第1部 絶望の始まり ⑦ドラゴンシティーの秘密
カルタが部下に聞いた。
「下が騒がしいが何かあったのか?」
「お姫さまが、ホスマ部隊と一緒に帰還されました!」
部下は嬉しそうに答えた。
「何~!!」
カルタは、慌てて下の階に行った。向こう側から、ホスマやホスマの部下と楽しそうに談笑しながら歩いて来るティルの姿が見えた。
「姫さま~!!」
いつもは厳格なカルタであったが少年のような笑顔を見せた。
「王様が待ってます!こちらへ!!」
王もお妃も、ティルの姿を見ると安心と嬉しさが込み上げてきた。ティルは、片膝をつき
「今、戻りました。」
と告げ、笑顔を見せた。王は少し大人びた娘の顔に驚いた。しかし、感情を見せず
「うむ、よく戻った。」
とだけ声をかけた。王は目を閉じ、考え事をしているかのように見えた。目を開けた瞬間から、何かを決心しているかのようであった。
王はカルタに
「15分程、玉座を離れる。少しの間、任せた。」
そしてティルに
「着いてきなさい。」
と指示した。
王はティルと二人だけで城の地下の一番、奥の扉まで移動した。この扉は開けることを禁じられていた。
「ティル、今から、この城の中枢部に行き、秘密を伝える。これはドラゴンシティーの直属の王族しか知らない他言無用のことだ。」
ティルは、あまりにも突然のことで戸惑いを感じた。
王は、袖から、ガードを出し、扉の横にある隙間に差し入れた。扉がガチャと開いた。ティルは不思議そうな顔をした。カードを見ることが初めてであった。
「何ですか?それは?」
王はカードを見せながら
「これは何千年前の大昔の鍵だ。不思議だろ。」
開いた扉の少し先に、また扉があった。その扉の作られた素材を、ティルは初めて見た。透明でドアの向こう側が透けて見えるのである。向こう側は小さい個室のようであった。
ティルは好奇心を抑えきれず、王の前に出てしまった。その瞬間、ドアが真ん中から開いたのである。ティルは驚いた。
「お父様、勝手に扉が・・。」
王は目を細め
「これも何千年も前の扉らしい。自動扉という名前だ。」
動く扉を見るのも初めてであった。
「入りなさい。」
王は楽しそうに言った。ティルは小さな部屋に入った。王は扉の横にあるボタンを押した。そうすると部屋が横移動したかと思うと、今度は下降した。ティルは驚き壁に手をついた。
「お父様、部屋が勝手に動きました!?これは魔法の力ですか?」
「いや魔法とは異なる力だ。これは科学の力、いわゆるテクノロジーの力だ。」
王は続けた。
「何千年前、今では信じられないような高度な文明が発達していたのだ。その結晶を今、見せよう。」