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19 鏡の前での教育

 お優しいボブバージル様がクラリッサお義姉様に婚約破棄をするわけがないからお義姉様から言ってもらうしかないのよね。


 そのためにわたくしとエイダお母様はお義姉様との時間をたくさん持つことにしたの。


 ボブバージル様は本当に美しいの。軽くふわふわした金色の髪は肩の上ほどの長さで薄汚い男がそうなら吐き気を感じちゃうような髪型なのにきれいさがすごいの。お空のような目は大きくて笑ったときに優しそうになるところもすてき。

 ああ。わたくしはまだボブバージル様を上手に褒めきれないわ。ボブバージル様を表す言葉だけはしっかりと勉強しなくちゃならなわね。


 お義姉様にはボブバージル様が私に一目惚れしたところを見られていたし、誰が見ても私とボブバージル様がお似合いなのはわかりきっていることだわ。だから、お義姉様にはっきりそれをわかってもらうためにお母様と二人でお義姉様を毎日説得した。だって、不細工なお義姉様より美しい私の方がボブバージル様は幸せになるに決まっているもの。


 お義姉様は自覚が足りないの。だから、私がお義姉様のお部屋に行って教えてあげるの。お義姉様のクローゼットからキレイなドレスを見つけてお義姉様を鏡の前に私と一緒に立たせる。そして、どちらがそのドレスに似合うのかをお義姉様に言ってもらうのよ。そうやって、ネックレスも、指輪も、お義姉様と私を比べてお義姉様がどれだけ不細工なのかを教えてあげる。

 もちろん、教えた料金はいただくわ。たいていは、そのドレスだったりそのネックレスであることが多いわね。ドレスもネックレスも不細工なお義姉様を引き立てるより私を引き立てる方が幸せでしょう。うふふ。


 それからお義姉様の自慢しそうなものも潰しておくわ。


「お義姉様ったらこのご本には美しいということはどういうことか書いてありませんの?」


「その本は…この国の食料について書かれていて」


「あら? クラリッサは農業でもやるつもりなの? 泥にまみれるのはとても似合っているかもしれないけどボブバージル様にはお似合いにならないわね」


「いえ…。わたくしが農業をやるのではなく地域と気候とを考えて農作が少ない地域に適したものが見つかるかもしれませんし」


「お義姉様がやるのじゃないなら考えても意味ないじゃない。難しいことを言って誤魔化してもダメよ」


「そのようなことは殿方のお仕事です。女の貴女が口出ししていいお話なわけがないでしょう!」


「でも…。ジルは開拓していない地域に何が合うのか調べようって言ってくれて」


「そうやってボブバージル様のお優しさに甘えているのですね。お義姉様はそのお優しさに答えるつもりならもっと違うところを頑張った方がいいのではないですか?」


 わたくしは腰に手を当てて前のめりになって教えてあげる。ゲラティル子爵家で学校へ行っていた頃わたくしをしかる女の先生のマネよ。あれってムカつくけど文句が言えないって感じなのよね。

 うまくできているようでお義姉様は少し震えているみたいだった。


 私の演技を見ているお母様は楽しそうに笑っていた。お義姉様のビクビクした様子を笑っているのかもしれない。思わず私も吹き出しちゃったわ。


「あははは! ダリアナ。無理を言ってはダメじゃないの。顔は変えられないのよ。クラリッサでは頑張ってもボブバージル様を満足させられないわ」


「まあ! 可哀想なボブバージル様!」


「ジルは可哀想なのですか? 今度ジルにきちんと聞いてみます。わたくしはジルを困らせたくありませんもの」


「ほら! そうやってボブバージル様のお優しさにつけ込むつもりなのね。クラリッサ」


 エイダお母様はお義姉様の腕を引いて鏡の前に立たせる。


「これを頭に叩き込んで自分でよぉく考えてごらんなさい。貴女、考えることだ・け・は・得意なのでしょう。女らしくない小難しい本を見るくらいならこうして鏡をみて自分を見つめなさい。まったく恥ずかしいわ」


 お義姉様は鏡の前で蹲って動かなくなっていた。

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