準決勝前の暇
1試合終えた俺は休憩がてら校舎裏の花壇の前のベンチに腰かけていた。
「ふぃ~、流石に疲れたな~。魔力を使うってこんな感じなんだな...ま、俺の限界量の1%にも満たしていないからいいんだが...」
そんなことを一人で呟いて目の前の.ポーチュラカの花を眺める。この花を見ていると、自分がいじめられていたころのことをよく思い出す。
パシリに使われ、泣いた日。購買のパンを買ってこられなくて泣いていた日。悪事に使われ、先生に怒られて、帰るのが遅くなってしまった日。そんなことがなかった日はよくここに座って四季ごとの様々な花を見ていた。俺は様々ないじめを受けてきたが、最近はそういったことが全くない。比較的平和な日々が続いている。
「さて、じゃあビルドしていくか。『program』...Alf_3.csの続きから始めろ。」
そう呟くと目の前に複数の画面が表示される。俺は今自分がビルドしている画面を目の前に持ってきて、作業を始めた。
using AlfEngine;
using System.Collections.Generic;
public class sample : MonoBehaviour {
public enum weaponATK {
headshot,middle,mis
}
void Start () {
var tmp = new Dictionary<weaponATK,int> ();
tmp.Add (weaponATK.headshot, 100);
tmp.Add (weaponATK.middle, 0);
tmp.Add (weaponATK.mis, 0);
var res = ProbabilityRatio<weaponATK>.GetResult (tmp);
Debug.Log (res);
}
}
「ふぃ~....まぁ、取り敢えず今改良できるのはここまでだな。」
俺はそう呟いて、目の前の画面を全てシャットダウンさせた。そして俺はベンチでのけぞり、空を仰ぐ。
その一連の動作を終えた後、俺は一言、
「見えてんだよ、....え~と...シャロン=エビフライパンだっけか?...何の用ですか、剣聖の娘さんがこんなところへ。ここは花しかないですよ。」
「私の名前をあの一試合だけで忘れるとは...私は君にとってチリ以下の存在なんだろうね。いいかい、私の名前はシャロン=エスピノーザだ。エビフライパンではない。」
「そうかそうか。....で?」
俺がまるで光のない黒い目線を向けるとシャロンは一瞬ビクついたように見えた。シャロンは少し怯えながらも俺にあることを聞いてくる。
「ま、まぁ本題に入ろうか。率直に聞くけど君は一体何なんだい?」
「ただの1年Eクラスの最下位のアルフだが何か?質問はそれだけか?」
俺はフッと笑ってシャロンにレスポンスする。シャロンは少し頭を抱えて、もう一言
「じゃあ質問を変えようか。君は何故第20階梯以上の階梯の魔術を使えて、何故そこまで平気で入れるんだい?」
「聞き間違いじゃねぇか?それ。俺はAクラスの奴らとは違ってそんな大層な魔術なんか使えねぇよ。何で平気で入れるからって、そりゃ誰でも使える魔術を使ってんだから余裕にはなんだろ?」
俺は完全にとぼける気満々でササッとレスポンスする。するとどうやらシャロンは諦めてくれたようで...
「はぁ~....まぁいいや。じゃあ最後に取り敢えず私のスキル元に戻してくれない?結構困ってんだこれ。」
「は?俺お前に何もしてねぇぞ?というか、スキルを元に戻す?能無しの俺にはスキルなんて知らないし。ま、頑張ってくれや。剣聖の娘サマ?」
そう言い残して俺は場を立ち去ろうとする。すると、ポケットに手を突っ込んでいる方の腕をシャロンは掴んでくる。
「戻してくれ....頼む...お願いだ...」
うわ、コイツ泣きやがったよ...めんどくせぇな。戻してやる代わりにローゼンの時より高いハードルを課してやろうかな。
そんな考えとは裏腹に俺の口は別の事を口走る。
「なんだよ。俺何もしてねぇじゃねぇかよ。何でお前が泣いてんだよ。」
「....」
「フリーズすんなよ...あぁそうかこっちにはそういう表現はねぇんだったな。まぁ、そんな固まんなよ何か言えよ。」
「...私を戻してください....」
「はぁ~...しゃーねぇな、じゃあどっかの創造神からの伝言だ。1週間以内にこの学園のEクラス差別を全て消し去れ、とな。EクラスはExtraでAクラスはAmateurだとな。まぁ、お前にそんな実行力なんて微塵もねぇだろうけど。」
「.....やります....」
「そうか、できるといいな。じゃあな。俺は準決勝があるらしいから行ってくるわ。あぁ、それと準決勝の相手はどんな感じにヤルかお前、決めていいよ。燃やし尽くすもよし、異次元に飛ばすもよし、重力で圧し潰すもよし。首ちょんぱでも構わない。まぁ、一番手っ取り早いのはヘッドショットだな。楽だし。」
俺が振り返らず黒い声質でいうと、後ろの方にいるシャロンは、一言、
「...では、---------」
「まさか、お前がそんなこと言うなんて驚きだよ。じゃあお前のお望み通りそうしてやるよ。じゃあな。」
俺はそう言い残し、花が散った校舎裏から離れていくのだった。