表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/61

47 会頭からの情報

 店主さんがニヤリと笑ってお母さんを見る。


「そうそう。私は隣町のいろいろな商店とも付き合いがありましてね」


「ダリアナ。馬車に戻っていなさい。私はこの男と少し話があるから」


「店の前に護衛を配置してお嬢様をお守りしましょう」


 店主さんが目で命令したようで強そうな人が私の前に立った。私お母さんに助けてほしいと顔を見たけどお母さんが私を見ることはなくてとぼとぼと馬車に向かうしかなかった。


 強そうな人は私を馬車に乗せてくれると馬車から少し離れたところで馬車に背中を向けて立った。護衛って私を守る人だったみたい。


 お母さんが遅いので寝てしまった。馬車のドアが開いてお母さんが乗ってきたらすぐに出発すると子爵家のお屋敷に着くまでの馬車の中でお母さんが難しいお話をする。


「お兄様はお優しいけどお金にはうるさいの。私達がお金を持っているって知ったら全部とられちゃうわ。オールポッド侯爵家からの手切れ金も少ししか渡してないのよ。あとは指輪やネックレスにしてあのお店に預けたわ。これは私とダリアナだけの秘密よ」


 お店のときよりは柔らかくなったお母さんに安心してコクンと頷いた。少しだけわかったことはガーリー伯父様はさっきのお店のお金は知らないってこと。


 ガーリー伯父様のお屋敷にある別宅はまだ私たちが住んでいたときのままだった。

 挨拶に行ったときにガーリー伯父様に触ってしまったら初めて頭に浮かんだ伯父様は暗い顔で私たちを見ていた。それからは私たちに向ける伯父様のお顔はいつも暗かった。



〰 〰 〰


 旦那様であるマクナイト伯爵様に言われた通りに日の出とともにダリアナとメイド一人を乗せて兄の子爵領へと向かった。他の使用人たちも連れていけと旦那様に言われたけど旦那様からの資金が期待できそうにもないのに雇うなんてバカバカしいからその場で解散した。騒いでいるやつもいたけどダリアナの乗る馬車に乗り込んでとっとと出発したわ。


 貸金庫屋にダリアナを連れて行ってダリアナにも使えるようにしておくことにした。


 会頭の男にダリアナを娘だと説明したらワケアリを知ったかのようないやらしい目つきで頷いている。


 ダリアナのための手続きが終わると会頭は待っていましたとほくそ笑むから悪い予感がした。


「そうそう。私は隣町のいろいろな商店とも付き合いがありましてね」


 バリーとダリアナが似ていることを言っているというのはすぐにわかった。ダリアナを馬車で待たせることにする。


 私は椅子にふんぞり返って自分のイヤリングに手をかけテーブルに投げる。


「あんたの交友関係になんて興味はないわ。あの娘は前オールポッド侯爵の愛娘よ」


「ええ。それはよぉくわかりますよ」


 会頭はそのイヤリングを自分の手元に引き寄せ石を覗き込み軽く鑑定すると胸ポケットに収めた。


「ではついでなので情報を一つ。

 とある紳士様が幼女誘拐で捕まりました」


 私の驚愕した顔を嬉しそうに見ている。


「噂にもなっていない情報です。

幼女は子爵家のご令嬢でした。母親と一緒に平民服を着て教会でボランティアをしていたそうです。平民にはありえない可愛らしさだったようですね」


 そこで一息お茶を口にして焦らすから睨んでやると更に嬉しそうに笑う。


「子爵令嬢の誘拐なのになぜ噂にもならないのか……。エイダ様でしたらおわかりになりますよね?」

 

『トリスタンのやつダリアナに手を出そうとしたのは本気だったってことじゃないのっ! くそジジィが自分可愛さ息子可愛さのために金で握り潰したのね』


 私は奥歯を噛みしめて右手から指輪を一つ外して会頭に投げる。


「おっとっと。石に傷は付きませんがリングには傷が付くこともありますので丁寧に頼みますよ」


 指輪を取り損ないそうになった会頭はそれでもニヤケた顔を崩さないから余計に腹がたつ。

 

「私のじゃなくなるものなんだから知ったことではないわ。

ねぇ。そういう噂ってご婦人方には必要だと思うのよ。だって自分の娘や妹がそんな男に嫁ぐことになったら困るでしょう? 注意しなさいって教えてあげるのが親切ってもんじゃないの?」


 会頭はモノクルに手をかけ指輪の鑑定していたがこちらを無視することはない。


「然様ですね。私がお付き合いさせて頂いているご婦人方にご注意申し上げておきましょう」 


 その指輪が噂流布の対価だとわかっているようだ。


『トリスタンが使えないとなればダリアナに頼るしかなくなるでしょうね。オールポッド侯爵家に戻ればマクナイト伯爵家より上になれるわね』


 私は私の美しい顔に手を上げた男を思い出してほくそ笑む。


「また何かあったら話を聞くぐらいしてあげるわ」


「わかりました」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ