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35 死の予言

 僕と護衛が階段の踊り場で話しているとに応接室に様子を見に行ったもう一人の護衛が帰ってくる。


「あちらには誰もおりませんでした」


「ありがとう。今、クララの義妹であるダリアナ嬢と話したんだ。ダリアナ嬢は正気とは思えないような様子だった」


 僕の言葉を確認するかのように同僚の護衛に目を向けるとおそらく僕の後ろに控える護衛は頷いたのだろう。目を見開いていた。


「だからね、ダリアナ嬢をクララの部屋に行かせないで」


「年はボブバージル様と同じくらいで、まあ、自慢するだけあって美人だ。長い銀髪に金色の目だから間違えようがないと思う。この階段を登った左の部屋に入ったからそこがその女の部屋だろう。そいつが出てきたらとにかく近寄らせるな」


「わかった…」


 同僚の伯爵令嬢に対するあまりの言い方に当惑している様子だけど本当のことだから僕も否定のしようがない。


「あと、マクナイト伯爵夫人も入れないで。夫人は紺色の髪に金色の瞳で胸が大きい美人な人だよ」


「……承知しました。そのお二人は伯爵家の方? なのですよね?」


「俺もその義妹とやらとボブバージル様がお話になっているところにいなかったら信じられないと思うよ。とにかく全力で排除して問題ない」


「うん。僕も保証するよ」


「畏まりました」


 目を見開いて頷き先程僕を迎えに来たクララの部屋の前へと向かってくれた。


「クラリッサ様の義妹の顔を知っているのは私なので私が残れば確実なのですが、このような緊急事態では私はボブバージル様から離れるわけにはまいりません」


 二人の護衛のうち実力が上なのはこちらだということだ。いくら僕が頼んだとしても彼らの優先順位はクララより僕であるのは当然だ。


「わかった。よろしくね」


 応接室に入りソファーに沈み込むと先程のダリアナ嬢の言葉を頭の中で反芻する。


『そのお兄様がもうすぐ死ぬのよ』


 天使と言われそうな可愛らしいはずの顔を醜くひしゃげさせてダリアナ嬢は兄上の死を予言した。確かに兄上が亡くなることになれば僕は公爵を継がなければならなくなるだろう。


 だが人の死を予言する言葉を口にするなんて……おかしい。


 まるで僕が見ているものと似たような夢を見てそれを語っているようだ。僕の場合は誰かの死を見たことはないがダリアナ嬢の言動などを予言できるような夢の内容である。

 ダリアナ嬢の摩訶不思議な今までの言動と今回の予言に僕は僕に近い何かを感じていた。だがそれを確認するためには僕のこともダリアナ嬢に話さなければならないがそれはリスクが大きすぎる。


『ダリアナ嬢には今後はもっと近づかないようにしよう』


 僕は心に決めてグッと歯を食いしばった。


「ボブバージル様。大丈夫ですか? お顔色がすぐれませんよ。護衛を一人ここへ残しておきますからボブバージル様はご帰宅なさった方がよろしいかと思います」


「ううん。マクナイト伯爵様が戻られるまで待つよ。でも伯爵様が僕やクララの味方とは限らないからその時はお願いするね」


「もちろんです。命をかけてでもお守りしますよ」


「あはは。万が一でも伯爵様は武闘派じゃないからつかまれて引き倒されるくらいだと思うんだ。

でも僕は伯爵様がクララを心配して僕に会いに来てくれたのだと信じたい」


「そうですね」


 護衛は下を向いた。


「男は女で変わってしまうものなんだよな……。胸の大きい美女かぁ…」


 護衛のつぶやきは僕には聞こえなかった。

 

 ダリアナ嬢と話をしていたからか難しく考えてしまっていたせいかさほど待たずにメイドが呼びに来た。来たのはミルクを持ってきたメイドだったから僕たちは信用して三階へと戻ることができた。

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