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56 父親との面会

 お城に着いてから三日目の朝に外に出されて護衛さんではなく近衛兵って人に連れて行かれたのは馬車の乗降場だった。中にはお母さんが乗っていた。


「お母さんっ!」


 お母さんに抱きつこうとしたら隣の近衛兵に掴まれてお母さんの向かいに座らされた。お母さんの隣にも近衛兵がいた。隣の人に触られたから怒り顔のこの人たちと四人で馬車に乗っていることが頭に浮かんだ。


『えー! この人たちずっと怒っているつもりなの?』


「座っていろ。しゃべることは許されない。いいな」


 馬車は動き出した。時々誰とはなしに聞いてみるが近衛兵に睨まれるだけで誰も答えてくれない。今までで一番のすごくつまらない旅。

 お城へ行く時よりひどかったのは宿だ。お母さんは鍵をされた馬車の中で私は馬小屋の藁の上だ。足に紐がされてお母さんのいる馬車には近寄れないようにされているから私は一人でシクシク泣いて泣きつかれて眠った。


 お城から出て三日後、着いたのはガーリー伯父様のお家だった。


「一刻だけ待つ。支度をしてこい」


 お母さんが私の手を引いて急いで別宅へ入るとメイドが一人もいなかった。


「トランクにお金になりそうな物を入れなさい。ワンピースはもう積んであるからいらないわ。指輪やネックレスは絶対に忘れないで。下着は多めに入れていいわ。始めなさい」


 とても怖いお母さんの顔だが急いでいるのだから仕方がない。


 私は部屋に入りまずは着替えた。下着もワンピースも六日も着ていたなんて初めてのことだった。王都に入るという最後の日に着たのはお気入りのこのドレスだが臭くて持っていく気持ちにはなれない。

 マクナイト伯爵家を出てから一ヶ月の間にここで使っていたものをトランクに入れた。近衛兵が迎えに来たのはあっという間だった。


「来い」


 トランクも持ってくれない近衛兵を後から睨みつけた。


『男のくせに信じられない! 私の学校時代の男の子たちの方がずっと紳士だわ。王城の近衛兵なら貴族でしょう?!』


 さっき馬車を降りた場所に汚い馬車が一台止まっていた。


「ここからはコイツラがお前たちを国境を越えた町まで連れていく。国境門にはすでに連絡が行っているしコイツラからも連絡が来ることになっている。逃げられないからな」


 近衛兵がお母さんを睨んだ。睨まれたのは私じゃないのに私はお母様の影に隠れた。殴られるかと思うくらい怖かった。

 

『さっき睨んでいたことが見つからなくてよかったわ』


「わかってるわよっ!」


 お母さんは近衛兵に怒鳴るほど強い。私達はその汚い馬車に乗らされた。


 馬車が動き出して間もなくお母さんが馭者に合図を送ると馬車が止まってドアが開きお母さんが降りる。お母さんはその馭者たちに何やら指示して戻ってきた。


「蓄えておいてよかったわね。こんな国にはいられなくなったって平気よ」


 悪巧みの魔女の顔をしたお母さんが呟いた。

 次に止まったのは一月前に来たあの貸金庫のあるお店だ。


「あなたはここで待っていなさい」


 お母さんはそう言うと大きめのバッグを持ってお店へ入る。すぐに戻ってきたがまた何やら馭者に指示して更にお金を渡している。


 次に止まったのは小さな商店だった。


「貴女もいらっしゃい」


 お母さんはさっきの大きなバッグを持ったまま馬車を降りると二人でお店に入った。

 お母さんの顔はさっきと明らかに違う。ニコニコしていて心から喜んでいることがわかった。


「エイダ! いったいどうしたんだ?」


 店に入るととてもハンサムな男性が私たちが来たことに驚いたけど嬉しいという顔でお母さんをいきなり抱きしめた。


『この人の顔……どこかで見たことがあるけどどこだったのかは思い出せないな』


「バリー。私達はオルグレンの町に行くことになったの。その町で誰か頼れる人はいないかしら?」


 お母さんは泣きそうな……そう誰もが助けてあげたくなるような顔をしていたが私は演技だと知っている。


『さすがお母さん! すごいわっ!』


「ああ、それならブラッドの店に行くといい。私から早馬を出しておこう。町でブラッドの店といえば誰でも知っているさ」


 何かをサラサラとメモをしてお母さんに渡す。


「しばらくはオルグレンにいるから絶対に会いに来てね」


「わかったよ」


「ダリアナ。あなたのお父様よ」


「おお、ダリアナ。大きくなったな。ハハ、私にとても似ているじゃないか」


 私はびっくりしすぎて何も言えなかったが確かに私に似ていた。お母さんも私も美しいと言われて二人でいれば似ていると言われる。

 だけどこの男の人とお母様を比べると……私はその男の人に似ていた。


『見たことあるなと思ったのは……鏡の中でだった……のね』


「おいっ! 急げっ!」


 馭者が怒鳴り私たちを呼びにきた時に放心状態だった私は何もわからないまま馬車に押し込まれた。


 私はさっきの男の人に触れる暇もなかった。

 

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