第1部 絶望の始まり ③ティル対死霊
ティルは屋根の上を走り、一直線に城に向かっていた。これが一番の近道だということを幼少から知っていた。
『私が走れば、城に10分以内につく!!早く戻り、お父様とお母様をお守りしなければ。』
走っている最中、視界の隅に、黒い死霊に襲われようとしている母子の姿を捉えた。母が子を守ろうとしているかのように見えた。
「くっ。」
一直線に城に行きたかった。しかし、方向を変え屋根から飛び降りた。
「こっちだー!!」
ティルは死霊に向かって吠えた。死霊はティルの方に向きを変えた。黒いフードを被った髑髏であった。片手には細身の長い剣を持っていた。ティルの胸が高鳴り、頬に汗が伝った。
「やれやれ。」
ティルは、そう言いながら、鞘から剣を静かに抜いた。両手で剣の柄を持ち、腰を低く構えた。
カルタに剣術を教えて貰った基本的なことは2つであった。
1つ目は、相手の攻撃を剣で受けないこと。
2つ目はステップで相手を翻弄し、受けずにカウンターを狙うことであった。
これは、ティルの身体の大きさ、スピード、バネを考えた戦略であった。何よりも、タイミングを取る当て勘は天性のものを持っていた。
死霊がティルにジリジリ近づいた。間合いに近くなると、ティルはその場でトントントンとステップを取り始めた。死霊は一気に間合いを詰め、剣を振り上げた。そのタイミングを見計らい、ティルは死霊の懐に素早く飛び込み、瞬時に十字に2撃入れた。死霊は後方に吹っ飛んだ。
「うわ~。お姉ちゃん凄い!!」
男の子が叫んだ。ティルは母子の方を向き、剣を鞘に入れ微笑んだ。
「ありがとうございます。」
母親が涙を流し、お礼を言った。その瞬間、後からガサッという音が聞こえた。ティルは死霊の方を向いた。死霊は立ち上がろうとしていた。胸の十字の傷からは黒い煙が出て回復しようとしていた。そして、その後ろから、もう2体の死霊が近づいてきていた。ティルの掌が汗ばんでくるのが分かった。
「早くここから離れなさい!!」
ティルは激しく母子に言いながら再び、鞘から剣を抜いていた。余裕はなかった。しかし、胸の奥から込み上げてくるものがあった。ティルはニッ~と笑った。美しい少女の顔が瞬間、歪んだ。右手に柄を持ち、左掌を剣先に当てた。
『ライト。(光属性攻撃魔法初級レベル)』
静かに唱えた。
その瞬間、剣が光に包まれた。これはカルタが教えたことには無かった。
《登場人物プロフィール》
レベル:1
名前:ティル・スカイ
種族:人間!?
性別:女性
年齢:13才
職業:ドラゴンスカイシティの姫
才ある職業:魔法剣士
HP:30
MP:8
力:10
スピード:21
防御力:18
魔力:4
使える魔法:ライト(光属性攻撃魔法初級)
スキル:カウンター・2連撃・素早いステップ
装備品:スカイドラゴンの皮で作った服、短めの剣
アイテム:なし
備考:幼少の頃に、ある魔法をかけられ涙を流すことができない。