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Extraとなった日

試合開始10分前、相変わらず何もない待機室で俺は自身の「心」に身を寄せていた。一体自分がしたいことは何だったのか。自分が今どこに向かおうとしているのか。あるいはたどり着いたとして自分がそこで何ができるのか。

答えはもう出ている。というよりは決まってしまっている。


「....俺は....このしょうもない格差を()()()()()()()()。」


いつだってそうだった学年によるもの、魔術の制御力、剣術の腕前、格闘術の実力、弓の制御力、斧の応用力、模擬戦での立ち回り、それに基本ステータス...

どれもこれも数値などで評価され、数値の高い者は強者、低い者は弱者と決めつけられて罵倒され、どれもゴミを見るように扱う。数値では測り切れない人の能力すら切り捨ててしまうことに、俺はそんなんで良いのかとこの『ユニークスキル』を発眼されるまで、いや今も考えている。

そのためにも俺はここで勝ち、序列を譲渡し、最下位に居座らなければならない。

これだけは必ず行う。俺はそう自身の()()()()「心」に誓った。


そう思うと自然に俺の底なしの「心」は俺の思いに応えてくれたかのように躍り上がる。


「試合開始5分前です....選手の2人は第1コートに来てください。繰り返します、試合開始5分前です....選手の2人は第1コートに来てください。」


「さて、一発『心』と戦ってくるか。」


そう言って俺は陰りのない笑顔でただ一人、明快に歩いて行った。



「さて、いよいよ最終戦、決勝戦の開幕ですね!!今回の決勝戦は両選手、気になっていますね~...う~ん、僕でもどちらが勝つか予想が付きません!!エミリーさんはやはりローゼン=リライト選手はですか?」

「はい、当たり前でしょう。今回勝つのはやはり、戦歴データの多い、ローゼン=リライト選手だと思いますね。アルフ選手はローゼン=リライト選手の動きについていけるのかというと、という話ですね。」

「そうですか~、う~ん、でもやっぱり僕はダークホース側ですね!!あそこまで全戦ほぼ不動で勝利してるので、まだ何か隠し玉を持っていそうな雰囲気を発していますし!!おおっと!!どうやら両選手、コートで仲良くおしゃべりをし始めたぞ!!」


そう言って俺とローゼンの方に視線が集まる。何だよ、ただ単に俺がハンデをあげようとしてるだけなのに。


「ま、まぁいい。取り敢えず序列1位サマには30秒猶予をやる。そうしないと、試合の面白みがなくなってしまうからな。お前のATK値と俺のDEF値の差だと、明らかにお前の方が弱すぎるからな。ただ、遅すぎる剣を振ってきたのなら俺は素手で止めるからな。」

「私にもまだチャンスはくれるのだな。優しいのだなアルフ様は。では、本気でやらせてもらうぞ。」

「けっ、俺はただの鬼畜最下位だっつの。そろそろ位置につくぞ。」


そう言って俺とローゼンは自身の位置につく。そこへ審判らしき人が入ってきて、


「これより、サロバニア学園の序列戦、決勝を行う。...始めッ!!」


という声と同時に、俺は()()()()()()()()そこに立ちとどまる。

一方、ローゼンの方は、剣を鞘から取り出し俺に向け、大きく


第10階梯(デュカ) エンチャント・ブレイブ・Petit Thunder Emperor」


と言い放ち、自身の剣に雷属性を付加する。Petitとついている当たり、本物の雷帝ではないことが分かる。

とは思いながらも俺は恐怖という感情がないようにその場に堂々と立ち続ける。


「はぁぁああああぁ!!」


その掛け声と同時にかなり早い速度で俺に接近して一凪ぎするが、


「...っ!?」


ローゼンの剣は斬れてはいなくて、俺の手の平に止められていた。そして、俺は一言、


「お前ならもっと早く斬れるんじゃないか?...第2階梯(セカンド)スピードアップ...10秒経過だもう一回来い。」


と、ローゼンにスピードを2倍にさせる魔術をかけ、もう一度と言った。それを言われたローゼンは俺の言う通り、もう一度、先ほどより早いスピードで、斬りかかってくる。


「....なぁっ!?」


だがしかし、その剣は俺の手のひらに綺麗に受け止められる。そしてまた俺は未来を見据えるように一言、


「家の型なんて忘れろ。お前の好きなように、お前だけの我流で振り切れ。自分の『心』と向き合え。20秒経過。次がラストチャンスだ。」


ローゼンは何かに気が付いたようで、先ほどまでの型の面影が残らないような剣の構え方を変え、リラックスした型で俺を見て、吹っ切れた表情で向かってくる。速度も先ほどはケタ違いに上がっている。

俺は手を出して受け止めようとするが、それの反応は遅れ剣が直撃する。....しかし俺の腕からは血が流れない。


「やるじゃねぇか。それでいいんだよ。30秒の特訓教室はおしまいだ。じゃあ、こっちから詰めるぜ。本当のエンチャントはこれだ。『call.SwordAlf』...第26階梯(ジオセクスタ)エンチャント・ブレイブ・death spirit」


そう俺が呟くと、俺が生成した剣に死の精霊が宿る。そして、俺が音速ともいえようスピードでローゼンに接近し、一閃。ローゼンは反応しきれずに首を飛ばされた。


「対戦ありがとうございました。ま、知ってるやつだし、こんくらいはな。第14階梯(ワオクアドラ)All resurrected...」


そう言って俺は蘇生士さんが来るよりも先に、蘇生魔術をかけた。すると、俺が蘇生させる光景を見ていた蘇生士さんが手に持っていたマニュアルブックを手から落として立ち止まっている。

審判はやっと正気に戻ったようで、


「しょ、勝者、1年Eクラスのアルフ!!」


と言うが、会場は鎮まり返っている。俺は、はぁ~と深いため息をつく。まぁ、こうなるのは予想がついていた。何せ、元序列1位に最初の30秒で特訓を施し、その後秒殺したのだからな。

そうこうと俺が肩を下ろしていると、後ろから、


「アルフ様、序列1位おめでとうございます。学園長がお呼びですよ?あちらのステージに向かって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


と笑顔で全快したローゼンが話しかけてくる。俺は、「そうだな」と言い、学園長のもとに行く。

学園長のもとに行き、俺は会場全員に聞こえるような大声でこういった。


「学園長!!俺には序列というくだらない評価は必要ありません!!」


俺がそう言うと、少し活気を取り戻してきた会場がまた鎮まり返る。学園長は、あんぐりと口を開けて、俺の方をまじまじと見てくるが、俺は続けて言い放つ。


「ですので、俺は()()()に君臨し、本来優勝するはずだったローゼン=リライト選手にこの()()()()()()順位を譲渡します!!...以上!!有り難うございました!!」


俺は澄み切った表情で明快にそう言い放ち、その場を立ち去ろうとする。が、


「ま、待つんだアルフ選手!!...君には順位は要らないと言ったが本当にそれでいいのか....!?」

「俺にはそんな()()()()()モノなんて要らないといった。基本ステータスだけで他者を見下し、クラスごとに、立場を決めつけ、弄ぶようなこの世界に()()()()()()()()モノなんて俺には要らないんだ!!...よし、この際だから言っておくことにするが、全学年のEクラスの皆!!俺たちはただのEクラスじゃない!!『Extra』のEなんだ!!、先輩方、諦めないでください!!僕のように、元々AクラスことAmateurクラスなどに毎日無能、使えないと言われてきた俺が勝てたんです!!先輩方にも必ず何か打開策は存在するんです!!自分で見つけられないというEクラスの先輩の方のみなら僕が個人的に指導させてください、待ってますよ!!」


俺はそう言って、1年、2年、3年のEクラスの席に向けてそう大声で明快に言い放った。学園長やAmateurクラスの奴らは顔色が悪くなっているが、全学年のEクラスの皆は大声で、


「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」


と叫び、会場が一気に盛り上がった。


そして、俺は一言、静かに呟く、


「『program』....全ての全能者(Eクラスの皆)の基本ステータスを()()()書き換えろ(カイザンしろ)


『短縮文を検出。全項目の全数値の書き換えを完了』


俺はそのまま笑顔で続けて、ある忠言を言い放つ。


「だが強くなったからと言って、自身の力を弱者へ向けるような真似はしないこと!!もし、そうなった場合はどこかのAmateurクラスと同じになってしまいます!!分かりましたか!?」


「「「「「「「当ったり前だろォォォォォォォ!!!!!」」」」」」」


希望に満ち溢れた生きのいいレスポンスが返ってきたので、俺は自分の胸をなでおろし、笑顔で会場を立ち去った。

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