決勝前のいざこざ
俺が会場から出て、リフレッシュがてら屋上庭園にでも行こうと、校舎の廊下をノロノロと歩いているときだった。
「1年Eクラスのアルフというものは君かね?」
突然、見知らぬ教員から声をかけられた。俺は、面倒ごとはごめんなので1人称すら変えてこう言う。
「いいえ、僕とは別人ですけど...」
「そうか、すまない...アルフという方を見たら是非学園長室に来てほしいと伝えてくれ、では。」
「分かりました。......だれがんなクソ情報教えるかっての。どーせ取り調べかなんかだろう?面倒くさいな。」
そんなことを呟きながら俺はあの教員を見送る。ある程度距離をとって俺は近くの階段を昇り屋上まで歩いて行った。
屋上庭園はいつもならここの生徒で賑わっているのだが、今日はこのゴミみたいな序列戦のお陰で生徒は皆会場である闘技場にいる。よって俺は1人でこの屋上庭園を使うことができるのだ。実に素晴らしいことだと思う。そして次の決勝戦まで1時間近くあるので、俺はここに1人で昼寝でもしようかと思っていた。
ところがどうやら俺には休息の時間なんてないのかもしれない。
近くに人の気配が2つある。めんどくせぇから撃ち殺しとこうかな。どうせろくでもないこと企んでそうだし。
そう思って俺は
「『call.Revolver』...Bang!!」
パンパァン!!
ノータイム撃ちで俺の撃った2か所から人が2人が倒れた音が聞こえてきた。
俺はその2人の死体を取り敢えず、目の前の1か所に集め、
「第14階梯All resurrected」
そう言い、目の前に中くらいのサイズの魔術陣が現れ、目の前の2人を生き返らせた。そして俺は一言、
「俺に一体何の用だ?というか見たことないけど、お前ら誰?どこの子供?ここいちおう高等部なんだがここ。」
と言ってのける。すると目の前の2人は青ざめた表情で、「あ、あぁ..」と声にもならない声で怯える。
俺はまたしゃ~ねぇなと大きなため息をつき、手を引っ張って態勢を起こしてやり、
「はぁ~...え~と、お前らの親何処にいる?送ってってやる。」
「.....ない...」
「は?何だよ。ほら、親がお前らを待ってんだろ?早く行く...」
「私たちは子供じゃない!!」
「はぁ?....あぁ分かったぞお前らあれだな、大人みたいになりたい系か。そりゃすまんな、俺そういうところしっかりしてないもんで。」
「あなた、このイシュカ=テイラー=エスパルザとメルネ=テイラー=エスパルザを知らないの!?」
「は?ははっ、何言ってんだよ冗談は止せ、王女様つったら俺より年上だろ?珍しいのが、第二王女で2つ上くらいだろ?ははは!!」
俺が流石にそれはないだろうと思いっきり笑ってみたが、目の前の2人の顔色がどんどん沈んでゆく。
そしてイシュカの口からとんでもない言葉が発される。
「貴様、不敬罪で死刑にするぞ!!」
「おぉう、それは怖いな。....でも、この国全土が俺のキルゾーンだから、先に滅ぶのはお前らだと思うんだがな。」
俺は黒い眼差しで、不敵に笑みを浮かべる。すると、メルネの方が少しビクッと肩を震わせる。イシュカの方は、少し冷や汗が流れている。
「まぁ、そんならこんなところにいては王族サマ(笑)は良いことないだろうし、何せ、この学園最下位といてもいい気はしないから、早々にここから出て行ってくれると助かるな。」
俺が鼻で笑うように軽く言うと、目の前の2人はあからさまに怯え始めた。そしてイシュカが口を開く。
「き....貴様が...あの魔術を...」
「あ?何だよ。魔術?...あぁ、あんなん誰でもできんぞ。」
「こっ...殺される....!!...お願い...やめて...!!」
「はぁ?殺す?どこに俺がお前らなんかを殺す需要があんだよ。まず、お前ら俺の眼中にないし。まぁいいや、で?俺に何の用があんだよ。」
「...っ!!王族にすら眼中にないと...!?これ、メルネ、しっかりしなさい!!」
「はぁ~片っぽダウンしてんじゃん...で?早く用件だけを言ってくれない?」
「わ、分かった。端的に言うと私たちのお母さまがお前を呼んでいる。学園長室にいるはずだ。そこへ向かってほしい。」
はぁ~と俺はまた大きなため息をついた。確定イベントかなコレ。面倒くさいなぁ...
「わーったよ、行きゃあいいんだろ行きゃあ。けっ、本当に面倒なことになってきやがったぞ。」
と、1人機嫌悪く呟いて屋上庭園を後にしたのだった。王族で現王女のやつに呼ばれるとしたら、余程の事だったのだろう。そんなにEクラスで最下位、かつ平民に負けんのが嫌なのかよ。しょーもねぇな。
俺は廊下を歩いている途中で何かあったらのことを考え、リフレクションとフィジカルリフレクションを重ね掛けしておいた。
「さて、地味に入学してから校長室に入るのって初めてなんだよな。意外と緊張するもんなんだな。」
という俺の緊張感をねじ伏せ、俺は学園長室に入った。入ってすぐのソファには、学園長と、先ほど、教員やあの2人の王女共がいってた奴が座っていた。俺は気持ち悪いぐらいの敬語と、一人称までを変えて、
「こんにちは。僕が1年Eクラスのアルフです、お呼びに預かり参りました。」
というと、学園長は俺に気が付き、こっちにこいと手招きした。俺は、取り敢えず学園長の指示に従い、奴と向かい側のソファに腰を掛けた。
すると奴は開始早々に、思ってもみなかったことを言い始めた。
「1年Eクラスのアルフ....ね。あなた、うちのアリアーヌに何かしたでしょう?ここで吐きなさい。」
俺は服従系統の魔術が無詠唱で発されたことを感じとり、リフレクションをオート発動させる。すると、奴お顔は少し歪んだ。まさか自身の魔術が反射されるとは思わなかったのだろう。学園長はこの攻防に気が付いていないようなので、俺は隠し通すようにレスポンスする。
「そうですね...これといって特にないのですが、あぁ!!たまに僕自身から挨拶をする程度ですね。ではあなたの目的を教えてください。」
学園長はまだ気づかず、普通に話を聞いている。奴の顔は青い表情になり、俺はポケットに入れていた携帯の録音機能をONにした。
「私、エストレア=テイラー=エスパルザの目的はアリアーヌに精神的な傷を負わせたという名目でアルフという生徒を退学にさせ、国の秩序を守ろうとすることです。その後は、暗殺兵を呼び、殺しす予定です。」
遂に、学園長の顔色も悪くなり始めてきた。そこで俺は一言追い打ちをかけるように、
「あれまぁ、国のトップともあろう王女様がそんなことを言ってしまって大丈夫なんですかねぇ?...あっれぇ?なんかここに録音されてるぅ~!!ああぁ!!ネットにアップロードされてる~!!わぁ~、やっばぁい!!明日の号外新聞が決まっちゃう~」
と、かなりの煽り要素てんこ盛り状態で煽ると、近くにいた護衛が俺のもとに来てナイフを刺してこようとしてきたので、フィジカルリフレクションをオート発動させ、
俺に刺したはずのナイフが護衛の心臓部分に刺さり、その場で倒れこんだ。
「あれまぁ、勝手に何してんだろうねこの護衛さん。まあいちおうこの護衛には罪はないし、第9階梯フルリバイブ...っと。俺優しいね。人を殺そうとした奴に2度目の人生を与えてんだから。」
俺は黒い眼差しで護衛の瞳を覗き込んだ。護衛は「ひィッ!!」と怯えの声を上げそのまま後ずさりした。
続いて俺は奴と学園長の方に眼を向ける。そしてまた一言、
「第28階梯Forbidden phrase....第25階梯Forgotten axis....」
と言い、奴にはこの場であったことを禁句指定し、学園長には忘却してもらい、俺は黒い笑みを浮かべながらお辞儀をして学園長室を出て行き、時計を見て時刻を確認すると試合開始15分前だったので結構急いで会場へと向かったのだった。