本部内
改めて見ると、本当にデカい建物だ。
3年前に本部に訪れた時は一直線に受付に向かっていたから
本部の中をじっくりとは見ていなかったが、今見ると
冒険者用に武器や防具、アイテムを販売している店や
ギルドに所属している能力者や冒険者の部屋。 さらには
最新の魔道具を用いた医療施設などなど、見るとこ全てが
さすが本部だと言わんばかりの施設が並んでいる。
俺達は本部内の施設に肝を抜いていたが、あくまでここには
観光で来たわけではない。 自分のギルドを持つ許可を貰うために
ここに来たんだ。 気を引き締めていかなければ。
緩んでいた気持ちをまたピシっと整え、俺達は受付に向かった。
「おい、あいつ噂の能力者じゃないか」
「あぁ、落ちこぼれの【Fランク能力者】ですね」
「ここに何しに来たのでしょうか?」
俺に対しての周りの声が聞こえてくる……。 まあ当然だ。
こんな場所にFランクの俺なんかが来たら注目ぐらいは集まるだろう。
だが別に気にはしない。 3年前に聞いたら相当心に来ただろうが、
今は心も体も成長しているからか何とも思わないし ワクワクの方が
気持ち的に勝っている。 周囲からの声は俺がギルドを持つ事に対しての
祝福の言葉と思って聞いておこう。
「セリっち……」
周りの声を聞いたからか、メリアがその綺麗な青色の瞳で
俺の顔を心配そうに見つめていた。
「心配するなメリア、別に気にしてねえよ」
「でも……、 セリっちが気にしてなくても私が気にしちゃうよ」
「大丈夫だ。 事実、俺が周りの声に対して悔しがっているように
見えるか? 見えないだろ?」
「それって開き直ってるって事じゃないの……?」
確かに、捉えようによっては開き直りに見えるかもしれない。
メリアにそう思われたのが何かと腑に落ちないが俺は開き直っている訳ではない。 いつか俺のギルドが大きくなって、俺自身も強くなった頃に俺を下に見ていた奴らをぎゃふんと言わせたい。 そう思っているからこそ俺は悔しさよりもワクワクの方が上回っている。
俺はメリアにそう説明するとさっきまでヘの字になっていたメリアの口元が
一瞬にしてUの字に変わり、顔全体の筋肉が緩みに緩み、のほほんとした顔に変わっていった。
「いや~、やっぱセリっちはカッコいいなぁ。 まあ私は最初からそう思っているんだろうな~って気づいていたけどね、えっへん!」
……さっき開き直っているんじゃないかと言っていた奴が何を言う。
――メリアの鼻高々な様子が後方に見える。 しばらくしてメリアが
俺達とハグれたのに気づき、今にも泣きそうな声で俺達を呼ぶ声が
本部何に響いた。 恥ずかしさのあまり俺たちは急いでメリアの元に向かい
回収した後、いそいそと受付の方に歩みを進めた。
「ったく、余り悪目立ちはするなっていっただろうがこの馬鹿」
「ぐすっ、うるさい馬鹿ランス……。 そもそもセリっち達が私を
置いて行ったのが悪いじゃないのさ!」
「お前がいきなりその場でドヤ顔を決めて立ち止まっていつまでも
歩かなかったのが悪い」
「そうですね、メリアさんが悪いですね」
「ああ、お前がわりぃな」
「うぅ~」と少し怒りの混じった声を出すメリアの顔が
風船が膨らむかのようにどんどんと膨張していく。
まあメリアは素直だから、自分が悪いなら悪いとすぐ認めてくれるのが
良い所で、そのおかげで無駄に言い争いにならなくて済むから楽だ。
ランスと話す時以外は。
――そうこうしているうちにギルド申請の受付カウンターに着いた。
俺は勢いよくカウンターに手をバンっと乗せ、一言。
「ギルドを所持するための申請に来ました」
「そ、そうですか。 では能力者の証明として
プレートをご提示下さい」
このやり取り、3年前にもやった覚えがある。
俺は懐かしさに浸りながら、今度は堂々と受付の係にプレートを見せた。
――だが様子がおかしい。
今度はきちんとプレートを見せているはずだが
受付係は俺のプレートを隅々までチェックし、
道具鑑定の魔法を使用している。
めちゃくちゃ疑われているな、俺。
まあ、無理もないか。 なんせたった一つの黒い点が紋様として
投影されているだけのプレートだもんな。
「不正を疑っているなら、気が済むまで鑑定をしてくれ。
俺も疑われたまま能力者としてギルドを持つのは嫌だからな」
そう言うと受付係は念入りに俺のプレートを調べ始めた。
偽造を疑う声や、紋様に対して不信感を抱く声ばかり聞こえてきたが
不正など働いてない身からすれば、堂々としていられる。
俺は内心、はやく鑑定が終わってくれないかとウズウズしていた。
あれから隅々まで俺のプレートを調べて何分かが経った頃、
受付係の口が開いた。
「セリウスさんのプレートは正直偽造を疑っていましたが
どこも問題ありませんね。 正式に資格の儀も受けているようなので
あなたにはギルドを持つ資格が与えられます」
「っつ!」
ついに、ついにギルドを持つ事が出来る……!
ここまで本当に長かったな……。
一度は門前払いをくらったが、
自分の夢を諦めずに追い続けてきた甲斐があった。
俺の内に閉まっていた喜びという喜びの感情が一気に押し寄せてきたが
なんとかこらえた。 感情を爆発させるのは許可書をこの手に取ってからだ。
「ギルドを持つための仲間も三人以上連れられているようなので
セリウスさんは問題なくギルドを所持する事が出来ますね。 どうしますか? 今からでもこちらでギルド経営の許可書を発行できますが……」
「してください!」
俺はカウンターを両手でバンと叩き、身を乗り出した。
喜びの感情が高まり過ぎている為か、つい話の途中で割って入ってしまった。
「で、では発行までに少々時間が掛かるので、折角ですし
連れの方たちの能力の鑑定などをされてはいかがですか?」
確かに、今思えば俺はこいつらの能力を知っている訳じゃない。
だが、全く分からないという訳ではなく、ある程度推測は出来ている。
「ん? なんだ、その能力の鑑定って?」
「何だ、ランスは知らないのか?」
「ああ、そこら辺の事は全くなもんだから説明頼むぜ!」
てっきり知っている物だと思っていたが、知らない奴も居たもんだな。
俺は簡潔に能力者の事と資格の儀の事、紋様の事を説明した。
「なんだそれ! じゃああれか
俺が能力者になったら今よりも凄ぇ力が手に入るって事か!?」
目をキラキラさせながら分かりやすく興奮している。
特に紋様の力に凄い食いついてきた。
まあ、実の所を言うと紋様が与えられたからといって
身体能力が強化されるわけじゃない。 俺がその例だからだ。
紋様が与えられて3年間、特にこれといった変化は起こらず
能力も分からないままだ。 ランスのあの期待した顔を見ると
その事実を話さないまま説明するしかなかった。
事実を知ったら落胆するんだろうな。 後で謝ろう。
「それで、その資格の儀はどこで受けられるんだ!?」
「今からご案内しますが、まずは資格の儀の前に能力の鑑定からですね」
ん? 能力の鑑定と資格の儀は一緒にするんじゃないのか?
ふと疑問に思ったが、あの時とやり方が変わったんだろう。
俺は受付係に「こちらです」と案内される三人の姿を見届けていた。




