やっぱりな。
「ほぅ、それはどういうことだね?Eクラスのアルフ君?」
そのとき俺は今一番聞きたくない声を聞いてしまった。視界の片隅でサリナの顔が青ざめてゆくのが見えた。
まずいぞコレは...いっそコイツの記憶ファイル消し去ってしまおうかな...
そう思って俺は身構える。俺は一言敬語で、
「何故気品のあるようなAクラスの、いや序列1位様がこんな校舎裏に?カフェだってあるでしょう?」
そう少し確認するように訊いてみると、奴は
「お前のおかげで私は剣が握れないのだが?どうしてくれるんだね?」
「はて?何のことだろうな?俺はただ神の導きに従っただけだが。」
神の導きは決して嘘ではない。何故なら、この『program』は確かに神から受け継がれる「ユニークスキル」だからな。
すると奴は少し顔を強張らせて、言い放った。
「物理攻撃力を消し去ったといったな。では、これはど...」
「『program』...奴のhp以外全てを無に返せ」
int speed set = 0
int mp set = 0
int hp set = 1
int rozenATK = 0
int rozenMAG = 0
int rozenDEF = 0
int rozenMDF = 0
『カイザン後の数値を入力完了』
俺がそう呟いたとたんに、奴の魔術が消え去った。
「なっ...ど...どいうことだ、説明しろ!!」
「お前が余計なことしなきゃ消し去らなかったのにな。自業自得だ脳筋女。まぁ、精々頑張って生きてくれよな。」
俺がそう言い放つと、奴はその場にへたり込んでしまった。そんなことはどうでもよくて、問題はサリナの方だ。
「アルフ、流石にやりすぎじゃない?コレ。何か、基本魔術攻撃力は0でいいんだけど、何も基本防御力と魔術防御力まで下げなくてもいいんじゃない?ほら、可哀そうだし。」
「そうか?だってコイツらは俺らに傷を付けようとしてきたんだぞ?じゃあ、こっちがぶん殴り返したっていいんじゃないか?」
「え、さっきアルフ自分で言ってたよね、俺らの基本ステータスは5ケタくらい増やしたって...アルフが一発殴るだけでこの建物粉々になっちゃうんでしょ?なら、人間殴ったら相当ヤバくなっちゃうんじゃ...」
「あぁ、そのことか、大丈夫デコピンで吹っ飛ばすだけだし。ほら、たったの3㎞吹っ飛ぶだけだからな。Aクラスのひとなら平気だろう?だってあのAクラスの人間だもの!!」
「それがやばいんだよぉ!!」
俺たちの普通の人間ではない会話を聞いているローゼン=リライトは、瞳から微かに涙を流していた。
「エ?何で泣いてんのコイツ!?え?まぢで。俺なんか悪いことしたか!?」
「あのねぇ、私たちのやってることは国家どころじゃなくて世界規模でえげつないことやってるって自覚ない?」
「あのなぁ、数値をマイナスの位にもってってないだけ感感謝しやがれくださいよ?もし、マイナスにしたらお前の攻撃0どころか、俺が回復するんだぜ?治癒士目指せんだぞ?最高じゃねぇか。」
「ぐすっ...ぐすっ....ごめ...んな...さい...許し...て..く..だ...さい...」
「は?何か俺が悪役みたいになってんじゃねぇかよ。元はお前らのせいだろうが。」
「アルフ、気づいてないかも知れないけど、もう十分に悪役どころか魔王ルート直進してるよ?」
「あーもぉー、しょーがねぇな~、基本ステータスはAクラスの平均値まで戻してやるよ、感謝しやがれよな。『program』...こいつを書き換えろ」
tmp class A AVG()
int speed set = 320
int mp set = 480
int hp set = 3067
int rozenATK = 914
int rozenMAG = 713
int rozenDEF = 829
int rozenMDF = 657
『カイザン後の数値の入力完了』
「うおっ、Aクラスの平均ってこんな低いのかよ...意外だな。まぁいいか。じゃあな、変な気は起こさないでくれよ。もし起こしたら今度はこの学園ごと消し去らなければならなくなっちまうからな。行こうぜ、サリナ。」
「う、うんそうだね!!それでは、序列1位様。」
俺たちは奴を残して教室へと戻っていった。その後の授業は全て座学だったのでスムーズに進んでいった。
「今日の授業はここまで、そして一つ皆さんにとっては悲しいお知らせがあります...」
そしてそんな爆弾発言を授業終わりにシー先生は言い放った。俺たちの顔は死んでゆく。まぁ、大体予想はつくだろうけどな。
「明日の午前授業はまた、Aクラスとの模擬戦になります...」
やっぱりな。だって序列1位様が序列最下位の俺に負けちゃったんだもんな。そりゃAクラスの人は起こるわな。あ~、だるいから明日はサリナ誘って一緒に保健室行こうかな。
俺はそんなことを考えながら家路をたどったのだった。