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悪魔っ娘ライフの楽しみ方  作者: 久条 巧


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44/44

その42・チートの本領を発揮する

惡魔っ娘ライフの楽しみ方は、かーなーりー不定期な更新となっています。

できうる限り月に一度は更新するようにしますので、今しばらくお待ち下さい。 

 陽炎によって隠されていた分岐を正しい道に向かって進む。


 やがて回廊の温度がどんどんと上がり始め、冷気結界によって体温を下げていたレオニードたちの皮膚でさえ、そのすさましい温度に耐えられなくなってきた。

 アレクトーの作り出した結界強度を、この回廊の熱気は軽く超えていたのである。当然、結界がなかったら、マチュアを除くこの場の全員は瞬時に燃え尽きていたであろう。

 つまりここが今のチーム・ドラゴンランスの限界点である。

 そして回廊の先、巨大な空洞にたどり着く。

 眼下には真っ赤に流れる溶岩、眼の前には中空に浮かんでいる平らな地面。そこには巨大な岩がいくつも転がっている。

 そして、その向こうにさらに回廊が続いていた。


 マチュアたちが空洞の端でやってくると、巨大な岩がゆっくりと起き上がる。岩に擬態していた巨大なドラゴン・爆龍が、敵であるマチュアたちの侵入に気がついたようである。


「さて、先に行っておきますけれど、私の戦闘方法は全く参考にならないわよ? それでもいいのよね?」

 そう後ろにいるレオニードたちに問いかけると、全員がコクコクと頷いている。

「いつかはここに来る。そのときには、自分たちでどうにかしたい‥‥けれど、今は、マチュアさんの実力を目に焼き付けたい」

「ええ。私も魔術師の端くれとして、マチュアさんの強さを覚えたいのです」

「あの地で、カオスドラゴン殿との特訓でつけた実力。それでも届かないマチュアの実力、ぜひ」

「わ、わたくしは、回復要員として、その実力をですね」

「まーちゃんがんばるお」

 各々がマチュアを応援する。

 すると、マチュアは全員のいる足元に結界を起動した。


「‥‥88式・敵性防御・耐熱強化‥‥と」

 いつもの半円状の結界ではない。地面の中にまで浸透する、深淵の書庫アーカイブと同じ立体球形結界である。

 それの中にいる全員にサムズアップして、マチュアはまっすぐに爆龍の眼の前まで歩いていく。


「さて、階層守護者の爆龍さんでしたか。申し訳ないけれど、私がお相手させていただくわ」

 眼の前で巨体を起こし始めた爆龍に、マチュアは両手で包拳礼を取る。

 そしてスッ‥‥と拳を構えると、爆龍をじっと睨みつけた。


『ほほう、小さきものよ。ここまで人がくるとは珍しい。貴殿のその心意気により、後方の者たちには手を出さないと約束しよう』

 爆龍もまた四足で地面を踏みしめる。

──バリバリバリッ

 すると、体中の鱗から放電現象が湧き上がり始めた。


「爆龍という名前なのに、体表に火山雷をまとうとはねぇ‥‥近接させない気まんまんじゃない」

『これが我のスタイルなれば‥‥』

 そうつぶやきつつ、少しずつ時計回りに動き始める爆龍。

 そして体表の雷をマチュアに向かって放電するが、マチュアはその雷を拳にはめていたワイズマンナックルで受け止めた。

──バジィィィィッ

 その衝撃波で後方に吹き飛ぶが、ギリギリ地面の途切れる手前で足を止める。

「うはぁ。これはまた、予想の斜め上の威力よね。ならこっちからも行かせてもらうわよ」

 すばやく走り出して爆龍の懐に向かって間合いを詰めていく。そこから右に飛んで、大地を踏みしめている右足首に向かって、力一杯拳を叩き込んだ。

「必殺、ただの強撃(ストライク)っっっっっっ」

──ドゴォッ‥‥ブッチィィィィィィ

 たったの一発。

 それで幕僚の前足首がちぎれ飛んだ。そこから態勢を崩して崩れてくる爆龍の頭、その下顎に向かって、マチュアはかち上げ式の拳を叩き込む。

──ガッゴォォォォォォッ

 下顎が砕け散り、上顎まで粉砕する。

 すでに瀕死となった爆龍。

 そのまま力なく崩れてきた頭の前に立つと、額に向かって掌底を当てていく。

「浸透勁っっっっっっっ」

──カッコォォォォォン

 衝撃波波のように全身に広がる。

 それは爆龍の体内でさらなる共鳴を繰り返し、体内組織をズタズタに破壊していく。

 すでに爆龍は物言わぬ躯と成り果てていた。


「初手をマチュア打ってくる前に、位置取りを変えたのは見事ね。正々堂々と戦ってくれてありがとう」

 再び包拳礼を取る。

 そして振り返ってスタスタとレオニードたちのもとに戻っていくと、その場の全員が言葉を失っていた。

 あまりにも早く、そしてあっさりと階層守護者を滅ぼす。

 その凄まじさに、言葉すら失っていたのである。

「終わったよ。あとは魔力核を回収しておしまい‥‥ってどしたの?」

「い、いや、まさか‥‥これほどとは‥‥」

 ようやくレオニードが呟くと、全員が頭を振って意識を取り戻した。

「そお? まだ本気じゃないよ」

 ニィッと笑うマチュア。

 ということは、あのとき、草原で自分たちを相手にしていたマチュアというのは、一体‥‥。

 そう考えると、一行はブルッと身震いしていた。

 そして魔力核を回収すると、マチュアたちはもと来た道をゆっくりと引き返すことにした。


 よくある物語で、ダンジョンの攻略をすると帰りはモンスターがでない。

 そんなおとぎ話のようなものがあると、私は今まで信じていました‥‥。


 まさかの各階層守護者との再戦。

 降りるときに討伐した階層守護者は無事に再生を終え、再びレオニード一行に牙を向いた。

 だが、一度戦った相手、それも対策がしっかりと判っている敵など、すでに敵ではない。

 着実に仕留めて魔力核を回収すると、一行は無事に入り口の結果今で到着した。


「さて、ラオラオ、回収したすべてのアイテムを出してもらえる?」

「ん? これだお」

 マチュアの指示で次々とアイテムを取り出す。

 床にずらりと並べた魔力核や様々な武具。そこにマチュアは魔法を発動する。

──キィィィィィィィン

「さて、そんじゃあやりますか‥‥。複写(コピー)と‥‥」

 複写の魔術が発動すると同時に、真横にもう一つの魔法陣が展開する。そしてその中にオリジナルと全く同じ能力をもった偽物が姿をあらわした。


「ラオラオ、そっちを回収したものとして提出しておいて。こっちは私が閉まっておいて、あとから分配するから」

 にこやかに告げると、マチュアはオリジナル品を次々と空間収納チェストに放り込んでいく。

「こ、こっちは偽物ってばれないのですか?」

 心配そうにトイプーが問いかけてくるが、マチュアは頭を左右に振る。

「これは魔法で作ったコピー品で、本物と全く同じ能力を持っているのよ。ただし、効果時間は一週間で、時間が経過すると消滅する。その原理なんてどれだけ調べてもわからないし、それが偽物だっていう証拠もないからねぇ‥‥」

 そう説明すると、ラオラオたちも理解したらしくバッグに魔力核などをしまっていく。

 そしてすべての準備が終わると、結界の外にいるであろうマルコに連絡した。

「こちらマチュアです。無事に任務完了、外に出してください‥‥」


──ヒュゥゥゥゥゥン

 すると、マチュアの声が届いたのか、目の前に部屋の外へと続く空間が開いた。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「こ、これは無事に戻られたようで‥‥なによりです」

 丁寧に頭を下げながら、マルコがマチュアたちを出迎える。

 その向こうでは、今か今かと待っていたらしいルフト・シュピーゲルが立っている。

 そしてマチュアたちの帰還を確認すると、ツカツカとマチュアに近寄って。


「それで、どこまで向かった? まさかニ層とは言わないだろうな」

「そんなわけ無いでしょ。なんとか四層まではたどり着いたわよ。流石に五層に向かうには装備が心もとないから、そこはまた今度ということで」

 ルフトにそう呟くマチュア。そしてラオラオはコピーした魔力核などをマルコに手渡す。


「これですべてだお、あとの処理はお願いするお」

「はい、それでは確かにお預かりします‥‥」

 バッグごと丁寧に受け取ると、そのままルフトに手渡す。

 ルフトもすでにマチュアたちには興味がないらしく、バッグを受け取ると、そのまま振り向いて謁見室へと戻っていく。

 そしてレオニードは、今回の報酬をマルコから受け取る。大量の白金貨のはいった袋を手にした一行は、すでに破顔する勢いで笑みを浮かべる。

 なんだかんだといっても、冒険者としてこの報酬は嬉しいのだろう。

 そしてマチュアはグイーーッと体を伸ばすと、次の作戦を考えるべく帰路につくことにした。


「それではマルコ卿、私達はこれで失礼します。もしまた何かありましたら、ご一報いただけると幸いです、レオニードたちに」

「ふぁ、俺たちかよ」

「もう私に用事はないでしょ?」

 驚くレオニードにマチュアは一言告げる。

「かしこまりました。それでは空間をワルプルギスに繋ぎましょう」


──分ゥゥゥゥゥゥン

 そう告げてから、マルコは目の前の空間をワルプルギス郊外に接続する。

 楕円形の空間の向こうに草原地帯が広がっているのを確認すると、レオニードたちはそのまま外にでる。

 そしてマチュアもまた外に出ると、マルコはゆっくりと結界を閉じていった。


(入ったときとは違い、今はマチュア殿から天秤のちからを感じますか‥‥なら、ここにいる必要は本当にないのかもしれませんね)


 見えたり消えたりしていた天秤の力。だが、先程マチュアが戻ってきてからは、明らかにマチュアからその力が発しているのを感じ取っていた。なら、ルフトにこれ以上付き従っている必要はない。いずれ時が来たら、ルフトはマチュアかレオニードたちによって滅ぼされるだろうと、マルコは感じ取っていた。


(なら、せめてその瞬間を、近くで見ていよう。それまでは‥‥)

 

 含み笑いをしつつその場をあとにするマルコであった。

 


誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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