機械の故障 二倍
機械と水の相性は最悪だ。
だから俺は、パソコンなどを持って移動するときは、濡らさないように細心の注意を払う事にしていた。
カバンの中央にいれて、ビニールでつつんで、傘もなるべくかばんを守るようにさす。
手間はかかるさ。
時間もな。
けど。
パソコンには、仕事でつかう大事なデータが入っているからこれくらい当然だ。
俺のミスで何十人、何百人の人の迷惑がかかるんだから。
その苦労は背負うべきだ。
けれど世の中には、どれだけ注意しても足りない予想外の事が起きる。
「追突するぞ!」
乗っていたバスが、ありえない挙動でガードレールにぶつかった。
とっさに頭をまもって、身をかがめたから怪我はしなくてすんだ。
しかし荷物棚にのせていたカバンが吹っ飛んで。
追突の衝撃で。割れた窓の外に飛び出してしまう。
そこに不幸にも、後続の車が通りかかる。
そうなるともう。
……悲劇しかない。
「カバンはどこだ!? どこにいったんだ。って、あああああ!!」
探し出したカバンは、ぺしゃんこになっていた。
車のタイヤの跡がついていた。
中のパソコンもバキバキになっていた。
ダメ押しに降り注ぐ雨までしみこんでいた。
おわった。
俺はうなだれた。
正直事故のダメージよりも高いと思う。
体が無事だった喜びを一瞬で忘れさせるなんて、罪深い奴だなお前。