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悪魔っ娘ライフの楽しみ方  作者: 久条 巧


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35/44

その33・人族と魔族の間には

 ワルプルギスを出発して四日。


 ライオネルと配下の冒険者十六名は、ヒト族の結界の目前まで辿り着いた。

 商業区の西門から出たので、ライトニング達が何者にやられたのかは聞いていない。

 だが、今いる場所が戦場だったことは、四日経っても消えない血の匂いでわかる。


「さて、鬼が出るか邪が出るか……」

 魔族が、その慣用句を使うのもどうかと。

 周囲を見渡すライオネル。

 すると、結界の向こうから、ツノオレのマチュアが姿を現した。

「あっれ?なんでライオネルさんがここにいるの?」

「それはこっちの台詞だ。ライトニング卿の討伐隊がこの辺りで戦闘になって、敗走したのは知っているか?」


──コクコク

 力一杯頷くマチュア。

 するとライオネルも馬から降りてマチュアに近づく。

 目の前にはヒト族の結界。

 そーっと手を伸ばすと、ライオネルの手はバジッとはじかれる。


「おおう、イテテっ。流石に結界中和道具は持ってきてないから、中には入れないか。なんでお前は中から出てこれるんだ?」

「へ?私は半魔族だし。知らないの?」

 ドヤ顔で問い返す。

 するとライオネルは腕を組んで納得していた。

「なるほどなぁ。それで、お前はここで何している?」

 はぁ?

 何もワルプルギスで聞いてないのか?

 するとマチュアも腕を組んで考えている。

 なんと話せばいいのか。


──ポン

「後始末?」

 そう話すと、ライオネルもやれやれという顔をしている。

「カナン商会は戦闘できる商会じゃないからなぁ。まあ、俺たちの邪魔はするなよ?」

「商売柄、相手の仕事の邪魔をするほど落ちぶれてはいませんよーだ。ライオネル商会が真っ当なら、私も手を出しませんけど……」

 そう話しているマチュアを無視して、冒険者達もウロウロと結界の周りをウロついている。


 何処かに出入り口はないか?

 何か手がかりは転がっていないか。

 そんな感じて調査を始めたのだが、いまひとつ手がかりはない。


「仕方ないか。少し戻ったところで野営の準備をするか……マチュア、この辺りのことは詳しいか?」

「まあね」


──ピン

 すると、ライオネルが金貨を一枚放り投げた。

「水場とキャンプが出来そうなところを教えろ」

「あ〜。なら、こっちだね。この街道の南に川があって、その辺りなら安全。そこはリザードマンの集落も遠いし、滅多に人も来ない」

 淡々と説明すると、ライオネル達はその方角に移動を始める。

 それを見送ってから、マチュアはのんびりと結界の中へと戻っていく。


「…… ありゃ放って置いていいや。結界は越えられないだろうし、色々と安全だ」

 テクテクと歩いて、マチュアはミッドガルに戻って行った。


………

……


 ミッドガルの中で、マチュアはそこそこに大きい屋敷をひとつ貰っていた。

 カナン商会の倉庫に使うもよし、自分で済むのもよし。

 その居間の中央では、巨大な魔法陣がゆっくりと回っている。

 その中にはレオニード、ボンキチ、アレクトー、トイプー、ラオラオの死体が転がっていた。


 魔法陣は腐敗防止と再生、蘇生の魔法術式が書き込まれているのだが、五人の肉体は再生しても蘇生されない。

 深淵の書庫アーカイブで原因を調べると、この世界の蘇生は回数を増やすと成功率が下がる。

 一度目でさえ五分五分、その次は半分、次はさらに半分と、どんどん成功率が下がっていく。

 時折誰かの死体が輝くが、すぐに光が消える。

 そんなことを四日間も繰り返している。


「やっぱり無理かぁ……そうだよなぁ」

 あと一日、それでダメなら燃やして荼毘に伏せる。

 マチュアもそう考えて、屋敷の中でのんびりとしていた。

 死体を眺めながら何かする趣味はないので、外の酒場で食事を取っている。

 そこでしこたま酒を飲んでしまい、マチュアは酒場で眠りこけてしまった。


………

……


 ん。

 身体が痛い。

 硬い場所で眠っていたせいか、どうも身体がミシミシする。


「ん……まさか……生き返った?」


 レオニードが身体を起こしながら呟く。

 死の瞬間。

 最後に見えたのは、泣きながらハルバードを振り回すマチュアの姿。

「そうか。またマチュアに助けられたか……」

 ふと辺りを見渡す。

 自分がいるところが巨大な魔法陣の中で、近くに仲間達の死体が転がっているのは理解できた。

 全身がまばゆい光に包まれている仲間達。

 どこまで傷が回復したのかさえ、 レオニードには見ることが出来ない。


「やれやれ、俺が最初の蘇生とはなぁ……しかし、マチュアにどんな顔して会えばいいんだ?」

 ゆっくりと立ち上がって身体を動かす。

 あちこちがミシミシと音を立てているのは、蘇生後の反作用であることは理解した。


──シュゥゥッ

 ふと見ると、死体の一つの光が消えていく。

 そこに転がってあるのは、レオニードの知っている仲間ではない。

「誰だ?ヒト族のようだが、あの後で戦闘があったのか……」

 すると、他の光も次々と消えて、知らない人々の姿が見えた。

 巨人族、エルフ、獣人族、ヒト族の子供。

 それらがゆっくりと身体を起こす。

 そして皆一様に周囲を見渡して警戒する。


──ガチャッ

 何処かの部屋と扉が開いた。

 やがて居間の扉がゆっくりと開くと、マチュアがのんびりと入ってくる。


「ファァ……飲みすぎて具合が悪くて……誰?」

 マチュアの目の前にも、ヒト族が二人とエルフ、獣人、巨人族がいる。

 すぐさまハルバードを取り出して身構えると、マチュアは相手の出方をじっと待ったのだが。


「マチュアちゃん……また、助けてくれたの?」

 エルフの女性が泣きながら呟く。

「そっか。また助けてくれたのですね……でも、どうしてですか?」

 女の子が頭を捻りつつ問いかけると、その横の猫族獣人も頷く。

「おいら達は、まーちゃんに酷いことしたお。なのに助けてくれたのお?」

「……助けてくれたことは礼を言う。だが、それで今までの全てをチャラにはできない」


──ゴキゴキッ

 拳を鳴らしながら巨人族も呟いたので、マチュアはようやく理解した。


「アレクトーさん手を上げて」


──サッ

 エルフがすぐに手を挙げる。


「トイプーさん」


──スッ

 ヒト族の女の子が手を上げた。


「ラオラオ」


──ヒョイ

 こんどは猫獣人が元気に手をふる。


「ボンキチは?」

──ス〜ッ

 巨人族がゆっくりと胸元で手を挙げる。


「最後はレオニード」

──スッ……

 素早く手を挙げるヒト族。


「「「「「なんだって‼︎」」」」」


 全員が素っ頓狂な声を上げた。

 死んだはずなのに、生き返ったらヒト族や亜人種になっていたのである。

 これにはマチュアも驚いている。


「ね、ねぇ、マチュアちゃん、私たちに何かしたの?」

「蘇生したら、どうして種族が変わっているのですか?」

「ぬぁぉぁぁぁぁ、音が良くが聞こえるぅぅ」

「知っていることを全て話せ」


 皆がそうマチュアに問い詰めるが、これはマチュアにも原因がわからない。


「わかっていたら苦労ないわよ、普通の蘇生と再生処理しかしてないわよ、あ〜な〜ん〜で〜ぇぇぇぇ」

 頭を抑えて身悶えするマチュアだが。


──パン

「暗黒神ファーマスが俺に話していた。これは最後のチャンス、新しい運命を受け入れろと」

 座って膝を軽く叩き、レオニードがそう告げる。

 すると、全員同じ話を聞いていたらしく、一様に納得した顔をしている。


「あ、あの〜、私何も理解できない。なんで人に転生してるの?」

 恐る恐る問いかけるが、その場の全員が噴き出した。


──プッ

「神からの啓示ですよ。この逆境を変えなさいと」

「おいら達は、それを超えられるお」

「二つの神の啓示ですわ。新しい運命だそうです」

 アレクトーが、ラオラオが、トイプーが笑う。

「この肉体なら、今度こそマチュアに勝てる」


──ドゴォッ

 すぐさまマチュアに殴りかかるが、カウンターで鉄山靠をボンキチに叩き込む。

 その一撃で壁まで吹き飛ばされると、マチュアは拳を握って構えた。

「十年早いわ‼︎」


「さて、問題はこれからだ。俺たちはマチュアに散々殺された挙句に、敵であるヒト族に転生した。神の与えた罰とチャンス、これを生かすしかない」

 お。

 レオニードは大体の方向性を見出したのか。

「具体的にはどうしますか?」

 トイプーが頭を捻る。

「現状を理解し、何ができるか考える。魔族でなくなった時点で、騎士として国に仕えることもなくなった。マチュアの言う人と魔族の共存、それを俺たちが見つける必要があるのかもしれない」


 このレオニードの言葉には、全員が驚く。

「今までとは全く方向性が変わりましたなぁ」

 マチュアは近くのテーブルに向かい、いそいそとティーセットを用意する。

 そこにみんな座るように告げると、ゆっくりとドラゴンランス会議が始まった。

「わかったことは一つ。俺たちは、思考や感情はまだ魔族なんだが、肉体はヒト族だ。小さい範囲だが、これも一つの共存と言える」


──ポン

 あちこちで納得する声がする。

 なら、あとは安全だろうと考えるマチュア。

「あ、みんなの荷物はそこね。この屋敷は私の所有物だから、好きな部屋使っていいよ。二階の大きい部屋は私のだから、それ以外ね……そんじゃ」

 それだけを告げて、マチュアは居間から出て行った。

 そして残ったドラゴンランスのメンバーは、そのまま朝まで話を続けていたらしい。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 レオニード達がヒト族に転生して三日。

 五人は連日、午前中は居間に集まって会議を続けていた。

 午後からは街に出て周囲の反応を見たり、マチュアとともにウィンドの元に挨拶に行ったりと、ヒト族としての生活を始めている。

 マチュアに釘を刺されていたので、都市内部での喧嘩刃傷沙汰はご法度、買い物なども普通にするようにと言われている。


「あの、一つ聞いていいかしら?」

 屋敷の食堂で昼食を食べている時、トイプーがマチュアに問いかけた。

「ん?ナンジャラホイ」

「結界を守っていたときの悪魔のマチュアさんと、今私たちの前にいるマチュアさん、本物はどちらですか?」

 その疑問は、全員がずっと考えていた。

 蘇生された時、すでにマチュアは帽子を被ったツノオレ状態である。

 その姿が基本的イメージの全員には、どちらが本物かわからない。


「悪魔が本物だよ。でも、この帽子を被っているとね、残虐性が薄れるのよ。だから、ツノにリボンを巻いてツノオレに見せかけて、さらに帽子も被って魔法で固定しているの。試しに外してみる?」


──ワ〜ッ‼︎

 その言葉には全員が止めに入る。

「でも、おいら達はまーちゃんがいつものマチュアさんなんだけど、話し方は変えないとダメ?」

「真祖様だから、敬意を払う必要はある……」

 ボンキチがウンウンと納得しながら呟くので。

「別に今まで通りでいいよ。むしろ、変えたら叩く」

「はいはい。では今まで通りで……でも、ワルプルギスにはもう戻れないですよね?マチュアちゃんが真祖の悪魔だってバレたのだから」

「そこなんだよなぁ……俺たちもヒト族になってしまったし、ライトニング卿にも報告に戻らないとならない。生存報告をしないと、心配をかけているから」

 アレクトーとレオニードが話していると、残りの三人も頷いている。


「でも、私はもうすぐ帰るよ?なんなら一緒に帰る?」

 マチュアはあっさりと一言。

「この格好で街になんて入ったら、すぐに戦闘になりますよ。私たちに死ねと?」

 笑いながらトイプーが告げるので。

「いやいや、私、帽子外していくから、一緒についてきたらいいよ。多分、誰も近寄れないし」

「俺たちも近寄れないぞ」

「それはないでしょ。魔族の魂に刻まれている、真祖に対しての敬意は、今はないだろうから……恐慌ディプレッションは発動しないから大丈夫だって」

 モグモグとシチューを食べながら話をする。

 すると。


──ピッピッ

 結界に反応が現れる。

 どうやらだれかが接触したらしい。

「ん、誰か結界に触れたから見てくるね……そんじゃまたね」


──シュンッ

 すぐさま街道沿いの結界まで転移する。

 すると、街道の要石の近くを、ライオネルとその仲間達が徘徊している。

 その後ろには、おそらくワルプルギスから派遣されたのであろう冒険者が、恐る恐る此方を伺っている。


「ライオネルさん、どしたの?」

 結界の中から話しかけると、ライオネルは堂々とマチュアに一言。

「この結界の調査だ。ただやってきて、何もしないで帰るのも癪だからな、そう言えば、後ろのやつらはマチュアに用事があるみたいだぞ、なんだか真祖がどうとか話しているのだが、全く要点が掴めない……」


 困り果てた顔のライオネルと、もう今すぐに逃げ出したそうな顔の冒険者達。

 ならばと、マチュアはチョイチョイと後ろの二人を呼びつける。


「あ、あの……ライトニング卿の使いで……レオニード達の死体を引き渡して欲しいと」

「あと、是非一度ワルプルギスにきて欲しいと……」


 ふうん。

 罠を張っているとは思えない。

 部下の死体を引き渡してとは、なかなか言えないのだろう。


「そうねぇ。近いうちに向かうと話しておいて。もし私のいない間にカナン商会や酒場に手を出したなら、同じやうにしてあげるって伝えてね」

「レオニード達の死体は」

「その時に。という事ですので」


──ペコリ

 丁寧に頭を下げる。

 すると相手も慌てて頭を下げ返すと、すぐさま馬に乗って逃げるように走っていった。


「ん?もう用事は終わったのか?」

「終わったよ。ライオネルもとっとと帰ったら?」

「そうだなぁ。そろそろ帰って、報告書でも出すか。あと数日は時間を稼ぎたいんだが」

 ん?

 なんの話だ?

「時間稼ぎって?」

 思わず問いかける。

 すると、ライオネルもやれやれと困った顔をしている。


「我がライオネル商会は、再建のためにビーステス商会の傘下に一時的に加わったのだが。そのビーステス商会が近々、中央大陸まで軍事侵攻するのだ」

 ふぁ。

 なんじゃそりゃ。


「どうしてそんな事に?」

「ルフト王の命令だよ。この大陸の亜種族狩りについては、あとは各国の冒険者に任せればいいと。そこで新たなる大陸を支配するのに、大型帆船を所有しているビーステス商会に白羽の矢が立ったという事だ」

 成る程。

 わかりやすい説明だが、それとライオネルがどういう関係?

「概ね理解。で、なんでライオネル商会が関与してるの?」

「うちからも冒険者を出せという話になってな。俺も同行しろと言われたのだが、討伐隊が敗走したという話を聞いて、此方に参戦した。これで俺たちは海の向こうに向かうことはないからな……」

「つまり逃げたと?」

「煩いわ、そういうお前はいつまでこの辺で遊んでいるんだ?」

 あ、とばっちりきた。

 なので。


「この先のミッドガルにカナン商会の支店を出すんですよ〜だ。その準備をしているところです」

「チッ。これだから許可証のある奴は……俺も一口噛ませろ」

「ふっふ〜ん。ちゃんとした交易が出来るなら考えてあげるよ、ヒト族だからって脅しや略奪しないならね……ってあれ?ライオネルは交易肯定派?」

 その疑問はごもっとも。

 今の風潮なら、ヒト族は粛清対象である。


「中立。商人にとっては、ヒト族の作るマジックアイテムや工芸品には興味がある。それは商売として成立するからな。魔族としては胡散臭い奴らとしか見てない」

「成長したなぁ。私を連れ出して殺そうとしたり、うちの商会燃やしたくせに」

「それは、お前達が邪魔だったからだよ。だが、ビーステス商会よりはマシだと判断した。イスュタル商会とも付き合いがあるのなら、敵ではなく中立もしくは手を組んだ方がいいと」


 あのライオネルにそこまで言わせるとは。

 アストラ・ビーステスはどれほどの事をライオネルに要求したことやら。


「まあ、そんな事で、私はもう少ししたら帰るので。そんじゃあね」

 ヒラヒラと手を振って、マチュアは街道を戻っていく。

 おうよ、と返事をしてから、ライオネルももう少しだけ調査をして、やがてワルプルギスへと戻っていった。


………

……


 ミッドガルに戻ったマチュアは、レオニード達にライオネルが近くて調査をしていたことと、ライトニング卿の使いがマチュアに会いたがっている事を伝えた。


「死体を探し出して、どうするつもりだったのだろう」

 ボンキチが腕を組んで考える。

「マチュアちゃんとも会いたいって話しているのなら、蘇生して欲しいと頼み込むとか……」

「それはあり得ますわ。わたし達ドラゴンランスはライトニング様の私設冒険者ですから。ですけど……」


 トイプーが自分たちの姿を見渡す。

 コボルト族やオーガ族、ゴブリン族の面影など何処にもない。


「ライトニング様が、俺たちを見て何処まで信用してくれるか。頼みの綱のギルドカードを見せるしかないが……」

 そう呟きながら、皆が自分のギルドカードを見る。

 種族は今の姿に変更されている。

 名前やクラスは同じなので、これで信用してもらうしかない。


「なら、明日にでものんびりと行きましょうか。馬車はないけれどレオニード達の乗ってきた馬なら捕獲してあるから、それで行けばいいわよね」

 ポン、と手を叩いて提案する。

 それならば時間もあまり掛からないので、無理なくワルプルギスまで戻ることができる。

「ついでに言うと、みんな装備とか整えた方がいいわねぇ。お金あるんでしょ?街で買って古い装備は馬にでも乗せておけば?」

「そうね。私なんて、体型が変わって前までのレザーアーマーとかはつけられないのよ」

 トイプーがそう告げると、レオニードとアレクトー以外の全員が同意する。

「この体は、オーガよりも高くてな。もうふた回り大きくないと無理だ」

「逆においらは小さくなってて、前のレザーアーマーがぶかぶかだお」

「それに着替えも。いつまでも同じ服というのは……ねぇ」

 アレクトーがトイプーに話しかけると、二人ともウンウンと頷いた。


「なら、今日は買い物と出発の準備で。明日の早朝にでも出発しましょうか?」

 そのマチュアの言葉には全員が頷く。

 そしてマチュアを除く全員が街へと買い出しに向かった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 翌朝。

 馬に乗ったレオニードと 達と、箒でのんびりとついていくマチュア。

 迂闊にも転移するところは見られてしまったが、ゲートを開くところは見せていない。

 なので、今回のワルプルギスまでの旅路はレオニード達に合わせて、のんびりと街道を歩く。


 ミッドガルから街道にそって進み、いくつものキャンプエリアを通っていく。

 やがて見慣れた草原地帯を抜けると、城塞都市ワルプルギスの姿が見えてきた。


「……十の日ぶりか。街はどうなっているんだろうか」

 不安そうなレオニード。

 それには全員が同意している。

 そして城塞部分が見えてくると、今までよりも金属板や大きめの石材などで全体的に強化されているのに気がついた。


「おおう。これはまた、とんでもない事になっているなぁ……」

 笑いながら歩いていた時、城門の騎士達がマチュアを見かけたらしく、慌てて城門が閉じられた。


──ゴゴゴゴゴゴゴゴ


 ビッチリと閉ざされた城門、そして城塞の上には大勢の騎士。

「ヒト族がこのワルプルギスに何の用だ。理由なく近づくのであれば、この場から射殺す」

 そう叫ぶ声が聞こえるので。

「みんなは此処で警戒してて……」

 そう話してから、マチュアはのんびりと城門まで歩いていく。


「あの〜、マチュアですけど。此処開けて貰えます?あと、うしろのヒト族は私の仲間なので。この街に対しての敵対意思はありませんので……」

「マチュア様ですか。ライトニング卿からお話は伺っていますが、ヒト族は……」

「そう?私の同行者も駄目なの?」

 やや瞳を細めて問いかける。

 すると、城門上の騎士達は少し後ろに下がってしまう。

「い、今、ライトニング卿に問い合わせますので、少々お待ちいただけますか」

「ならついでに伝えて。私の仲間に手を出すようなことがあったら、ワルプルギスが地図から消えると思いなさいって」


──ニィィッ

 久し振りの超悪い笑顔。

 この時点で、城門上の騎士達は逃げ始めている。

 そしてテクテクと皆の元に戻っていくと、マチュアはのんびりとライトニング卿からの返事をじっと待っていた。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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