13 オールポッド侯爵夫人
十七歳になる少し前に私に正式に縁談が来た。それがオールポッド侯爵家なの。私がデートした男性の中に侯爵様がいたみたい。身分を隠したお忍び旅行だったらしいわ。
『侯爵様が私に一目惚れらしいけど私はマナーもいい加減なのにいいのかしら?』
不安はあったけど子爵であるお父さんに侯爵家からの縁談を断れるはずもなく私は十七歳になる前に侯爵家へ移り誕生日のその日に結婚式をあげることになった。
何より悲しいのはバリーとの別れ。だから私はバリーに抱いてもらったの。ダリアナはその時の子供よ。一週間後には侯爵様との初夜だったから何の問題も起きなかったわ。
マナーのできない私は嫁いですぐに社交はしなくなった。
初めてのティーパーティーでイジメられたのよ。主人はとびきりかっこいいわけではないけど侯爵家の跡取りだったしオールポッド侯爵家はお金のある家だったから実は婚姻相手として人気だったとその時に知ったわ。十七歳の私には耐えられなかった。
ダリアナを自分で育てたいと言い訳をしたら主人はすぐに納得してくれたわ。それに主人は私に一目惚れするくらいだから私が外に出たがらないことは喜んでいたわね。
家にしかいなくても『あなたのためにキレイでいたい』と言えばドレスやアクセサリーは買いたい放題だった。
侯爵家に嫁いでからゲラティル子爵家に帰るたびに隣町にある貸金庫屋にお金や宝石を隠していった。主人は指輪もネックレスもほしいと言えばすぐに買ってくれたし教会に寄付するために売ったと言えばすぐに新しい物を買ってくれたから簡単だったわ。
ダリアナを連れて来たらバリーと会えないから侯爵家に置いてきたわ。私よりずっと優秀なメイドたちがいるから大丈夫でしょう。私は買収したメイドだけを連れて子爵家に行くの。
バリーと会っても性交渉はしないわ。お茶をするだけ。
バリーは小売り商店をしているからその悩みを聞いてあげて侯爵夫人としてアドバイスもするわ。しばらくしてバリーのススメでバリーのお店の共同経営者にもなった。だから当然出資もするわよ。私が侯爵家に戻っている間に強盗に入られたり輸入船が沈んだり中売り商人がいなくなったり大変だったけどバリーを励ましてお店は続けたわ。お金は侯爵家からもらえるからいくらでもあるしね。
それから主人が死ぬまでバリーとは性交渉はしなかった。だって主人は一応優しかったし贅沢はできたし。男の子ができるまでの我慢だと思ったの。
そんなときショックなものを見た。バリーが若くてピチピチしててなかなかの美人と腕を組んで歩いていたの。私が詰め寄るとその女を帰らせて私に言い訳をしていたわ。
「最近よく買い物をしてくれるお客さんなんだよ。エイダはこの街にいないから営業は全部俺がやっているだろう。最近の女性は図々しくてときには食事に付き合わないと買い物もしてくれないんだ。でも食事も女性もちだから完璧に営業だよ」
「なら追い返してよかったの? 私をオーナーの一人って紹介するべきだったんじゃないの?」
「それはできないよ。俺の店だって思っているから来てくれんだから。でも商品のアドバイザーだって紹介するべきだったね。だってエイダは侯爵夫人なんだから。こんなに美しい侯爵夫人がオススメする商品だって言えばよかったなぁ」
バリーは私の肩を抱いて顔を覗き込んできた。
『そうね。お客には共同経営者よりスーパーアドバイザーの方が効果的ね』
「バリー。これからはそう紹介してちょうだい」
「もちろんだよ。今日はもう店に戻らずにスイーツ店にでも行こう。君とお茶ができるなんて幸せだ。ハニー。早く帰ってきてくれよ」
「わかっているわ。お金をたっぷりもらって帰ってくるわ」
翌日、私は隣町の貸金庫屋へ行った。この店は貸金庫屋以外にも情報屋であったり秘密の仕入れ屋だったりするのだ。
「結婚して五年になるんだけど子供ができないのよ。早く男の子産んで離縁したんだけど」
「そうですかあ。エイダ様はもうお子様をお産みになっているから侯爵様が種なしってことではないと思うんですけどねぇ?」
「どういうこと?」
「男性にもね、子供を作れない体質の人っているんですよ。かくいう私もそのようでどんな女性と性交渉しても子供ができたためしがありません。女性の中には経産婦もいるんですけどねぇ。よかったら試してみますか?」
下卑た笑いを漏らす店主に嫌気が差す。ダリアナをこの街に連れてきたことがないから店主はダリアナがバリーに似ていることは知らない。




