秋の桜子さまより『赤い薔薇の魔法の朝』~極悪最凶変態令嬢FSS~
秋の桜子さまより、極悪最凶変態令嬢(https://ncode.syosetu.com/n3572fk/)111話を記念して。
『111おめででーす。この二人はぺろぺろは必須アイテムなのです』
とのコメントとともにFSSをいただきました。
ありがとうございます!
リジーちゃんとシドさんの子供時代のワンシーン。
美しいです!御両親の愛情が尊い。
リジーちゃんが可愛すぎて悶えます!
では、どうぞ~
『赤い薔薇の魔法の朝』秋の桜子
「ねえ我が家のプリンセスは、一体何をしているのかね?」
さるお屋敷の主が、愛する彼の妻に聞いている。
「きゃあん!いったぁい、さしちゃった!血が出てきたぁ、シドのばかぁ!」
おやすみのごあいさつはいりません、絶対に入ってきてはだめです、と夕食の時に生真面目に、そう話していた一人娘。わかったよと答えたが、まさかとは思うが?いやいや娘はまだ8才、それに娘の下僕である彼は、そんな事はしないはず………、主は生真面目な少年の姿を思い浮かべる。
「ほほほほ、どうされたのですか?ああ、心配しなくてもあの子は、赤い薔薇の魔法をやってみたいというから、させているだけですよ。ふふふ、でもこうも大きな声で名前を出してしまうとは、無言の行ではないですか、困ったものね」
甘い紅茶を口に運びながら、可笑しそうに笑いながら妻が答えた。
「赤い薔薇の魔法を?そうか、懐かしいな、私も君から貰ったのは………君がリジー位の時だっかな?」
「もう少し年上でしたわ、あの子はおしゃまさんだから、ふふふ、今年初めての薔薇の花が咲く時に、好きなお相手のお名前と、薔薇の花をハンカチに刺繍をしたのを手渡すと、望みが叶うというおまじない。刺繍をさすときは、誰も見られたらいけない決まり、他愛のないお遊びみたいな呪いですけど」
「おやおや、そんな事を言うの?私は今も大切に持っているよ。君から贈られた物を。差し出された時にわかったからね、ちゃんと古式にのっとり、手の甲に接吻をして返したよね」
ほらこうやって、と深々とした肘掛け椅子から立ち上がると、妻の足元に膝まずいた。くすりと彼女は笑いながら手を差し出した。
「まあ、貴方ったら、おふざがすぎますわ、それはそうとシドは、知っているのかしら?」
さぁ?と夫は当てた唇離しながら答えた、そして笑い合う仲の良い夫婦。そこに届く娘の声。
「いったぁぁいい!もう!いたいの!シドのばかぁ!」
「名前に文句をつけてるから……、明日の朝には間に合うようね。少しだけお手伝いしておきましょうかしら、どう思って?貴方は」
クスクスと笑いながら、娘の事を案じる妻に、夫は大きく頷く。
「そうだな、私からシドに言っておこう、明日の朝、朝露の降りた薔薇をつんでくるように、と、私は君から、一緒に花を見ませんかという、実に素晴らしい手紙を貰ったのだけどね」
★☆★☆ 夜が明けた。シドは言われた事を果たすべく、庭へと出る。一方、当の本人は
「ほら、リジーちゃん起きなさい、薔薇の花が咲きそうよ」
母親の声に飛び起きる。慌ただしく身なりを整えた後、用意をしていた小さな包みを手にすると、思いっきり平静を装って庭へと向かった。
「アルデローサ様?おはようございます、どうされたのですか?」
訝しげな彼女の下僕の声に、内心のどぎまぎを隠しつつ、あら、悪いかしら?とつっけんどんに返す少女。しかし彼女の本心は、
バカァ、違うのぉ!ここはおはよう。貴方も早いのねって、いうべきところなのぉ!なっている。
「いえ………御早いなって思って」
さわさわと、開きかけた薔薇の花を揺らす柔らかな早朝の風は、薄荷の香りを運んできている。程よく辺りを満たしている水の気配。しっとりと甘やかな空間。
葉に花弁に、が水晶の様な露を持っている薔薇達、ポツポツと、開きかけの花をどれにしようか探している、黒髪イケメンキャラの少年。
ああ!薔薇のお花とシド!なんて似合うのぉと、少女はじっと眺めながらどう渡すか頭の中は、グルグル状態。かつてないほど思考回路が高速回転していた。
「………、アルデローサ様は、どの花がいいですか?よくわからなくて」
「ど、どれでもいいのではなくて?」
うぁーんばかぁ!それは彼の側に行って、これなんかどう?それからのコレどーぞ、そしてきっと知ってる、手をとってのありがとうございます。チュウ、なかんじが始まるチャンスだったのにぃ、
となっている。それから、ばかぁ!シド!気がつきなさい!わたくしがどうしてここに来てるのか!気が付かないのかしら?ニブイのかしらぁ!
最早八つ当たりになっている、彼女の事など気にもしないで、どれにしようか考えている少年を恨めしく見ながら、手を目の前の花に差し伸べたその時、
「あ!痛い!」
「あ、アルデローサ様!棘が?見せてください」
少女の針でつきまくりの指先に新たに薔薇の棘が、深々と刺さった。手を引く彼女の元に少年が慌てて駆け寄ると、プクリと少女指先に浮かんだ真紅の珠を目にすると………
「え!あら!あ………ら」
躊躇することなくリジーの指先は、彼の口の中に、レッツゴー。慌てつつもここはじっと我慢をして、この時を長引かせないと、咄嗟に判断をした少女。
まぁ!なんて展開に………ど、どうしたらいいのかしら?まだハンカチ渡してないのに、でも、手の甲にチュウよりもこちらの、指パックンのほうが………わからないけど効き目がありそうな………。うふふ、なにかしら?あたたかいのね。少しだけこそばゆくて、そして、よくわからないけど、とってもいいわぁー!
「アルデローサ様?」
そろりとから指を離した彼、キラキラとした瞳で見つめているリジー、ハンカチの事は、せっかく懸命に願いを込めて、刺繍をした贈り物は
すっかりと忘れられていた。その後、屋敷にルンルン気分で帰り、少年が薔薇の花を花瓶に活けて運んで来たのを見て、はっと気が付き、渡すの忘れたぁとがっくりとした彼女は、泣く泣くそれを自室のテーブルの上に置きっぱなしにした。
そして、シドがそれを見つけると、辺りに誰もいないのを確認をして、ニコリと笑顔を浮かべたあとで、こっそりと回収したのは♡
………彼しか、知らない事♡
©️砂礫 零
秋の桜子さま、ありがとうございます!




