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悪魔っ娘ライフの楽しみ方  作者: 久条 巧


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37/44

その35・マチュアとルフト・シュピーゲル

 ドラゴンランスの面々が街に戻ってから、七の日が過ぎた。

 この間、マチュアは久しぶりの夢の世界。

 酒場カナンで眠っている間、ずっと異世界にいる夢を見ていた。

 やはり、悪魔ルナティクスが忙しそうに働いている姿が見えており、地球の文化の中を悪魔が走り回っているという姿には笑いを堪えるしかない。

 それも数日続いていると、疲れ果てたルナティクスが酒場カナンに戻ってきたところで、マチュアも目が覚めた。

 そここらは、マチュアもやらねばならない仕事を終わらせなくてはならない。


ワルプルギス全体を包む巨大な結界を施し、それの使い方をライトニングとドラゴンランスの面々に説明する。

その作業さえ終わらせてしまえば、あとはいつもの日常。

 頼まれていたワルプルギスの特殊な結界も施し、 終えたので、のんびりと酒場カナンでマフィンを焼いている。


 因みに現在のワルプルギスでのマチュア達のイメージはこう。


 マチュアが悪魔だと

 信じる :99%

 信じない:1%


 マチュアが悪魔だと

 怖い  :95%

 怖くない:1%

 その他 :4%


 ヒト族は

 殺せ  :85%

 まあ許す:13%

 無視  :1%

 その他 :1%


 ヒト族になったドラゴンランスは

 殺せ  :53%

 まあ許す:39%

 無視  :3%

 その他 :5%


 予想外にドラゴンランスに対しては食いつきがいい。

 だが、マチュアはとなると、街の中では大半は怯えた目つき、昔から馴染んでいる人たちはまあ普通。

 怖がる人が大半を占めている。


──コンコン

 入り口をノックする音がした。

「はいはい……なんだボンキチか。なしたの?」

「マフィンを買いに来たんだが。四種八つだ」

「ほいほい。丁度焼きあがったのがあるから……」

 すぐさまボンキチの下げている二つのバスケットに入れると、オレンジジュースを一瓶おまけした。

 それを手渡して代金を受け取ると、ボンキチはすぐには帰らない。


「マチュア、頼みがある」

「ん?りんごジュースもか?」

「ヒト族の国で、俺を鍛えて欲しい。いや、鍛えてくれるように頼み込んで欲しい」

 スッと頭を下げる。

 丁寧に頼んで来るのなら、それを断るのもどうかと。

「鍛えるんなら全員。三十の日ごとに半数なら、多分強くしてもらえるよ。みんなと相談しておいで」


──コクツッ

 頭を下げて店から出るボンキチ。

 ならばついでにと、マフィンを二箱持って店から出る。


──ガラガラガラガラ

 すると、四頭建ての大型馬車がマチュアの目の前を駆け抜けていき、少し先でゆっくりと停止した。


──ガチャッ

 そして、綺麗なチュニックに身を包み、装飾された剣を下げた魔人が馬車から出て来る。

「そこの半魔族。それはなんだ?」

 どこの貴族かとといたくなるが、まあ、面倒なので。

「マフィンですが」

「マフィン?それは食べ物か?」

「ええ、そうですよ」

 ふむふむと納得している男性。

「よし、味見してやるから寄越せ」

「アホ、これは納品分だよ。見ず知らずの貴族に、タダであげる理由なんかないわ」

 そう話してから、男を無視してパスカル雑貨店に向かったが。


「待て、今、貴様なんといった?」

「アホ?」

 プライドが高いので、この一言でルフト・シュピーゲルは切れた。

 半魔族如きが、この俺をアホだと?

「許さん。そこになおれ、斬り殺してやるわ」


──ガチャッ

 すぐさま剣を引き抜く。

 すると、炎龍の剣が炎を上げた。

「あ〜の〜ね。どこの世界に納品予定の商品をポイポイあげるやつがいるのだよ。わかったらとっととどっかいきなさい。これだから貴族のボンボンは……」


──ヒュンッ

 素早く斬りかかる男。

 その切っ先の速度は、普通の冒険者には見えない。

 だが。


──パシッ

 腰を入れて剣を握る手に向かって回し蹴りをすると、そのまま剣を横に吹き飛ばした。

 両手で箱を持ったいるので手が使えないが、この程度の剣戟ならこれで十分。


 だが、男は驚きをあらわにした。

 まさか、自分の剣を見切る者がいるとは。

 しかもカウンターで剣を吹き飛ばしたりと、彼にとっての常識は覆された。


「フハハハハ……いいぞ貴様、半魔族にしてはやるでないか。俺はルフト・シュピーゲル、貴様を俺の配下として迎え入れてやろう」


──ン?

 そのセリフに、マチュアは思わずルフトの顔をまじまじと見る。

「皇王殺したのはあんたか。そうかそうか……じゃ‼︎」

 そう呟いて、マチュアはルフトを無視してパスカルの店へと向かうのだが。

「俺を無視するとはな……その罪は万死に値するぞ、神々の加護を得た魔人ルフトの力、思い知るがフベシッ‼︎」


──スパァァァァン

 素早くツッコミハリセンを引き抜くと、スタンアタックでルフトの顔面を痛打する。

 その一撃でルフトは意識を失い、慌てて飛び出した従者によって馬車に運ばれた。


──ガラガラガラガラ

 いつそのまま勢いよく走り出すと、馬車は真っ直ぐに貴族区へと走っていった。


………

……


「ほい、マフィンです」

「いつもお疲れ様です。代金は店長からお願いします」

 マフィンの納品をしてから、マチュアはパスカルの元で代金を受け取る。

「さっき外が騒がしかったけれど、何かあったのか?」

「ルフト王がマフィン寄越せって絡んできて!しかも部下にしてくれるっていうから」


──オオオオ

 他カウンター近くの人がマチュアを見る。

「力一杯ぶっ飛ばしてきた」

「ん」

 コクリと頷くパスカル。

 そしてキセルにタバコを詰めて火を付けると、のんびりと吹かす。

「ま、マチュアさん、なんて事するんですか?相手は異世界からきた勇者ですよ?勝てると思っているのですか?」

「異世界からきた悪魔が勝てないとでも?」

 はぅあ。

 その自信満々はどこから来るのかと思うが。

 すでに本日一勝をキープ。

「あ、そっか。そうですよね……」

 そう告げてあっさりと引く一同。

「さっきの威勢のいい音は、その武器か」


──スッ

 拡張エクステバックから取り出したミスリル製ハリセンチョップ。

 それをパスカルに手渡す。


──ブンブン

 軽く振り回すと、パスカルは鑑定天秤で鑑定して見る。


『ツッコミハリセン:ミスリル製、非殺傷兵器、相手の心を穏やかにしたり、やる気を削ぐ。アンデットにも有効、第一階位アーティファクト、マチュア作』


「ふぅん。幾らで売る?」

「金貨一枚でいいよ」

「ん」


──コトッ

 カウンターに金貨を一枚置くと、パスカルはそれを後ろの拡張エクステバックにしまい込む。

「それ、なんに使うの?」

「マチュアが悪さしたら使う」

 あ、成る程。

 流石のマチュアでも、何故かこれには抵抗できない。

「まあ、そうならないように気をつけますよ。それでは〜」

 笑いながら逃げるマチュア。

 それに軽く手を上げて返事をするパスカル。

 いつも通りの日常であった。


………

……


 ライトニング邸。

 各都市を巡回しているルフト・シュピーゲルは、北東部最後となるワルプルギスへとやってきた。

 お忍び視察でやって来たのだが、邸に来る途中の無礼な半魔族に気絶させられて、気がつくとライトニング邸の前にやってきていた。


「……あの女はどこに行った?」

 苛々しながら、部下に問いかける。

「行方不明です。ルフト様が意識を失っている最中に、街のものに問い合わせたのですが……みな一様に口を閉ざしてまして……」

「なんとしても捕らえろ。大陸王である俺にあのような無礼、断じて許すわけにはいかない」

「ライトニング卿にも手配します。さあ、到着しましたよ」


──ガラガラガラガラ

 ゆっくりと馬車が敷地内に入る。

 正面玄関ではライトニングと、その横にドラゴンランスのメンバーが待っていた。

 ガチャッとドアが開いてルフト王が降りると、ライトニングに向かって開口一番。

「何故ヒト族がここにいる?討伐はどうなっている」

「その事で。我がワルプルギスは、ヒト族の国に対しての侵攻を停止しました」


──ピクッ

 若きルフト王の眉間が動く。

「詳しい事情を聞きたい」

「ではこちらへ」

 そう告げると、ライトニングはルフト王を普段は使わない貴賓室へと案内した。


………

……


「長旅お疲れ様でした。まずは喉を潤しください」

 上座に座るルフト王の前に、オレンジジュースとマフィンか置かれる。

 先ほどの芳しい香り。

 ルフトはマフィンを一つ手に取ると、端を千切って口に放り込む。


──モグッ

 ルフトにとってははじめての味。

 カッ‼︎と目を見開いて、ルフトは大口を開けてマフィンを食べる。

 時折喉を詰まらせそうになると、一緒においてあるオレンジジュースを飲む。


 しばらくの間、ルフト王は黙々とおやつタイムに突入していた。


(あれを初めて食べたら、そうだよなぁ)


 後ろで控えているレオニードとトイプーが頷く。


 やがて満足したのか、ルフト王はライトニングに話を振る。

「先の話、我は全土にヒト族を始めとする亜人種討伐を命じた。それに従わない理由は?」

 表情を変えずに淡々と告げる。

 ならばと、ライトニングも頭を下げてから。

「ヒト族の持つ技術には、我々魔族にも予想できないほどのものがあります。特にマジックアイテムを製作する錬金術。これは失うには惜しいかと」

「それで?」

「ならば、我がワルプルギスはヒト族との交易を行い、双方の益となる事を選択しました。王よ、今一度ご再考願えれば幸いです」

 目の前で頭を下げるライトニング。

 それを見、後ろに立つレオニード達を見る。


「あと十の日以内にヒト族を殲滅しろ、命令は変わらん……と、言いたいところだが」

 言葉を止めるルフト王。

 ライトニングの思いが届いたのかと思ったが。

 その次の言葉は絶望であった。

「あと二十七の日、シャイターン王都で大陸統一武術大会が行われる。勝者には名誉と莫大な賞金が与えられるのだが、それに参加して優勝しろ。慣例上ではあるが、勝者は望みのものを一つ得ることができる」

 そう告げてから、ルフト王は立ち上がる。

「その蜜菓子を焼いた半魔族も強制参加させろ、わしに恥をかかせたことを後悔させてやる。どちらも優勝できなかった場合、ワルプルギスはヒト族と手を組んだとして殲滅対象とする」

 そう告げると、ルフト王は高らかに笑いながら屋敷を後にした。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「……という事があったのだよ」

 その日の夜。

 酒場カナンのカウンターで、レオニードとトイプーがマチュアと話している。

「それで、マチュアさんはルフト王に何かやったのかしら?」

「無礼だから、街道のど真ん中でぶっ飛ばした。いきなりマフィンを寄越せとか、部下にしてやるっていうから断りまくって。そうしたらキレて襲いかかったからぶっ飛ばした」

 あっちゃあ。

 そんな事があったのか。


「……まあ、それは仕方ないか。それで、大会には俺が参加することになったので、昼間にボンキチが話していた修行をお願いしたいのだが」

 そう繋がるのか。

 ふむふむと頭を振ると、マチュアは一言。


「まずは誰と誰?」

「俺とアレクトー、ラオラオで頼む」

 後ろのテーブルで食事をしているアレクトーとラオラオも頭を下げる。

「留守番はボンキチとトイプーだね。なら、もしなんかあったら私のとこに来て」

「宜しくお願いしますわ」

 トイプーとボンキチも頭を下げる。

 なら、話は早い方がいい。

 幸いなことに、店内はマチュアとドラゴンランスの面々のみ。


──ガタッ

 マチュアは窓の鎧戸を締めて、入り口のドアも鍵をかける。

「まさか、今からここで特訓か?」

「まっさかぁ」


──ブゥゥゥン

 突然目の前にゲートを開く。

 行き先はアスタートの酒場カナン隣。

「そんじゃあ、行こうか」

「何処へですか?それにこれは……第六聖典レジェンドの空間接続。それも単騎で行えるなど」

 アレクトーが驚くので、マチュアは一言。

「こんなの簡単。さ、行きましょう」

 そうマチュアに促されて、一行は恐る恐るゲートを越えていった。


………

……


 暗い店内。

 マチュアは魔法で光球ライトを付けると、店内を明るくした。

「ここはどこなんだ?」

「神聖アスタ公国公都アスタート。そこの酒場カナンの隣だね」

「な、なんだと?」

 慌てて全員が窓を開けて外を見る。

 魔法による明かりがあちこちに灯され、夜にもかかわらず大勢の人が歩いている。

 その光景は、ワルプルギスよりも魔法分便利であろう。


「信じられない……こんなにヒト族の文明が戻っているなんて」

「綺麗ですわ……魔法技術はやはりヒト族の方が上ですか」

 感動している一向に、マチュアは一言。

「そんじゃあ、明日からの訓練についての師匠を呼ぶね。ステア、フリージア、シャロン‼︎」


──シュンッ

 一瞬でマチュアの前に現れる三名。

「お帰りなさい、マチュア様。それで、本日はどのようなご用件ですか」

「勇者育成コースの調子は?」

 そう問いかけると、フリージアが一言。

「勇者は才能。基礎訓練で手間取っていますわ」

「あの連中は骨がない。いや、あるのだが」

 ステア、そんなボケはいらない。


「ここの五名も追加だ。ガイアとファーマスの加護を受けた」


──パン

 思わず手を叩くフリージア。

 そしてシャロンも嬉しそうである。

「そっちの騎士と戦士は鍛えがいがありそうね。ステア様はどう思いますか?」

「エルフの女の魔力は高い。どれ、私が竜語魔術を教えよう」

「なら、私はちっこいの二人ね。司祭とアサシン、どっちも最高位まで行けますわ」

 五人の周りを歩きながら値踏みするフリージアたち。

 その迫力に、レオニードたちも身動きが取れない。

「マチュアさん、この方々は?」

 どうにかレオニードが問いかけたので。

「元勇者のパーティメンバーと、混沌竜の方です」


──ザワッ

「今日から二十五の日で、レオニードさんとアレクトーさん、ラオラオは勇者育成コースで特訓です。フリージア、三人はとなりに部屋を用意してあげて、身の回りの簡単なことをお任せしますね」

 そう三人に頭を下げる。


「マチュアさま、前からおっしゃっていますが、人前で臣下に頭を下げるのはおやめください」

「我らカナンの名を持つものは、全て等しくマチュアさまの臣下です」

「我が主人よ、もっと胸を張りなさい‼︎」


 シャロンが、フリージアが、そしてステアがマチュアを諌める。

 その光景を、レオニードたちはポカーンと見ていた。

「は、ボンキチとトイプーは帰るよ。二十五の日が来たら迎えに来るから、その時はボンキチとトイプーが修行ね……いや、面倒いから、みんな今から修行。ライトニングの警備は私がするわ……そんじゃ」


──シュンッ

 一瞬で消えたマチュア。

 あまりにも一方的に決められた挙句、何も知らないところに置いてきぼりになった。

「え……えええええ?」

 ようやく状況が理解できると、五人は隣の酒場へと案内された。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 マチュアがレオニードたちをアスタートに放り出し……送り届けた翌日早朝。


「た〜のも〜」

 貴族区正門前で、マチュアが横の警備騎士を呼んでいる。

「マッ‼︎」


──ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 マチュアの顔を見て、いきなり正門が開かれる。

 そしてすぐさま騎士がマチュアの元にやって来た。

「本日は、ライトニング卿をおたずねですか?」

「そ。案内も何もいらないけど、今日から二十五の日は朝と夕方通るから、お願いします」

 ペコッと頭を下げると、マチュアは箒に乗ってライトニングの屋敷へと向かう。

 その途中で。


──ガラガラガラガラ

 ライオネルの馬車が目の前から走って来る。

 そしてマチュアを見ると、ゆっくりと速度を下げた。


「なんだなんだ?ここは貴族区で半魔族の来る場所じゃないぞ?」

「うっさいなぁ……ライトニングの護衛だよ。仕事なんだから通ってもいいだろう」

「まあ、仕事なら仕方ないか。近隣の貴族に迷惑かけるなよ、それじゃぁな」


 それだけを告げて、ライオネルは走り去る。

「あいつの心臓は鋼が何かで出来てるのか?凄いなぁ……嫌いじゃないわ」

 苦笑しながらライトニングの屋敷にやって来ると、マチュアは門番にマチュアが来たと伝えて欲しいと話す。

 すぐさま門は開かれ、玄関の外でライトニングが待ち構えていた。


「これはマチュアさん、こんな早朝からどうしたのですか?」

 かなり緊張している。

 護衛がいないと、まだ慣れないのだろう。

「レオニードさん達は、今日から特訓に入りました。全員同時なので、今日から二十五の日、私がライトニングさんの警備と護衛を担当します」


──ペコッ

 深々と頭を下げるマチュア。

 すると、ライトニングは軽く目眩を覚える。


「マチュアさんが護衛とは最強ですが……正直、心臓に良くありませんよ。無礼なことをしたらどうしようかと不安になりますよ」

「いやいや、この格好ですからそろそろ慣れてくださいよ。それで、レオニードさんの仕事って何ですか?」

 そう問いかけると、ライトニングもハァ、と溜息をつく。

「では、朝食を食べながらお話しします。こちらへどうぞ」

「それでは、失礼します」

 にこやかに挨拶をして、マチュアはライトニング邸で朝食を呼ばれる。

 そこで仕事の内容を確認すると、この日からマチュアは警備を始める。


 それほど忙しい日々が続くわけでもなく、淡々と仕事をこなしていくだけ。

 普段はマチュアが警備をしていることを隠すために、暗黒騎士のフルアーマーを身に纏う。

 背中には炎帝剣を装備すると、久し振りの暗黒騎士を堪能する。

「はっはっはっ。両手剣二刀流ならモモン様なんだが、それは難しいからなぁ」

 そんな事を呟きながらも、気がつくと二十五の日が経過していた。


………

……


 早朝。

 マチュアは家を出る前に、アスタートの酒場二階へと転移する。

「やあ、おはよう」

 一階の酒場では、レオニード達がのんびりと食事をしていた。

 心なしか、皆、身体つきや表情が違う。

 引き締まったというか、精悍になったというか。


「ああ、今日が約束の日か。それじゃあ、あの地獄から解放されるのか」

「そうね。ようやく休めるのね」

「もう、あれから大変でしたのよ?お陰でかなりの魔術を使えるようになりましたけど」

 レオニードやアレクトー、トイプーがホッとした顔をしている。

 ラオラオとボンキチは、朝食を食べながらコックリコックリと居眠りをしている。

「こっちも楽しめたからよしという事で。一旦ワルプルギスに行って支度したら、ライトニング邸に集まってね。そこから全員まとめて移動しましょ〜」

 そう説明してから、マチュアも席について朝食を食べる。

 途中からはシャロンやフリージア、ステアも合流し、実に騒がしい朝食となった。


「それで、勇者育成訓練の成果は出たの?」

 そうシャロンに問いかけると。

「ん〜、たった二十五の日では最強の勇者は無理ですけど、そこそこ頑張れる勇者には仕上がっていますね」

「具体的には、冒険者レベルで85前後までの実力は付いてますわよ」

「竜語魔術は一通り教えたから、あとは勉強ですな」

 ほほう。

 それなら良い。

「あとはそうねぇ。レオニード、試合で私と当たらないように祈ってね」

「はは……そうですね」

 乾いた笑いのレオニード。

 やがて食事も終えると、いよいよワルプルギスへと帰還することになった。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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