空っぽの俺
剣と魔法、銃や弓、斧、スキル、科学技術に溢れたこの世界、『クラビアット』に
反して俺は「空っぽ」の世界を生きる。そしてこの底なしの「空っぽ」の心は永遠に埋まらない。ただひたすらに家を目指してこの暗い道を歩き、あくび交じりに独り言をぽつり。
「ふぁぁあ...今日も剣技の演習で最下位か...やっぱり俺には才能がないのかな。ついでに魔術の演習も先生の指定した一つもできやしなかったし。」
俺は何があっても最下位。もはやこの学園に合格することができたことが奇跡のようなものなのだ。たとえ入学したのが最下位のEクラスだとしても。
この世界の人間は何があっても直ぐに何やらかの数値にして他人と比べたがる。例えば、校内順位とかなんだが、勿論俺はドベなんだがな。
俺の通う王立サロバニア学園はペーパーで測る知能数値と実際に対戦形式でスコアを競う実力数値の配点割合が3:7と実力数値が異常に高いのだ。そんなことだから大体察せると思うが、生徒の大半が頭が終了しているのだ。だから、平気でほかの人間を見下し、いじめ、傷つける、というのが当たり前、一般常識だ~みたいなところだ。
そんな生活のさ中、俺にも一つだけ救いが存在していた。それは、「ユニークスキル」というものの存在だ。
「ユニークスキル」というのは、一般にその個人が特別に習得されているという神からの贈り物のことを指し、王国内では、数少ない貴重な存在として扱われてきた。有り難いことに、俺も「ユニークスキル」を習得していた。そんな素晴らしいものを習得していても俺は最下位。これもまたお察しの通りで、俺の「ユニークスキル」は全くもって使えないものだったからだ。
「はぁ...俺ってホントついてねぇなぁ~。」
翌日、俺はいつものように投稿時刻ギリギリに登校をしていた。校門あたりで、誰かに毎日怒鳴られているっぽかったが、寝ぼけているので顔はよく覚えていなかった。校舎に入って廊下を歩くと、いつものように、上のクラスの奴らに指をさすなり笑われ、終いには足をかけてくるようだったので避けた。しばらく歩いていくと、俺の教室、Eクラスに着いた。
「あぁぁ~っ、またアルフ君遅刻ギリギリじゃないの~っ!!しっかりしなさいよね~!?」
「へいへい、すいませんでした、と。」
半分呆れ顔になりかけている担任のシーサ=サイファー先生。皆はシー先生と呼んでいる。俺はクラスの奴らにも呆れ顔をされながら自分の席に着く。これが俺の朝のルーティンと呼べるものだ。おっとシー先生がなんか話し始めたな。
そう思って俺は荷物を机の横にかけ、シー先生の方に目を向けた。
「結構ガチ目なお知らせです!!皆さん、今日の午前中ははAクラスと模擬戦を行うことになりました!!皆さん、頑張りましょうね!!」
途端に教室に静寂が訪れる。そりゃあそうだろうな、何せ天辺と底辺だぞ?んな模擬戦なんてやんなくたって結果なんて見えてるじゃないか。あー、コレあれか?なんか見せしめのための試合かなんかか?そうだったら俺は本気でキレるぞ。学園長と生徒会にぶち込みに行くぞ?...そんなことできないけど。というか、最下位の俺にそんな権利ないし。
俺がそんなことを考えていると、一人の生徒が立ち上がった。
「先生、流石にそれはおかしいですよ。なんでトップのAクラスが僕らEクラスなんかとやらなくてはならないのですか?力量差なら雄にわかっているでしょうに。」
「ラドル君、残念だけど、コレは上の方で決まっていることなの...ごめんね...」
シー先生はラドルの方を向き、申し訳なさそうな目線を送った。どうやら決定を下したのはAクラスの奴らのようだ。そう俺は目を少し細めて少し考えていた。
底なしの「空っぽ」が疼きを上げる。
コロセ...ケシサレ...カイザンシロと
あーあ、考えるのはやめよう。と、俺は思考をやめた。何せ、俺にそんなことをする力なんて微塵も無いからだ。それに前々からこの疼きには幼いころから悩まされてきた。そのせいで集中して剣を振ろうにも疼きが収まらず型が崩れ、魔術を発動させようにも集中力を引きはがされて、お陰様で勉学の方はあり得ないくらい進んだ。自分でもこの正体については少しだけ思い当る節があった。
「ユニークスキル」だ。俺の習得していたものは『program』と、見たことのない言語で書かれていたが、何故か俺には、この文字が『プログラム』とあっさり読めてしまったのだ。この『program』が何を指すことなのかは未だに分からないのが現状で、俺はただ単に「使えもしないユニークスキル」を所持しているだけの言い方は悪いが、「スキルのスネカジリ」というものだった。
「....フ....ルフ...アルフってば!!」
「うぉあぁ!!なんだよサリナ、いきなり。」
「アルフがまた一人で考え込んでるから、話しかけてみたくなったんだ。あぁ、Aクラスのこと考えてたの?アレ絶対あいつ等が私たちのことイジメたいだけだよね~。私たちはサンドバックじゃないっての!!」
この元気よく話しかけてくるのは入学の時に仲良くなった女子生徒のサリナだった。少し性格は容姿に反してヤンチャだが、そこがギャップ萌えする人だ。いつも最下位の俺の話し相手になってくれている。
「そうだな、今回も俺らがボッコボコにされて終了のオチかなって考えてたんだ。俺はやれるだけやってリタイアしようかなって考えてたところだ。」
「うわ、アルフ最初っから逃げる気満々じゃん...ま、私もそう考えてたとこなんだけれどもね。」
「お前も一緒じゃねぇかよっ...くはは。今実感したよやっぱ人間って自分より強いものを見るとまず逃げることから考えるんだなって。」
「そうそう、それが心理なのだよ!!」
俺は時計を確認する。午前授業開始まで残り5分よし、そろそろ移動しなくちゃな。
そう思って俺は席を立つ。俺の行動にサリナが気が付くと、
「あぁ、もう開始5分前か、闘技場行こっアルフ!!」
「おうよ、行こうぜ。」
俺はこの底なしの「空っぽ」が少しだけ満たされることをまだ知らなかった。
こんにちは~、どうもE氏です~。なんとなくですが異世界ものも書いてみたくなってなんとなく書いてみたものです。好評であるようならばまだまだ続けていこうと思います!!
宜しければブクマ、評価等していただけると有り難いです。
それでは。
E氏より