剣聖の娘と
「お昼休憩も終了しましたし、それでは午後の部を開始していきたいと思います!!生徒の皆さん、準備は良いですか!?」
実況のレイ=エクリファーが大声を出して、会場にいる生徒に活気をもたらす言葉を発した。すると、会場の脳筋生徒たちは、
「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
と歓声の声を上げる。まったくうるせぇったらありゃしないんだこれ。
俺はそんなことを思いながら、相変わらず何もない待機室の壁によっかかりながらサリナにもらったクッキーを一人で食べながら、実況と解説の会話を聞いていた。
「解説のエミリーさん、第46試合の目玉は何でしょう?やはり、一年生で生徒会入りを果たし、かつ絶世の美少女であるシャロン=エスピノーザさんですね~。相手はEクラスのようなので、多分造作もないでしょう。」
「あれ、でもレイさんこのEクラスのアルフっていう方は第1回戦目に1瞬であの死傷者を多く出しているシュベルト=インジスさんを完封した方ですよね?アルフという方はやはり実力を隠したダークホースなのでしょうか?」
「あれは偶然でしょう。何故ならば、彼が勝利した時の顔は間違いなく、『あ、当たっちゃったよ』的な表情をされていましたので。流石に今回はそうはならないでしょう。何故ならば、シャロン=エスピノーザさんはあのジクード剣聖の娘さんですからね。一撃でしょう.....」
俺はこの会話を聞いて早速、
「はっ、そうかそうか。じゃあそのステータスとお別れだな。『program』...シャロン=エスピノーザを書き換えろ」
int speed set = 0
int mp set = 0
int hp set = 1
int sharonATK = 0
int sharonMAG = 0
int sharonDEF = 0
int sharonMDF = 0
『数値の入力完了。ユニークスキルの該当項目625行目から892行目まで削除完了、スキルの該当項目367行目から651行目までを完全削除完了』
そのとき、俺の中に一つ黒い思考が湧き出てきた。そして不敵ににやりと嗤って、
「まぁ、こんなもんだな。あ、そうだアイツの武器も完全にヒノキの棒レベルまで落としてやろっかな。『program』...聖剣シルバニアをゴミに変えろ」
class.weapon cylvania
int cylvaniaATK = 0
tmp.add()
『該当特殊能力項目、効能項目を削除完了』
これで、聖剣シルバニアは攻撃力1のヒノキの棒より弱くなったようだし、俺はコールがあるまでこの待機室に籠ってようっと。
俺は完全に書き換えた後、待機室で一人静かに実況と解説を聞いているのだった。
数分後、俺は選手コールをくらったので、1回戦同様に俺は通路をノロノロと歩き、試合開始5分前にコートに立った。
「おおッと!?1回戦で真の強者感を見せた最下位の1年Eクラスのダークホースこと、アルフ選手が入場して来ました!!」
「レイさん、反対の方からも同タイミングで、美少女かつ剣聖ジクードの娘で、1年生で生徒会入りになったあのシャロン=エスピノーザ選手が入場して来ました!!」
ここで、歓声が沸き上がる。まぁそうだろうな。俺は最下位であっちはAクラスの人間。ま、脳筋共に歓声をあげられても俺は嫌だしな。というかどうでもいいかもしれないが、サリナの方が可愛くねぇか?
そんなことを思っている俺だったが、外面はというと...
「これはこれは、あの偉大なる剣聖様の娘様とお手合わせできるとは、なんとも嬉しい限りです。ささ、もうじき試合が始まりますので、どうぞよろしくお願いいたします」
俺は自分でも分かるくらい気持ち悪い敬語と満面の笑顔で、接客するような態度で目の前の奴とお話ししていた。
「ははっ、君はしっかり上下関係を理解できているんだね。凄いね。.......でも中身は良く見えてるよ?」
「っ...いえいえとんでもない、私めがそんなことを思っているとでも?それは何かの勘違いでしょう。」
こいつ、俺の内心分かってやがる...まぁいいや。秒で終わらせてあげよう。相手が悪くてごめんよ。
「ほら、今君私のこと結構可哀そうな目で見たでしょ。人の顔を見るのは得意なんだ、私。」
「まさか、あぁ、私と戦うことになってしまってその剣にEクラス、そして最下位の汚い血を塗らせてしまうのは可哀そうだとは思っていますよ。」
「君は本当に頑固なんだね。....はぁ、私だって嫌だよ、勝てない試合なんて。まぁ、そろそろ時間だし、始めようか。」
そう奴は言って自身のスタートポイントに着いた。そして、審判が
「始めっ!!」
というのと同時に俺は、
「『call.Revolver』....!!」
と言い放ち、右手に拳銃を生成する。対して奴の方はヒノキの棒以下となったただのゴミを抜く。
あれ?なんでアイツ詰めてこないんだ?情報によると、剣を抜いて直ぐ詰め寄ってくるって聞いたのだが、間違いか?いや、何か企んでいるのだろうな。
俺は念には念を押して、
「第26階梯エンチャント・ガン・death Spirit」
「なっ!!今第26階梯って言った!?それは.....!!」
奴は何か言おうとしていたが、俺はそんなことを無視して自身の右手に握られている拳銃に死の精霊が付いたことを確認し、俺は一発。トリガーを引いた。
パァン!!
標的の頭が破裂したこと、相手が死んだことを確認した俺はサリナの言っていたダメ出しを忘れて、
「お強かったです、対戦ありがとうございました。...蘇生士の方いらっしゃいますか?早く蘇生してあげてください、最下位の僕なんかよりも有望な人間なので。」
と言い残し、コートを後にしたのだった。
その後、全職員たちはある一室に呼び出され、全生徒はEクラスのアルフがただ者ではないと広まったのだった。