その27・交易都市ミッドガルにて
魔族の商隊がミッドガルに到着した夜。
レオニードとラオラオの二人は、深夜の人気のない街の中をこっそりと歩いていた。
この都市に来る前に、ライトニング卿に命じられた調査を行うためである。
可能ならば、この街の全景を調べたのちに次の街まで向かいたい。
この街はまず、我々魔族が支配しなくてはならない。
ここを拠点として、ヒト族を魔族の支配下に置く事こそ、シャイターン王への忠誠であるとライトニングは信じている。
この交易も、そのための調査であるとライトニングは考えたのである。
──スッ
静かに気配を消すラオラオとレオニード。
その二人の後ろを、さらにマチュアがこっそりと着いて歩く。
やがてレオニードとラオラオの二人は、この都市で唯一の魔族であるウィンドの屋敷にやって来た。
「レオニード、このまま侵入するお?」
「いや、まだこの都市での彼の立場がわからない。我々の為にこのような機会を作った理由が、まだ分からないのだ」
「でも、ライトニングさんとしては、ここを抑えたいんだよねぇ。どうするの?」
「そうだ……な……うわぁぁぁ‼︎」
よ
いつのまにか、マチュアがひょっこりと顔を出す。
これにはレオニードとラオラオも驚いている。
「ま、マチュアさん、どうしてここにいるのですか?」
「まーちゃん、おいらでも気づかなかったお?」
思いっきり動揺している二人に、マチュアは羊皮紙に書かれた魔法陣を見せる。
「ふっふ〜ん」
「はぁ。またそれですか。それで、どうするのですか?」
やれやれという顔をしてマチュアに問いかけると。
マチュアはあっさり一言。
「この街を魔族が支配するようなことをするのなら、全力で邪魔するよ。でも、協調するのなら何にもしない。魔族がヒト族を支配しちゃダメだよ」
──キョトン
このマチュアの言葉には、二人とも驚いた顔をする。
以前もこの話でマチュアと対立している。
そしてマチュアの実力も、ドラゴンランスのメンバーは知っている。
だからこそ、マチュアとは敵対しないように考えていたのだが。
「……マチュアさんとこの話をすると平行線になりますよね。私達はまず、ここの領主の話を聞きたいのです。その邪魔はしないでください」
そのレオニードの話には、マチュアはコクコクと頷く。
ならばと、スッと立ち上がって屋敷の正門まで走っていく。
──スタタタタッ
「うわ、ま、マチュアさん‼︎」
「いきなりなにするを‼︎」
慌てて立ち上がってマチュアを追いかける二人だが。
マチュアは気にせず正門横の門番に。
「フェザーの娘のマチュアが来たって、ウィンドさんに伝えてください」
「おや、それなら少し待ってて下さいね」
これは予め決めてある合図。
すぐさま門番は、通用門を通って屋敷に向かう。
これにはレオニード達も驚いた顔をしていた。
「マチュアさん、これは一体どういう事ですか?」
「カナン商会のフェザー・マスケット叔父さんの兄が、ここの領主のウィンドさんですよ。私は話を聞いてましたから」
そう説明すると、門番がマチュアとレオニード、ラオラオを屋敷の中に入るように促した。
「時間も時間なので、あまり長い時間はお会い出来ませんとの事です。ではこちらへ」
屋敷の中に入り応接間へと通される。
すると、そこにはウィンドとイザベラの二人が待っていた。
………
……
…
「昼間は他人行儀で申し訳なかったな。フェザーは元気かい?」
穏やかな表情でマチュアに問いかけると、マチュアはゆっくりと頷く。
「もう元気すぎるぐらいですよ。それよりもウィンドさん、こちらはワルプルギスの領主、ライトニング卿の冒険者、レオニードさんとラオラオさんです」
マチュアが二人を紹介すると、レオニードたちも頭を下げた。
「レオニードです。こんな夜半に申し訳ありません」
「ラオラオだお、宜しくたのむお」
ライトニングの名前が出ると、ウィンドは思わず苦笑してしまう。
「では、まずはお掛けください。マチュアちゃんが二人を紹介してくれたという事は、私に何かご用ですか?」
そうレオニードに問いかけると、レオニードは軽く頷いて一言。
「ウィンド卿、この都市を魔族に解放する意思はありますか?」
端的に聞く。
余計な説明もなにもない。
質問があれば答える、そういう意思で問いかけたのだが。
「ありません。この結界の中はヒト族の世界、私は彼らに請われて、この都市の領主を引き受けています」
「しかし、ヒト族は我ら魔族が支配するべきでは?」
「その考えは古すぎる。この都市は交易都市、シャイターン王国のシャイターン王から、直接交易をして見ないかと請われました。それを国の元老院で話し合い、女王の命を持ってこの場を設けたに過ぎません」
キッと正面を向いて告げる。
だが、レオニードは話を続ける。
「その話も、シャイターン王がこの結界内に侵攻する為の策であると考えてます。どうにか御協力お願いしたい」
「お断りします。私はシャイターン王からヒト族との交易をまず始めてほしいとだけ頼まれました。その様な出所のわからない策謀には耳を貸すわけには参りません」
──ガチャッ
その言葉には、レオニードは腰の剣に手を当てたが、それよりも早くマチュアが柄を抑えた。
「ここで抜くのなら、レオニードさんでも殺すよ。ウィンドさんは私にとっては叔父さんになるんだから」
真剣なマチュアと真剣なレオニード。
これにはラオラオも困り果てる。
「……ふう、わかった。先ずはここの領主の意見は聞いた。その上で、ワルプルギスに戻って報告することにする。俺は、この都市の調査を命じられているので、それは認めてもらえますね?」
両手を軽く挙げてそう話すレオニード。
ならマチュアも手を離す。
「調べられて困る事はありませんから、ご自由にどうぞ。ただ、明日からは夜の来客はご遠慮ください」
「わかりました。そもそも、屋敷に最初に行ったのはマチュアですから、説教はそちらにお願いします。では、私たちはこれで」
そう告げて、レオニードは立ち上がる。
ラオラオもすぐにレオニードについていくと、そのまま屋敷を後にした。
──タッタッタッタッ
夜の帳を走るレオニード。
その後ろをラオラオとこっそりマチュアが走っている。
「予定外の事象だ。まさかこんな事態とは」
「まーちゃんが領主の知り合いなのはびっくりしたお」
「そうだ。だが、これは上手く行けば。今後の話し合いやライトニング卿の動きを有利にできる。そうだろう?」
「ん〜。でも、フェザー卿はカナン商会の人、ウィンド卿はフェザー卿の兄、まーちゃんはフェザー卿の娘。これは上手く使うのは難しいと思うお」
ウンウン。
全くその通りです。
「この後のことはライトニング卿の判断だ。もし、今後の話し合いや展開によっては、俺はフェザー卿やウィンド卿を殺すかも知れない……マチュアさんには悪いがな」
「だーかーらー、そんな事するのなら、先にレオニードさんも殺すって。その後でフェザーのオッチャンとウィンド叔父さんを蘇生すればいいだけだからね」
ひょこっと姿を表すマチュア。
これには、またしても二人は驚く。
「うっわ……マチュアさん、本当に何処から現れたのですか……」
その問いには、マチュアはまたしても魔法陣を取り出して見せる。
「はぁ……分かりました、この都市にいる間は、静かに調査だけします。それで良いですね?」
「まーちゃん。おいらも約束するお」
走るのをやめて歩き出す二人。
ならばと、マチュアはマフィンの入ったバスケットを取り出して手渡す。
「それではおやすみなさい‼︎」
にこやかに走っていくマチュア。
まずは出足をくじくことに成功。
明日からの動きが楽しみである。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
翌朝からは、いよいよ交易開始。
魔族の店舗など成立するのかと疑問であったリンダやレオンだが、朝からまさかの混雑具合。
グラントリ一家の商隊では、すぐに品薄になってしまう。
マチュアがワルプルギスで書き込んだものも基本は王都での販売であり、末端都市であるここまでは中々届かない。
その代わり、この都市の半魔族の販売品はグラントリ一家が王都から持ち込んだ石鹸などの高級品。
王都カナン商会の目玉商品が、ここでは普通に売っていた。
「信じられない……何よ、この石鹸は。それにシャンプー?髪を洗う為の石鹸って何よ?」
販売は商会員に任せて、リンダやレオンはヒト族の販売品を見て歩いていた。
そこでリンダは、様々な化粧品に目を奪われる。
「うむ。これがヒト族の蘇った文化の一部。そっちは酒なのだが、レオン殿には堪らないのでは?」
そう勧められたのは、この世界のワインを蒸留したブランデーである。
「ゴクッ……ほう、これはかなり期待が……」
試飲の二口目でコップのブランデーを飲み干してしまう。
ミッドガルで販売している商品は、マチュアが拡張バックの中から取り出したものや、エルフとドワーフの技術を継承して神聖アスタ公国の住民が自分たちで仕上げたもの。
フリージアとシャロンは一部の人間に魔法を教え、指輪などの装飾品に様々な効果を付与してある。
まさにマジックアイテムを製作したのである。
元々、人間にはこれらを生み出す力があったのだが、ここに来て300年前の失われた技術を解放した。
「この石鹸はおいくらなの?」
「銅貨十五枚ですが?」
?
リンダの予測価格は金貨一枚。
貴族ならばそれぐらいは支払う。
それを予測しての仕入れ交渉の予定だったのだが、リンダが頭の中で弾き出した仕入れ予定は銀貨五十枚。
その金額を遥かに下回った金額を告げられて、目が丸くなっている。
「え〜っと、あのね、私たち魔族が怖いからって、そんな事をしないで。この石鹸は貴族相手には金貨一枚以上の価値があるのよ?」
「そう言われましても、王都では皆、普通に使ってますよ。毎日お風呂入りますから」
──ヘ?
今なんと?目の前の半魔族の売り子は何を話しているのだ?
リンダの予想を遥かに上まることが多すぎる。
魔族ですら、風呂など滅多に入らない。
基本は行水が殆どであり、少し金を持っているものがお湯を沸かして身体を拭う。
風呂など高級な宿か貴族の屋敷にしかない。
「へぇ。ヒト族は毎日ねぇ。そんなに大量の薪をどこで集めるの?」
「薪なんていりませんよ。ロット・オブ・銭湯がありますから」
そう話してから、売り子はリンダの目の前でお湯の球体を生み出す。
──ボョォォォォン
これにはかなり興味を示したらしく、リンダはそーっとお湯に触れる。
──パシャッ
ちょうど良い湯加減。
これと石鹸があるのなら、たしかに毎日でも風呂には入れる。
「ふ、ふーん。そうね、これは売り物かしら?」
必死に冷静を装っているリンダ。
──キラーン
だが、その様子を売り子は見逃さない。
「売ってはいますけど……これは少し高くてですね……」
ここからは商人同士の、言葉と知識の戦いとなった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
あちこちの店を見て、商品の見定めをしているレオン。
弟アストラから命じられたのは、もしも売り物になりそうなものがあるなら、どんな手を使っても奪い取ってこいという命令である。
交易という名目でいく以上は商品も持って行かなくてはならない。
だが、アストラはヒト族とまともな交易などする気が無かった為、持ってきた商品も二級や三級品。
だが、この、都市に並んでいる商品は、殆どがレオンが持ち込んだものよりも上質である。
さらに、ヒト族を脅したり物資を強奪するために雇った護衛も、ケンタウロスの襲撃で全滅。
マチュアを暗殺しようとする冒険者まで知らずに雇い入れてしまっていた。
今、彼の商会にいるのはビーステス商会の従業員と、雇い入れた商人だけ。
護衛であるライトニング子飼いのドラゴンランスも、この街なら護衛はいらないでしょうと街の中を散策している。
「はぁ……ですから、正攻法でやらないとマズイと話をしたのに……」
目の前の半魔族の商店には、魔術を付与してある工芸品が並んでいる。
これでさえ、魔族の街ではかなり高額で取引される。
だが、ビーステス商会が持ってきた買い付け予算は、カマンベーン商会の1/100。
アストラがヒト族をもっと正しく評価していれば、こんな事にはならなかっただろう。
──モグモグ
溜息をついて歩いているレオンの前を、マチュアがホットドッグを食べながら歩いている。
「おや、カナン商会のマチュアさん。こんな所で視察ですか?」
「ゴクッ……おや、レオンさん。マジックアイテムの仕入れですか?」
「それがですね。馬車に積み込んだと思った仕入れ用のお金を別の荷物と間違えてしまって……」
そういう事にしておこうと話してみる。
「店舗の売上で仕入れしたら?」
「それも、持ち込んだものは二流品以下のものでした。アストラはあれをどうする気だったのか、理解出来ませんよ」
うん、知ってた。
リンダと手を組んで無理やり強奪しようとしていたのは、マチュアも知っている。
だが、カマンベーン商会は急遽予定を変更して、持ってきた二流品を全てワルプルギスで現金化、傾き始めたライオネル商会からかなりの商品を買い付けたのである。
このことを知らないビーステス商会は基本方針を変更せず、護衛の冒険者を増やして単独でも計画を実行する予定であったらしい。
「安く売ってどうにかするしかないねぇ」
「今はそうしてますよ。それでも、欲しい物の半分も買えません」
「まあまあ、今回が最初で最期じゃないのでしょ?また次の機会に儲ければいいんじゃない?今は顔つなぎと考えれば良いんだし」
そう話してから、マチュアは広場に向かう。
それを見送ってから、レオンは臨時商会へと戻る事にした。
………
……
…
その頃、広場では一悶着が起きている。
「だーかーらー、それの値段は銅貨五十枚なの、こんな値段じゃ売れないんだよ」
露店のホットドッグ売りが、三人の冒険者に文句を言っている。
「半魔族が五月蝿いなぁ。お前らに銅貨五十枚なんて勿体無いんだよ。三本でちゃんと十枚払っただろう?」
「はぁ?あんたら冒険者の癖に数も数えられないのかよ。三本なら百五十枚だろ、あと百四十枚払えよ‼︎」
「うっせぇなあ。ほら、あと十枚追加してやるよ、じゃあな」
──ヒャッヒャッ
笑いながら別の露店に向かう冒険者。
ヒト族の街に来たら好き放題略奪できると思ったらしいが、それが禁止されてしまい鬱憤が溜まっている。
それで半魔族相手に喧嘩を売って遊んでいるのであるが。
「スラッシュキーック‼︎」
──ドゴォォォォォッ
リーダー格の男の背中に向かって、マチュアが足刀蹴りと呼ばれる、足の裏外側での蹴りを入れる。
力一杯は踏み込まず、勢いで相手を吹き飛ばす。
「ぐっはあっ、何しやがる‼︎」
「なんだ、カナン商会の女か、いきなり何しやがる」
「てめぇ死ぬ気か?」
などなど、思いつくチンピラのセリフを並べてくる。
なのでマチュアは一言。
「飯食ったのなら金払え、それも適正価格だ」
すると、三人はヘラヘラと笑う。
「俺たちは適正価格を払ったんだぜ?半魔族が俺たちにぼったくろうとしたから、少しお仕置きも込めてな」
「だからあんたも早くどっか行きなよ。同じ商隊のよしみで、さっきの蹴りは許してやるよ」
──ゴキッ
右手を鳴らすマチュア。
「この街では、種族によっての差別はしないって聞いてないの?」
「差別?おいおい、俺たちは当たり前のことをしているんだ。半魔族が俺たち以下の存在なのは当たり前。それは差別とは言わないんだよ?」
明らかにからかっているのがわかったので。
──ピッ
『恐慌、対象は目の前の三人、効果は最低値で……』
──ギン‼︎
力一杯三人を睨みつける。
すると、突然三人はビクビクと震えだす。
「ちゃんと払え‼︎」
マチュアはそう呟く。
すると、さっきまでの威勢はどこに消えたのか、三人はお互いの顔を見合わせている。
「あ、い、いや……」
言葉もしどろもどろ。
なので、もう一度だけ恐慌を発動して睨む。
「は、ら、え」
これでトドメとなった。
三人はいきなり露店に戻って正規の値段を支払うと、臨時商会のある建物へと逃げていった。
この日は、同じような事が何件もあったらしいが、その都度、街の中を巡回していたフリージアとシャロン、ステアがマチュアと同じように相手を威圧して支払わせている。
それは夕方に商会の責任者に連絡されると、リンダはフリージアたちに頭を下げる事になっていた。
カナン商会は徹底して差別を行わないようにとに何度も釘を刺されているし、なによりもウィンドとイザベラという前例を知っており、ここでも再会できた事が嬉しいらしく、マチュアの話はすぐに受け入れられていた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
初日以降は、冒険者や護衛たちもあまり騒動は起こしていない。
元々この街は半魔族の比率が多いため、其れ程の争いにはならなかった。
ヒト族の商品はすぐに売り切れたが、その都度グランドリ一家が中継都市まで取りに戻り、すぐに入荷する事ができた。
ほんの十日の事であったが、魔族もヒト族との交易については前向きに検討する必要があると考え始めた。
そして最終日。
この日は夕方で店舗の販売は終了。
商隊は明日この街を後にするため、急ぎ荷物を纏めに 始める。
建物の外では、リンダとレオン、マチュアが集まって帰りの打ち合わせを行い、そこにウィンドとグリジット、元老院のアマルテアもやって来る。
「十日の日、事故も何もなく終わりましたね。お疲れ様でした」
ウィンドがマチュア達に話しかけたので、リンダも頭を下げる。
「こちらこそ、有益な商売ができましたわ。また次の準備が出来ましたら、改めて伺いますので」
「無益な騒動さえ無ければ構いません。交易税も暫くは取らないという事にしてあります。本格的な交易が始まったら、その時には是非お支払いください」
これにはリンダ達も頷く。
「定期便としてやってこれるようになりましたら、その時はお願いします。まだヒト族を許さないという魔族も多いですから、次の機会も連れて来る護衛や冒険者も吟味してきますので」
「それは是非……」
そう話しを終えると、ウィンドがマチュアに手紙を渡す。
「マチュアちゃん、これはフェザーに渡してくれるか?」
「いいよ、ウィンド叔父さん。ワルプルギスに戻ったら渡しておくから」
──ン?
このやり取りには、リンダとレオンも驚く。
この短期間に、マチュアはミッドガルの領主とどれだけ仲良くなったのか?
カナン商会に出し抜かれた。
その想いがリンダとレオンの中に一瞬だけ湧き上がったのだが。
「あの、マチュアさん、いつのまに領主様と懇意に?」
「うちのカナン商会は、元々はマスケット商会っていう名前で、その時の代表のフェザー・マスケットはウィンド領主の弟ですよ。うちの出入り商人のグランドリ一家に連絡は取ってもらっていますから」
──ポカーン
呆気にとられるリンダとレオン。
「なら、マチュアさんと一緒なら、ここにはいつでも来られるのかしら?」
「まあ、来れないことはないかと。リンダさんの結界中和の杖、使い切りで今回使ったらもう使えないけど、それ作ったのも私だし」
──ガシッ
すぐさまマチュアの手を取るリンダ。
「王都に戻ったら、次の日取りも決めましょう。グランドリ女王にも許可を貰いますわ」
「うちは、次はご遠慮しますよ」
リンダの後のレオンの言葉。
それには全員が驚いた。
「そうですの?」
「ええ。うちはまだ、ここで交易させて貰えるほど綺麗な商会ではありませんから。胸を張って来られる様になったら、その時はお願いします」
改めて頭を下げるレオン。
これで話はお終い、アマルテアたちも自分たちの屋敷に戻るので、マチュアたちも再び作業を開始した。
………
……
…
ミッドガルからティタンへと続く街道。
その途中で、レオニードとラオラオの二人は立ち止まっていた。
ラオラオのシーフスキル『隠密』で城門をヒトに見つからずに抜けてきたのだが、突然目の前に黒い鱗を持つ竜族の女が姿を現したのである。
「さて客人。貴方たちには、ここを超えることは許されていないわ。我が主人から、ここにきた魔族は殺せと言われているのよね」
──ガチャッ
腰の大剣を引き抜いて構えるステア。
だが、レオニードもここで引くことは出来ない。
少しでも多くの情報を持って帰る。
ミッドガルの情報は意外とあっさり手に入ったのだが、どうしても腑に落ちないことがある。
ヒト族が魔族を恐れていない理由。
半魔族なら、血の半分は魔族ゆえに恐れはそれほどない。
だが、街の中のヒト族女性や、なによりも元老院のヒト族が魔族に対して普通に接している。
この理由がわからない。
この向こうの街はどうなっているのか、そこも魔族を恐れないのか。
勇気を持ったヒト族は危険である。
「レオニード、帰ろう……わかったお」
ラオラオは、レオニードの服の裾を軽く引っ張って後ろに下がり始める。
「どうした、何かわかったのか?」
「後で話すお」
そう告げられると、レオニードも武器を納めた。
それでステアも大剣を納めると、二人がミッドガルへと戻るのをじっと監視していた。
「ラオラオ、何がわかったんだ?」
帰り道で、レオニードはラオラオに問いかける。
すると、ラオラオはレオニードの背中の『ザ・フレイム』を指差す。
「あの竜族は、これの兄弟剣『ザ・シャドゥ』を持っていたお。これが神代の武器なのは鑑定して貰ってレオニードも知っているだお?」
──コクリ
軽く頷くと、レオニードも考える。
マチュアから貰った剣は、鑑定の結果、第三階位アーティファクトと判別された。
それも、神代の武器として。
そんなものが、いくつも存在するはずがない。
それをもたらしたものがいる。
それは誰なのか?
──ハッ‼︎
レオニードの脳裏に浮かぶ人物。
それにラオラオも気づいたらしい。
「この街は、まーちゃんが関与している。この交易もね……だから、僕たちが動くのを察して釘を刺したんだお」
テクテクと歩くラオラオ。
レオニードもその横を歩いて戻るのだが、何故マチュアがそんな事をしているのか理解できなかった。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




