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45 マクナイト伯爵の决意

 クララのためにいっておくと、クララは決して不細工ではない。絶対的にかわいい。

 確かにあの二人はものすごくキレイだった。それと比べればクララは普通といえる。なら、普通でいい。


「クララのために確認しておくが、クララはダリアナに何かをぶつけたり投げつけたりはしておらんぞ。それは誰に言われなくても私がわかっている」


 伯爵様はクララの無実を訴えるためだろう、やっと僕と目を合わせた。


「はい。僕もそう信じています」


「それから、そちらからの手紙についてだが……。申し訳ない。それについて聞かずに出してしまって……な……」


 クララについての虐待や悪口について聞くだけでそれ以上は耐えられなかったことは容易に予想がつく。


「構いませんよ。僕からの手紙も母上からの手紙もクララを守りたい思いからです。母上は彼女らとクララが一緒にいることはクララにとって良くないかもと考えておいでだったので」


「そうか。ギャレット公爵夫人にもご心配をおかけしたのだな。後ほど謝罪とお礼に伺おう」


「はい。母上はそれで喜んでくれると思います。

それで、これからこちらはどうなるのですか?」


「うん、執事を戻してクララが成人するまでは執事にこの家を回してもらう予定だ。彼なら産まれた時からクララを知っているしな。安心して任せられる」


「え? ご夫人とは?」


「もちろん離縁するよ。この家はクララのものだ。白い結婚はそのためなんだ。離縁についてはこちらに不利になるようなことはないはずだ。昨日のこともあちらの行き過ぎた言動のせいだと主張するさ」


 叩いてしまった話のことだろう。

 白い結婚の意味がようやく理解できた。伯爵様の行動はすべてクララのためなのだ。結婚したことも、そして、離縁することも……。


「まあ、当面困らない程度には持たせたし、彼女らに贈ったものはそのまま持たせた。それで充分だろう」


 その辺の大人の事情はわからないけど、僕とクララが結婚した後にも何も起こらないよという意味かな、と理解する。


「あ、あのぉ、旦那様……」


 珍しくメイドの方から声をかけてきた。クララの専属メイドだ。


「なんだ?」


 伯爵様の口調はとても優しいものだった。


「クラリッサお嬢様のクローゼットが半分ほど空になっておりまして。宝飾品もほぼ半分に……」


 伯爵様が拳をぐっと握られた。


「そうか。妻の形見は?」


「どうやら手前の派手なものしか取られてはいないようです。奥様のご遺品は恐らくすべてご無事かと。昨晩、ダリアナお嬢様のお支度をお手伝いする際にクラリッサお嬢様が大切になさっていたものはいくつかありましたので回収したのですがエイダ奥様のお支度にはエイダ奥様が選んだ者しか入れなかったためそちらにあったものは回収できませんでした」


「そうか。ならば手切れ金だと思おう。クララにも気にさせないように」


「はい」


 伯爵様は再び大きなため息をついた。


「どんな言葉でクララからそれらを奪っていったのだろうな? 私の罪は本当に重いようだ」


 伯爵様のお心が深く沈んだことがわかった。


「どうして伯爵様の罪になるのですか? 伯爵様は再婚のこともクララを思ってなさったことなのでしょう? それともクララが伯爵様のそういうお優しいお気持ちをわからない子だと思うのですか?」


 伯爵様は僕の言葉に目を見開いて驚いていた。


「そうだな。クララは優しい子だ。説明すれば私のクララへの思いはわかってもらえると思っているよ」


「そうですよね! 僕でも伯爵様がクララのことが大好きなんだってわかりましたから!」


「ハハハ! そうか、そうか! そうだな……

バージル、ありがとう……」


 伯爵様は笑いながら泣いていた……。


「元々はクララに寂しい思いをさせたくなくて再婚したんだ。だが、君がいてくれれば私が再婚などせずともクララは寂しい思いをしなくて済みそうだしな」


 伯爵様にそう言われるとさすがに頬が熱くなるのを感じた。それでも僕はきちんと伝えた。


「そうなるように頑張ります!」


「よろしく頼むよ。公爵殿も心配されてるかもしれん。今日は早めに帰りなさい。またこちらへ遊びに来てくれると嬉しいよ」


「はい! また来ます」


 僕はクララに挨拶をして次回の来訪を約束し公爵邸へ帰った。

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