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60 エイダの追従と影の最後

 国外追放の刻印はさすがに痛くてダリアナもこれは辛かろうと思う。


 だがこれで自由なのだ。金はある。ダリアナの能力ももう少し実験を重ねて慎重に使っていこう。

 私には希望しかなかった。


 ダリアナはオールポッド侯爵が死んでから人生がおかしくなったと思っているようだ。


『本当は子爵の小娘である私が侯爵家に嫁いだところからおかしいのよ。私が侯爵夫人だったことがあるなんてすでに自分でも信じられなくなりそうだわ。

待ちに待ったバリーとの生活が自由にできるのよ』


「自由かぁ」


 ダリアナの笑顔に少しほっとした。


 お昼過ぎた頃に急に道が悪くなったようで馬車がガタガタと揺れだしてしばらくして馬車が止まる。


 馭者が扉を開けた。


「車輪がイカれた。取り替えるから降りてくれ」


 そう言われてダリアナが先に馬車を降りた。私は大事なバッグを取り出していた。万が一、このバッグをここに置いたままにして馭者に逃げられたらたまらない。


 馬車を降りてみるとダリアナが見当たらない。

 キョロキョロと見回すと茂みの前でダリアナが倒れているのが見えた。


「ダリアナ!」


 駆けつけようとしたら頭に衝撃が走った。振り向くと馭者の一人が血まみれの棒を持っていた。私は頭を抱えて倒れる。

 もう一人の馭者が来て私のバッグを奪い取った。


「か、かえして……」


「あんたらをちゃんと国境衛兵には見せたからな。それで俺たちの仕事は終わりだ。報酬としてこれはもらっといてやるよ。

まったく、あんたのワガママに付き合うのは疲れたぜ。じゃあなっ!」


 私の目の前にツバが吐かれた。


 さっきまで私たちを乗せていた馬車は去って行った。いや、視界が狭くなりそれも見えない。去っていく音を聞きながらダリアナの後を追った。


〰 〰 〰


 なあんだ。結局殺されちゃったわ。最後に小者たちの考えをダリアナに見せてあげたけど間に合わなかった。ざぁんねん。うふふ。


 ダリアナから離れた私は浮遊感と何かに引き寄せられる感覚に酔って気を失った。


『バッシャン!!』

『冷たい! 痛い!』


 私は様々な衝撃で目を覚ました。


「ふん! 死んじまったかと思ったぜ」


 汚らしい服を着て汚らしく髭も切らずにいる男が私を見下ろしていた。


 ダリアナの中にいたときには一切感じなかった痛みというものに恐れおののく。


「なっ! なんなのあんたっ! それより鏡よ! 鏡を見せて!」


「そんな醜くなった顔でも見たいもんなのかねぇ」


 私は襟首を掴まれて部屋の隅に引きずられていくとすっかり曇った鏡があった。


「なによこれ! 使えないメイドじゃないの!」


 そこに映っていたのは顔があちこち腫れていてわかりにくいがクラリッサを虐める手伝いをしていたメイドであった。平凡な茶色の目はまわりが腫れてしまって見えにくく水をかけられ服はずぶ濡れで平凡な茶色髪からポタポタと落ちる雫はなとなくピンク色で顔よりも頭がズキズキと傷んだ。


「ほぉ。やっと自分が使えないヤツだと認めたか。だがな。もう遅いんだよ。てめぇがマクナイト伯爵邸でやってきた悪さが貴族の間で有名になっちまっててめぇを紹介した俺の職業ギルドは仕事依頼がこなくなっちまった。そのせいで廃業だ」


「これはその腹癒せなんだね…」


「まあそんなとこだ。街中でてめぇを見つけた時には神に感謝したぜ。すこぉしばっかり痛い目に合わせたら頭から血出してぐったりしやがって。簡単に殺しちまったと悔しくなったところだったぜ」


『その女はきっと死んだんだわ。私はその器に引き込まれたのね』


【死人への転生】


 なんとなく異世界転生のお決まりパターンが頭に浮かんだ。


『死人でいいならダリアナやエイダでいいじゃないの。金は取られたけど美貌は持っていたし』


 そう考えたが二人の最後の怪我は相当酷いものであったと思い出し自分の頭を触ってみた。頭より顔の痛みが強いから頭は大したことはないのだろう。


『当たりどころが悪かったってやつなのかもね』


 男に再び襟首を掴まれ引っ張られるとベッドに投げられた。

 男に服を毟られながら私は自分の死を思い出していた。


『私の二次創作に対するネット上の批判とか自分のプライベートも晒されるかもって恐怖に耐えられなくて自殺したんだったわ。早く思い出していたらダリアナが違う幸せを掴めるようにしたのに。

そういえばこのメイドの最後を投稿せずに死んだのよね…。私にこのメイドの結末を書けということなのね』


 この男がいなくなったら………もう一度しよう。


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