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プロローグ 『神様』

 Q,この世の中に神様は存在すると思いますか?


 私は存在すると思います。

 神様はきっと、誰かが困っている時に手を差し伸べてくれる。


 あらゆる『理不尽』に打ちのめされた時にも。

 過酷な『運命』が待ち受けていようと。


『絶望』に心が染められた時も。


 きっと神様は善行を見ていてくれる。


 だから、力をくれた。


 だからどんな理不尽にも立ち向かえた。

 運命にも抗った。


『絶望』すらも乗り越えて見せた。


 全て天から見ていてくれているであろう神様が手を差し伸べてくれたから、乗り越えられた。


 自分の力で乗り越えられるだけの『勇気』を貰えた。


 だから、この世の中に神様は存在しています。

 神様は助けてくれます、善人を、きっと。


 なのに、なのに。


 なんで、どうして…どうしてこんなことに…。






 ***






 ——神様の救い、なんてものはない


 仰向けの体勢で地面に横たわり、口元からは血泡が零れる。全身の感覚すら失った少女は言葉を出そうとも出せない。

 周りでは鉄がぶつかり、耳に障るような激しい音を鳴らしている。斬閃が飛び交い、少女の周りの景色をひたすらに赤色に染め上げていく。自分の身体が冷たくなっていく感覚を時間をかけじっくり味合わされながら、彼女の光景が彩られていく。


 ——神様なんて、存在しない


 そう、神様なんてこの世にいない。いるわけない。いるはずがない。

 時に人は言う。『これは運命です、受け入れましょう』『神の思し召し』という言い逃れの言葉を。そんなもの、都合の良い言葉を淡々と連ねただけ。全ては不幸の責任を自分たちの自己責任として押し付けられたくないが為に。


 ——何が『神力ギフト』だ。何が『運命』だ。


 こんなものもただ戯言に過ぎない。焼けるように熱い自分の「 」を目にし、『 』への恐怖が極限まで昂っているからだ。でも、そんな感情も徐々に失われていく。


(嗚呼…)


 もう呼吸すらままならなくなってきた。

 無理に言葉を絞り出そうとするも、喉奥から登るものにそれは遮られ、口元からさらに血を零してしまう。


 周りでは自分を呼ぶような声が聞こえる。でもそんな声も遠くなってきた。五感のうち、視力以外はダメになってきているかもしれない。そんな中、視界すらもぼやけてきた。


(これはもう…本当にダメかもしれない)


『生き残る』って彼に誓ったのに。『必ず成し遂げよう』って約束したのに。『絶対に守る』って目の前で言ってあげたのに。自分は、もう、何も出来ないまま朽ちていく。


 仰向けに倒れている彼女の周りで真っ赤に染まっていない地はもはや残っていなかった。


 胸に穴をあけて血塗れで倒れている彼女の地、には。

 鮮血に汚され、痛苦に身体は喘ぎ、心までもがメキメキと音を立てて折られていく。


 ひたすらに、自分の為に必死になる「彼」に手を差し出して、大丈夫。と伝えてあげたい。そんな事すらも叶わない。


 彼の頬に滴る水滴すら、拭ってあげることが出来ない。いま、動けない辛さを、苦痛を味わいながら。言葉をかけてすらあげられない自分の惨めさと未熟さ、そして、後悔をその胸の内に秘めながら。







 ——私は、【運命】に絶望しながら、その目を閉じた。



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