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1 プロローグ&八歳のお見合い

「え?  やだ! すっごぉい! これって異世界転生ってやつじゃないの? まじ?

きゃあ! どうしよう!」


  黒髪に黒い瞳の女性が満面の笑みで飛び跳ねていた……。

  自分の中の彼女に話しかけることはできなかった……。


  数日後また彼女は再び出てきた。


「なあんだ。この中で見ているしかできないんじゃん。まじつまんないわ。

ちょっと先読みはできるみたいだけどそれだけじゃあねぇ。

そうだ! こいつにいいもの見せてやろう! あはは。どうなるか楽しみぃ。

ついでにあたしのことも忘れてもらおっと。だってその方がスリリングじゃん!」


 〰 〰 〰



 キラキラと輝く夏の小川のような銀糸の髪は彼女が振り返るとそれを追いかけるようにサラサラと流れ彼女の後ろに消える。代わりに現れたのは金色のくりくりとした大きな瞳で僕を見つけると三日月のように細くなった。


「ボブバージル様…」

 

 そのとてもとてもキレイな女の子は僕の側まで走ってくると僕の腕をとり甘えるように見つめる。


「僕の天使…」


 僕がそう呼ぶと僕の肩に頭を乗せて寄り添った。


 そして僕の足元には………泣き濡れている女の子。淡い桃色の髪はずぶ濡れで寝間着のような薄い服はか細い肩に張り付いている。その肩はプルプルと慄えていた。


 僕は泣いている女の子を助けたいのに体は動かない…言う事を聞かない。


 誰かっ! 誰か僕を起こしてくれ!


 僕は彼女を……




〰️ 〰️ 〰️


 僕ボブバージル・ギャレットの父上はこの国パールブライト王国の王弟で公爵という位と公爵領を賜っている。父上は兄である国王陛下の秘書兼代理兼相談役でつまりは国王陛下の側近をなさっていて国王陛下と同じくらい忙しいみたいだ。

 そのため僕は生まれた時から家族で王都にて暮らしていて領地には年に一度くらい行くだけだ。

 僕の家族は父上と母上と三つ上の兄上に一つ下の妹の五人。


 ……僕には誰にも…家族にも言えない秘密があるんだ。


 その秘密とは僕が時々見る変な夢のこと。


 初めて見たのは十三歳の時だった。


〰️ 〰️ 〰️


 僕はボブバージル・ギャレット、八歳です。

 僕は公爵家の子供なので婚約者を決めるためにお見合いをするそうです。


 お見合いって何をするのでしょう?


「とにかくテーブルに座って女の子とお話するのですよ」


 お母様とメイドが教えてくれました。

 お庭のテーブルに座って待っているとメイドに連れられて女の子がいらっしゃいました。


 僕は立ち上がって挨拶をします。


「ギャレットこうしゃくけのボブバージルです。今日は来てくださってありがとうございます」


 僕はメイドと練習したように言えたと思います。相手の女の子もお名前を教えてくれて二人でメイドが引いてくれた椅子に座りました。


 一人目の女の子は可愛らしい子でしたが僕が何を聞いても『うん、うん』と言うだけでずっとお菓子を食べていました。


 あまりその子のことがわかりませんでした。


 あ! お菓子は好きな子なのだと思います。


「あら? バージルよりお話をしないなんて珍しい女の子ね。一応、保留ね」


 違う日にまた『お見合い』をしました。挨拶をしてお席に座ります。


 二人目の女の子はとても明るい女の子でずっとお一人でお話をしていて僕は頷くしかできませんでした。

 僕は女の子のお話の速さに目を回してしまいその日の夜にお熱を出してしまいました。


「バージルはおしゃべりすぎる子もダメなのねぇ……。お熱を出すようでは一緒にはいられないわね。お断りしましょう」


 違う日にまた『お見合い』をしました。挨拶をしてお席に座ります。

 僕は三回目なのでとても上手にご挨拶もできたしご挨拶の後に『にっこり』もできました。

 

 三人目の女の子はとてもキレイなお顔の女の子で……。

 でも……ずっと僕じゃない方を向いて怒っているようでした。

 僕は何もお話できなくてお菓子も食べられなくてずっとずっと下を向いていて…。そうしたらその女の子も何もお話しないでやっぱりあっちを向いています。

 そしてそのまま帰ってしまいました。


「まさか? あの子はそんな子だったかしら? バージルのことがよほどイヤだったのかしらねぇ?」


 お母様は小さくため息を吐きましたが僕を怒ることはありませんでした。

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