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第3話 謎

「今から、ブロックごとの行動になります。長距離は徳永先生。短距離は石井先生。跳躍、投擲は藤田先生の所に集合してください。マネージャーは待機で。」


「「はい!」」

 俺と晴矢は「やっと終わったー」と一息ついていた。短い時間なのに緊張で疲れてしまったようだ。


(なあ、俺……石井先生が担当とかめっちゃ良くね?可愛いし。)

(当たりかもな。)


(よっしゃ!! じゃあ、行ってくるわ!)

  晴矢は嬉しそうに集合に向かい、俺は言われた通りに待機していた。


「君がマネージャーよね。」

「あっ……はい!」

 しばらくすると、女の先輩達が俺の顔を珍しそうにジロジロと見ていた。


「よし、じゃあ早速準備するから手伝ってね。」

「分かりました。」


 氷を製氷機から取り出す時のルールや、差し入れ、道具など色々と説明を聞きながら手伝いを始める。


「でもさ、男子のマネージャーとか初だよね。」

「ね。いっつも毎年、絶対に1人は女の子が来てたけど……雨季くんはレアって事だ。」



「そうなんですか?」

 マネージャーは3年の先輩2人と、


「でも、男の手が欲しいって言ってましたよね! えっと、雨季くん。これもってね。」

「はい!」

 2年生の先輩が1人いて、俺を合わせて4人になるようだ。


 女子特有のノリについていけるかは不安だが、マネージャーとして頑張っていこう。


「パーッとマネージャー会でもする!?」

「なんか新鮮かも!! 」

 俺は盛り上がっている輪の中に入りながら静かに決意した。


「今日は、荷物の確認するから一緒に手伝ってね。」

「はい!」

 俺は部室から大きな鞄を貰って用具入れまで運んでいく。



「これを開けて確認してて。私は、こっちやるから。」

 どうやら、シーズンも速く大会が始まるらしい。荷物の確認をテキパキとしていく。


 横断幕、旗……後は記録報告書やカメラなどが入っていた。たまに、ぬいぐるみやらよく分からないものがあるが。



「ああああぁぁ!!」

「……?」

 「いつもの事だから気にしないでいいよ。」

 外からは、うめき声やら叫び声が聞こえてくる。一体何をさせられているんだろうな。



「いやー、やっぱり男の子は力あるねーー。」

「3人がかりで持ち上げてたから助かるよ。」

 短時間だが、少しずつ先輩達にも気に入られたようで安心した。男だからと嫌われたりするかもと思ったがそんな雰囲気は無い。



「ありがとうございます! 次は何をすれば?」

 その後も、言われた通りに辺りを走り回り荷物置き場に鞄をおく。


「よーし、終わり」

   そう先輩の満足そうな言葉と共に準備が終わった。その後、先輩達は、時間潰しのためか草をむしっていたので、ヘトヘトの晴矢を見ながら一緒にむしっていた。


「あっそうだ。雨季くん。学校とかで分からない事とかない?」

「暇だしね。何でも聞いてよー」


 分からない事か。何でもいいと言われても。


 ……いやっ


「どした?」

 昨日に見た人影が、あの光景が俺の中で焼き付いて離れない。


「じゃあ、1つだけ………」

「うん。」

「屋上って誰かいるんですか? そのー、部活とか。」

「っえ?」

 顔をあげると、先輩達がキョトンとした顔で見つめていた。



「じつは昨日人影を見たんです」

 身振り手振りで、必死に伝えようとしたが伝わっていないようだ。先輩達は眉をひそめながら顔を見合わしている。



「髪の長っ…」

「雨季くん。」

 先輩達は、うん。と頷きあって口を開いた。


「はいっ」

「屋上ってソーラーパネルがある場所でしょ?あそこは危険だし、入れないわよ。」


「……え?」

 なら、あれは?


「裏口とかはあるみたいだけど、作業員の人しか入れないし。あぁ、でも3階の1部がベランダだけど……それかな?」

「でも、トラックからは見えますかね?」


 先輩によると、時計の横にある場所には基本的に入れないようだ。



「うーん。私達が知ってるのはこのくらいかな。 まぁグルっと校舎を回ればいいよ。本当に屋上無いから。」



「もし、ベランダ行きたいなら、私達も一緒に行くわよ?」

「1年生は行きにくいもんね。」

 先輩達は、申し訳なさそうに教えてくれた。3年間もいたんだし本当の事だと思う。


 やっぱり見間違いか。



「なんか、ごめんね。」

「っいえ。ありがとうございました。俺、疲れているみたいなんで今日は速く寝ます。」

 俺は疑問が渦巻きながらも軽く誤魔化した。


「睡眠は、マネージャーも取らなきゃね! タイム測る時にボケてたら駄目だし……」

 その後、先輩達とは気まずい空気にもならず楽しく話しをしながら時間を過ごした。


「礼!」

「「ありがとうございました!」」

 部活が終わり、俺は晴矢を引きずるように自転車置き場へ向かった。


「じゃあ……またっ、ぅ…明日な。」

「あっ、ああ。死ぬなよ。」

 死にかけの晴矢を見送り、もう一度屋上らしきものを見たが何も無かった。



「……。」

(やっぱり気のせいか)

 俺は、首を振りチャリに手をかけた。



 ――その時

『ねぇ、君……見えているの?』

「―っ!!」



 キッとブレーキをかけ周りを確認した。しかし、学校にも周りにも人影もない。


「誰?」

 暫く待ってみても何も聞こえない。


「雨季、何してるんだ?険しい顔して。」

 気がつくと、部長が心配そうに俺をみていた。


「っ……いえ。」

「今日は疲れただろう?早く帰った方がいいよ。」



 きっと、気のせ……気のせいに決まっている。

「あっはい! お疲れ様でした!」



 俺は、混乱しながらも家に帰った。

「おかえりなさい!」

「ただいまー」


 家に帰ってからも、あの透き通る声が頭に残っている。考えれば考えるほど離れてくれない。


 1つ解決したら、1つ謎が残る……なんて事だ。



「ああっもう。」

 明日、屋上を探してみよう。先輩に無いと言われても……心の整理の為だ。




 平凡に生きるために、自分の中で踏ん切りをつけるために。

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