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4 婚約

 一通り感想を述べ合うとクラリッサ嬢が僕を図書室へ案内してくれるといって僕の手を握りました。手を繋いだまま図書室へ行きます。クラリッサ嬢は図書室の入口で僕の顔が赤くなっていることに気がついてしまいました。


「あ、ごめんなさい」


 クラリッサ嬢が慌てて手を離して真っ赤になって俯きます。


「ううん、大丈夫だよ。嬉しかっただけだから……」


 今度は僕から手を繋ぎました。クラリッサ嬢はびっくりしたように肩を動かし上目遣いで僕を見ます。

 

『うわぁ! かわいい!』


 僕は驚いたことが見つからないように急いで前を向きます。


「このお部屋なの?」


 僕は男としてリードするようにクラリッサ嬢の手を引いて図書室へ入りました。


 クラリッサ嬢のお家の図書室は僕のお家の図書室より広くてたくさんの本が並んでいました。


「こっちよ」


 クラリッサ嬢は僕の手を離して本棚の一部へ行き僕へ声をかけます。僕は手が離れてホッとした気持ちと寂しい気持ちでとっても不思議な気分でした。自分に頷いて気持ちを変えてクラリッサ嬢についていきます。


「ここが私のご本よ。お父様もお母様もご自分の本棚をお持ちなのよ。私のお部屋にも本棚があるの」


 クラリッサは本のお話を楽しそうにしてくれてたくさんの本を勧められました。

 でも僕は断って一冊だけ借りることにしました。


「僕は何回もクラリッサ嬢に会いたいから今日借りるのはこれだけにしておくね」


 クラリッサ嬢はほっぺをさらに紅くして頷いてくれました。


 この日から僕はクラリッサ嬢をクララと呼びクラリッサ嬢も僕をジルと呼ぶようになりました。


 帰りの馬車の中で父上が僕とクララが婚約したことを教えてくれました。


「こんやくってなんですか?」


「大人になったら結婚しましょうという約束をすることだよ」


「僕はクララと結婚できるの?」


「ああそうだよ。嬉しいかい?」


「うん! あんなに可愛らしいい女の子と結婚できるんだからもちろん嬉しいよ!

僕はクララとの時間が大好きなんだ。結婚したらもっともっと大好きな時間が増えるんでしょう?」


「もちろんだ。だがバージルがクラリッサ嬢の家に入ることになるかもしれない。クラリッサ嬢と幸せになりたければ勉強は怠るなよ」


「うん! わかった!」


 そして僕がクララのお家へ遊びにいくことが多くなりました。


 クララのお母上様も本が大好きでよく少し難しい本を僕らに読んでくれます。お母上様が読んでくれる本はドキドキするものが多くて僕とクララは手を繋いで聞くこともありました。お母上様は読んでくれるのがとても上手なのです。声を変えたり声を大きくしたり小さくしたり時には手をガバーってあげて僕たちをびっくりさせます。お母上様は僕たちが手を取り合って小さな悲鳴を上げるとクスクスと笑うのです。


 いつも最後までは読み終わらないので次のお約束をして帰ります。そうすると次もすごく楽しみになって僕はクララのお家にいつも遊びに行くようになりました。


 少し経つとクララのお父上様とお母上様は僕たち二人に家庭教師をつけてくれたのでクララとお勉強も一緒にしました。違う国の言葉を習ってからそのお国の本を読むのはまた面白くてクララと言葉調べをしながら読みました。僕は算学も好きになったけどクララは歴史学の方が面白いと言っていました。


 時には中庭で図鑑を見ながら季節の花を楽しみました。お母上様が手入れをしているという中庭はいつもキレイなお花が咲いていました。クララの好きな花も教えてくれました。その花についてお勉強してから庭師のおじさんのお手伝いをするのはすごく面白かったのです。


クララとの時間にはいつも笑顔がいっぱいでした。


〰️ 〰️ 〰️


 だが、すごく楽しかったマクナイト家での日々だったが残念ながら突然終わりを告げた。


 僕たちが十一歳のときクララの乳母であるナルーティアが病気で亡くなった。僕とお父上様とお母上様とでクララをなぐさめた。


 だけど、悲しみはそれだけで終わらなかった。


 僕たちが十二歳の時、クララのお母上様が馬車の事故で亡くなってしまった。馬が急に暴れだしクララのお母上様は馬車から投げ出されその上に馬車が倒れたそうだ。


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