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第4話 出会い

――次の日


「マジでヤバいって……石井先生、めっちゃSじゃん。あんな可愛い顔して!?」

「陸上の先生なんて、そんなもんじゃないか?」

「君たち大変だね~~。」


 俺と晴矢。そして、たまたま近くで1人飯をしていた藻野(もや)紫雲(しぐも)を誘い、一緒に昼飯を食っていた。


「なぁぁーー紫雲、お前も陸上部に入ろうぜ?」

「晴矢くん、それは無理だね。僕は忙しいんだから。」

 紫雲は眼鏡をキリッと光らせてドヤる。晴矢はなんだとー!といいながら何か言い合っていた。陸上の利点がああやらこうやら。



 まあ、こんなに賑やかで、皆で楽しくご飯が食べられるなんて幸せだな。2人が言い合いをしているが、俺はご飯を噛みしめていた。

「それにしても……雨季の前の席。ずっと空いてるよな。」

「ずっと。って程じゃないけどな。」


 俺の前の席は、ずっと欠席状態だった。おかげで眠れなかったり不便しかない。


「なんでだろうね。先生も言わないし……」

 紫雲も不思議そうな顔で見つめていた。まぁ、今は真面目に頑張るしかない。


「なぁ、雨季。今日の部活は何すると思う?」

「……え、今日休みって言ってなかったか? 新入生は集合無しとか。」

 今考えてみれば昨日の練習は休み前だからキツかったんだな。と納得する。



「えっだったらさ、皆で遊ばね?」

「ごめん。今日は研究部があるからね。次……日曜日とかかな?」


「雨季は?」

 今日は、あれをみなければな。

「悪い。俺もやることがあるんだ。ちなみに日曜日はいける。」

 俺がそう言うと、晴矢はボッーと目の光を失ったように見つめてきた。


「お前……! まさか!」

 まさか晴矢も、人影を見たのか?俺は前に乗り出して目を見開いた。


「か……かっ…」

 ゴクッ

「彼女かあああ!!!??? お前だけはちがっ」

「違う。」

 暫く静かな空気が流れていった。俺と紫雲は呆れた顔をしながら時間だけが過ぎていく。


「全く、なんでそっちにいくかなぁ?」

「だってさぁ……雨季って彼女いそうじゃん。」

「初めて言わたんだが?」


 俺の顔は彼女がいそうだという話題は、何故か放課後まで続いていた。晴矢は彼女の事で頭がいっぱいそうだが、俺はあの人影の事しか考えてなかった。


「じゃあな!」

「僕は、部活だから~~」

「あぁ身体を休めろよー、頑張ってくれー。」

 皆と別れた後、すぐに周りの探索を初めていた。


(ここまでか……)

 階段を登って、登っても、3階までしか階段は無かった。他の場所をみても、何処にも屋上に向かう階段がない。


 なら、あの人影は? 女の人の声は?


 全てが幻想なのだったのだろうか。人影を見たと錯覚すれば、風の音でも声だと認識してしまうのかもしれない。


 あの人影を見た時、何故か心がざわついていた。俺は不思議なものに惹かれているのかもしれない。


 ただの幻想にもかかわらず。


 とりあえず、最後の希望で3階のベランダに踏み出した。先輩達は帰って、人が1人もいないのを確認し、そっと中に踏み出す。


 見た通り誰もいない。先輩の言った通り、トラックからは見えるはずが無い場所だった。


「……よし、帰るか。」

 でも、これで諦めがついた。ただの幻想だと。あの人影は気のせいだと。



 俺は、ドアに向かって歩き出した。

「ねぇ君。見えるの?私の声がわかるの?」

「――っ!」


 この透き通る声。間違いなく昨日の声だ。

「……見えた。」


 僕は、小さくそう呟いた。周りを見渡しても誰もいないはず。

「やっと!! やっと見つけた!!!」

「――っ!!!」


 いつの間にか、足に力が入らず尻をついていた。目の前には……髪の毛が長い女の人がニコッと笑っている。


「やっと! やった……」

 彼女は、涙を浮かべながら俺の手を握る。瞳がキラキラと煌めいている。


 透明感のある髪に、白い服……まるで幽霊みたいだ。少し不気味なのに、それでも引き込まれてしまう。


「えっ…えっと。」

「ねぇ、私をここから出してほしいの!」

 彼女は俺に頼みこむが、今の状況に頭が追いつかない。


「……?…っ。」

 小さく声を唸りあげても、彼女は俺に頼み込むのをやめる様子がない。


「わっ……わかった! 分かったから…離れてくれ。」

「本当!?」

 分かってない。顔が近い。


「で、俺は何すれば…?」

 彼女を無理やり落ち着かせたが、俺は壁に張り付いていた。


「あのドアを開けてくれない?」

「ん?あぁ……分かった。」

 俺は、ドアをスっと開けると彼女は嬉しそうに走っていった。ただ開けて欲しかっただけか?


 …………流石に、ここで封印されてた。とかないよな?


「あっまたここに来て!! じゃあね!」

「……えっ…あ、あぁ分かった。」

 まるで、風のように消えていった。……また。か。


 いつの間にか、平凡な毎日にたった1つの非日常が紛れ込んでいた。


 全ては彼女によって。

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