カイザン
「これより、第一学年、Aクラス隊Eクラスの模擬戦を始める!!生徒一同、敬意をもって戦うように!!」
このしまった顔で高らかに言い放つ女子生徒はAクラス代表のローゼン=リライトだ。序列は勿論1位だ。
この掛け声を聞いて、Aクラスの奴らは威勢よく、生気のこもった声で「おー!!」とレスポンスしていた。対して俺含めEクラスでは、皆揃ってまるで死んだ魚のような眼をして、かつ生気の全く感じられない声で、「ぉぉ~...はぁ~....」とレスポンスしていた。まぁそうだろうなと俺は思う。何せ、模擬戦なんか行わなくても勝敗が完全にわかっているからだ。俺もヤレヤレと思いながら軽いため息を吐いた。
様々な説明や誰とやるのかををダダ流しに聞き終わると、トテトテとサリナは俺の方に駆け寄ってきた。
「ねぇねぇ、ラルフは今日はどーすんの?」
「ん~、今日の模擬戦は個人戦らしいから、怪我は少量で済みそうなのだが...まぁ俺はさっさとリタイアするつもりだ。」
「さっき言ってたことよりひどくなってない?ねぇ!?さっきできるだけやれることをやってからリタイアするっていってたよね!?」
「えぇ...だって怖いじゃん...」
「え...名にその顔!?...でも私は自分の実力をしっかり自分の目で確認したいからできるところまでやろうかな。えーと、確か私の相手はリリー=アンゼットさんだったような。魔術が得意らしいけど。」
誰そいつ。まぁ俺かかわったこともないし関わりたくないし。覚えなくていいか。!?まって今サリナなんて言った!?
「え!?魔術ってお前の天敵じゃん...どうするんだよ?」
俺は少し不安になりながらサリナに聞いてみた。だが返答は
「やっぱ脳筋1本攻めでしょ!!」
「はぁ~...やっぱりそうなっちゃうんだよなぁ...」
「え!?何でそんなんになっちゃうの!?私なんかヘンなコト言った?」
「もう何も言わねぇや...まぁ、頑張れよ!!」
「うんっ!!私頑張るよ!!そろそろはじまりそうだから、じゃあ行ってくるね!!」
そう言ってサリナは自身の剣をもって相手の待っているコートへと走り出した。サリナが行ったあと俺は一人ポツリと呟く。
「サリナが頑張るってんなら俺も少しくらいは頑張ろうかな。」
俺の「空っぽ」の中に一滴雫が垂れ落ちる。俺はそう心に決め、今日の相手のいるコートに向かってノロノロと歩いて行った。
「遅いわ!!貴方はいつまで私を待たせるつもりなの?上のモノへの敬意がなってないじゃない!!」
コートに来て早々俺を説教しているのはさっき敬意を持ってなんちゃら~って言ってた序列1位の奴だった。俺は目の前の奴を見てため息をつく。そして一言
「へいへい、大変申し訳ございませんでしたっと。」
煽るように決めてやった。目の前の脳筋女へのこの煽りにも意味が少なからずある。煽る行為というのは相手の感情を憤怒の方向へ持っていく事ができるほか、相手の行動選択肢の中に攻撃を選ぶ確率を上げることができるのだ。なお、知能がしっかりついている奴ほどこの煽りの効果は薄くなるのだが。生憎、この学園には知能が高い人間など2パーセントいるかいないかなので、大半が、この戦法に引っかかるのだ。
そう、目の前で憤怒の表情を見せている奴のようにな。
「まぁまぁ、そんな興奮しないでくだせぇローゼンさん。まだ勝負は始まっ..」
「うるさい!死ねぇぇ!!!!!」
おいおい、それさっきまで敬意がどうのこうの言ってた奴の発言じゃねぇぞ...まぁ、どうにかして1回だけ相手にヒットさせられればいいだろう。
俺はそう思ってさっき係員さんからもらった訓練用の剣を構え、目の前から突撃してくる奴を対処しようとしたときだった。
「やば、コイツめっちゃ早いやん!!ほんとにマジで死ぬかもぉぉっ!!」
俺は剣で受け止めるのは無理だと判断し、咄嗟に横にジャンプして回避をした。が、
やばいな...地味に右腕を掠ったか...これじゃあ利き手で剣を振れないな...
そうこう考えているうちにまた奴は俺めがけて走ってくる。
「はぁぁぁあああ!!」
「ぐっ...やっやべぇ!!」
剣と剣がぶつかり合い、少し火花が散る。このままじゃジリ貧だぞ..
運が悪いのか、ここでまた俺の奥深くにいる底なしの「空っぽ」が疼き始める。
ケセ...コロセ...ソイツヲカイザンシロ!!...イマスグニ...
俺はまたこの疼きのせいで集中力をそがれ、手に握りしめていた訓練用の剣を奴に弾き飛ばされてしまう。でも、まだ俺は諦めなかった。そして俺は気が付くと一言いい放っていた。
「もうどうでもいい...『program』...こいつの攻撃を消せ」
気が付くと、目の前には、相手の剣が転がっていた。目を上げると、奴の近くに、謎の文字が映し出されていたが、俺には直ぐに理解できた。
int rozenATK=0
『カンザン後の数値を入力完了』
今俺はローゼンの力を0に変えた。今なら俺の攻撃力でも思う存分叩ける。
俺は口角を上げて奴の首元めがけて訓練用の剣を振りかぶった時だった。
「試合、終了!!しょっ勝者Eクラスのアルフ!!」
他のAクラスの奴らが止めに入ったのだった。まぁそうだろうな、だってもうコイツの物理攻撃力は0で、戦闘不能状態だもんな。俺は、最後くらいしっかりやらないと思い、敬語で挨拶をした。
「ローゼン=リライトさん、試合していただき、ありがとうございました。それでは、失礼します。」
そう言って僕は保健室へとリタイアしに行ったのだった。俺は後ろからの目線があり得ないくらい痛かったが。
どうも、E氏でございます。なんか気分が乗っちゃってフツーに続き書いちゃってました。
宜しければブクマ、評価等していただけると有り難いです。
それでは
E氏より