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後編

   

「ねえ、どう思う? やっぱり私、つきまとわれてるのかな……?」

「だとしたら心配だね」

 喫茶店でアイスティーに口をつけながら、理恵(りえ)は軽く頷いてみせる。口では「心配」と言いながら、気持ちのこもっていない口調だった。


 二人で遊んでいる時に、親友の法子から灰色の服の男について聞かされるのは、これが初めてではない。最初の頃は理恵も真剣に聞いていたけれど、最近では話半分という態度になっていた。

「でもさ、法子。結果的には、その男に助けられてるんでしょう? だったらストーカーどころか、あなた専属のヒーローみたいなもんじゃないの?」

「やめてよ、そんな言い方……」

 法子は思いっきり顔をしかめている。サラリーマン風のメガネ男は、彼女の好みのタイプではないのだろう。

 理恵は一般的な意味で「ヒーロー」という言葉を使ったのに、法子の方では、少女漫画的な意味で――主人公の恋の相手役として――受け取ったらしい。


 そんなことを理恵が考えていると、

「ほら、見て!」

 慌てた様子で、法子が窓の外を指さした。

「理恵にも見えるよね? あそこにいるわ、灰色スーツの男が!」

「うーん、どれのことかな……?」

 理恵は曖昧に返事する。

 サラリーマンなんて、たくさん歩いている。灰色の背広だって、ありがちな服装だろう。おそらく別人なのに、勝手に法子は「同一人物だ」と思い込んでいるに違いない。

 理恵は最初そう考えていたが……。

 同様のケースで法子の指し示す方向を見ても、灰色のスーツを着た男が全く見当たらない場合も多いのだ。

 だから今では、こう考えるようになっていた。

 見間違え以前に、いもしない者を法子は「見た」と思い込んでいるのではないだろうか。

 灰色スーツのメガネ男は、実際には存在しない人物、つまり法子のイマジナリーフレンドではないだろうか。




 このように……。

 当の法子からはストーカー、彼女の親友の理恵からはイマジナリーフレンドと思われてしまう。それでも(おのれ)(つと)めに励むのが、法子の守護霊だった。




(「いつも私を助けてくれる」完)

   

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