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42 クラリッサとの朝食

「おはよう、クララ。ずいぶん顔色もよくなったね」


 僕はクララの部屋で朝食を食べる約束になっていたのでメイドが呼びに来てくれ僕はクララの部屋へ来た。


「あっ! ジ、ジルっ!」


 部屋へ入ってきた僕をソファーの近くに立って迎えてくれたクララはすごく慌てている。


『ん? どうしたのだろう? 僕と朝食をするって聞いていないのかな?』


 今日はシンプルだけどドレスも着ているし髪も手入れがされてキレイにまとめられている。だけど少しだけ痩せたようだ。元々小さなクララだからちょっと心配だ。


「ジル……あのぉ。お願いがあるの」


「うん。クララのお願いなら喜んで!」


 僕はクララに不安を与えないため明るく元気に答える。


「あのね…昨日のことは忘れていただきたいの」


 クララがモジモジとしながら僕に乞う。


「ん? どれのこと?」


 僕はクララの近くまで来た。

 

「どれって……。その、できれば全部よ」

 

 眉尻をこれでもかと下げて困り顔のクララはとても可愛らしかった。


「ごめんクララ。君のお願いでも聞けないことがあるって知らなかった」


「え?」


「昨日のことを忘れるなんて嫌だよ。クララが初めて僕のことを大好きだって言ってくれたんだよ。忘れるわけないだろう?」


 僕はクララの顔を覗き込むように伺いをたてる。


「それですわっ!」


 クララは顔を手で覆い座り込んでしまった。耳まで赤くしていてすごく可愛らしい。


 僕はクスクスと笑いながらクララの両腕を後ろから抱えるように掴み立たせる。そのまま背中を押してソファーまで誘導して座らせる。


 そのタイミングで朝食が運ばれてきた。


「おはよう。昨日はありがとう。今日もよろしく頼むね」


 僕は二人のメイドにとびきりの笑顔で挨拶をした。


「「おはようございます、ボブバージル様」」


 メイド二人も昨日よりずっと明るい笑顔になっていた。


「旦那様のお言いつけでわたくしたちはクラリッサ様の専属に戻ることができました。ありがとうございました」


 メイド二人が僕に頭を下げて礼を言う。


「そ、それは本当なの? わたくしもうれしいわ!」


 クララは立ち上がると小走りにメイド二人の元へ向かい頬を赤く染めて抱きついた。ちょっと羨ましい。


「昨晩は目を開けると必ずどちらかがベッドの側にいてくれたからすごく安心して眠れましたわ」


「それはよろしかったですわ。しばらくはそうするようにと旦那様にご指示いただいておりますのでごゆっくり体調を戻してまいりましょう」


「ええ」


 三人が手を取り合っている姿が微笑ましかった。メイドの一人が僕の存在に気がついたといった様子でクララに殊更笑顔を向けた。


「クラリッサお嬢様、大変ステキな婚約者様でいらっしゃいますね。お相手を大事になさるなら時には想いを伝えなくてはいけませんよ。それを忘れてくれだなんて。ダメですよ」


 メイドは二人とも成人したばかりくらいな年齢だと思うけどしっかりとダメだと言ってくれるできるメイドのようだ。叱りながらも優しい口調にクララとの信頼関係がわかる。


「そうですよ。わたくしどもがここにこうして戻ってこれたのもボブバージル様のお陰です。あんなに何度も愛を呟いてくださるなんて。クラリッサお嬢様も頑張ってお応えしていきましょうね」


 僕の顔が赤くなりそうだ。


『確かに昨日はクララを説得するのに必死だったから。

思い出すと確かに恥ずかしいな』


「さあ。お嬢様の大好きなオムレツが冷めてしまいますわ。召し上がってくださいませ」


「そうね。今日はたくさんいただけそうよ」


「うん、クララ。朝食を一緒にいただこう」


 僕たちは食事をしながら今読んでいる本の話などをした。久しぶりの二人での話にどちらも話が止まらなかった。結局オムレツは冷めてしまいメイドたちに急かされて食べることになったのはご愛嬌だ。


 クララは僕が知ってる限りではまだまだ少食だったけどここ数週間のことを考えれば僕が目の前にいることで一生懸命食べてくれたんだろうと思う。


 メイドが僕に話しかける。


「食事が終わりましたら応接室にいらしていただきたいと旦那様が申しております」


「わかった。あと、一刻ほどで伺うよ」


「そう伝えてまいります」


 メイドは頭を下げてさがった。

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