天国には行けず、死後僕の者になるんだよ」と言った。


「天国に行けないってことは僕は地獄へ行くの?」と

返したがルナは「天国でも地獄でもない僕の個人的なコレクションさ」と返した。


「まあ幸せかどうかは君次第だけど」そう言ってルナは微笑んだ。

「フリークを選んだら僕は、僕じゃなくなるの?」と聞いたがルナは「さあ、それは運次第まあ大抵は理性を失うけどたまに理性を保ち僕から抗おうとしてる子もいるよ、まあ最後は僕のものにするけどね」と答えた。


「分かった、僕は今まで誰からも必要とされなかった。でもそんな僕でもリサがいて皆が居て先生達がいて本当の家族だと思っていた。でもそれを裏切り僕のたった一人の家族のリサを奪った。それを取り返すためなら僕は化け物にだってなる!」そう答えた瞬間突然ルナが僕の顔スレスレまだ近づいてきた。その顔は白く色白で目が真紅に染まっていてとても美しかった。

「契約成立だね、これで君は僕のもの絶対に逃がさいよレオナルド!」ルナがそう言うとまた意識が遠のいていく。「これで、しばらくお別れだまた会おうね僕の愛しいレオ」そう聞こえながら僕の意識はとだえた。



「ああ、貴方も駄目でしたか、もしかしたら神の寵愛を受けられると思ったのに」そう言ってモレノはメスを置き椅子の上で血まみれで息絶えた幼い子供の遺体を見た。


「レオナルド、貴方は私を楽しませてくれましたが所詮は出来損ないのゴミクズだった様ですね」とモレノは笑いながら答えた。


「君も今までの失敗作と同じでしたね、あのお嬢さんも楽しみたかったのですが仕方ないですね」とモレノは語っていた。


「そうやって今まで一体何人殺したんだ!」不意にその声を聞き驚愕するモレノ急いで椅子を見たが、さっきまであったレオナルドが居ない事に気付いた。


「なんだ!まさか成功したのですか!素晴らしい是非とも姿を見せて下さい!」と嬉々として言うモレノに答えてかレオナルドが姿を現した。


「ほう、傷がたちどころに治り目の色も変わりましたね!」そう言って拍手するモレノ。


「リサを何処に連れて言った!答えろ!」と言ったが

モレノは笑みを絶やさず言った。「あのお嬢さんならもうここには居ませんあのお嬢さんは我々教団の幹部に育てます貴方も生きて居ればいつか会えるかもしれませんね。」と言った。


「それよりも私は今貴方に興味があります!さあ力を試してください」と言うとモレノの身体が肥大し作り変えられ巨大なトカゲの様な化け物へと変わった。


「さあ、これが私の神から授かった力貴方も見せて下さい!」そう言ってモレノは巨大な尻尾で攻撃した。


最初の一撃を避けたが2撃目も避けられる保証がない僕は相手を撹乱するように物陰や隙間に移動していた。


「逃げてばかりいては駄目ですよ!もしかしてまだ力がつかえないのですかな?」そう言ってモレノは物陰に居る僕を壁事破壊しながら叫んだ。


このままではマズイだがまだ力を上手くつかえない、一体どうすれば?と考えているうちに僕はモレノの尻尾が向かってくる事に気付かず直撃してしまった。


意識が朦朧とする中モレノは笑みを浮かべて歩いてくる、嫌だ!何もできずに終わるなんて嫌だ!そう考えていた時に僕の身体が変化を初めた。


後一撃てばこの小僧は死ぬせっかくの覚醒者だが仕方がない。そう思いながら私は目の前の倒れた少年に向かった。だが何かおかしいなんだこの悪寒は、私は何かとんでもない何かを見落としているのではと思った。


だが目の前に居るのはちっぽけで、今にもくたばりそうな存在私は余計な事を考えず鉤爪でトドメをさそうとした。


「グチャ!」突然鈍い音が響き渡るそれと同時にモレノが叫び声を上げて倒れた。


「グアアア!私の手がぁ!手がぁ!」見るとモレノのては何か獣に食い千切られた様になっておりそこから噴水の様に血が噴き出していた。


「プッ、不味いな食えたもんじゃねえ」その言葉を聞き声の方を向くと一匹の美しい銀狼が2足歩行で立っていた。


「貴様ァァァ!あの小僧か!よくも!よくも!私の神から頂いた身体を傷つけたなぁ!」とモレノが怒りに満ちた声で言った。


「知るかもう僕は、いや俺はお前を絶対に許さない必ずここで殺す!」そう言って俺はモレノの首に噛み付いた。


「やめろ!止めてくれ!助けてくれ!」そう必死に命乞いするモレノを押さえつけ、俺はモレノの硬い鱗事肉を食いちぎった。辺りは鮮血の海が広がり、足元のモレノは自分の血の中で悶え苦しみやがて絶命した。


俺はその後地下から出て院長や他の皆を探したが、もう誰も居なかった。


「リサ、姉さん必ず見つけるよ」そう言って一匹の銀狼は月明かりに照らされながら、自分の家を去っていった。


たった一人の家族を探すために。「完」



第2話に続く






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