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悪魔っ娘ライフの楽しみ方  作者: 久条 巧


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25/44

その23・結界都市の抗争

 神聖アスタ公国・中継都市ティタン。


 交易都市ララックから伸びる街道を通り、大フリューゲル森林の真ん中に位置する都市。

 現在、この都市は大掃除の真っ最中であった。

 この都市を牛耳っているバルボア・ファミリーと、公都から派遣されてきた騎士団が戦闘状態に突入。

 この都市の覇権を巡って抗争が繰り広げられている。


「お〜お〜、やっとるやっとる」

 都市を二分に分けた抗争。


 ボーマン達とは違い、このバルボアファミリーは海を渡ってこの大陸に逃げて来た。

 そしてこの国に辿り着き、自分達の土地を求めて廃墟だったティタンに住み着いたらしい。

 そして、この地に流れていた人々と共に、ティタンを少しずつ復興して、今日に至る。

 それを今更解放しろなどと、どのツラ下げていったのだろう。

 拗れるのは当たり前。


「これ、どっか妥協点ないかなぁ」

 マチュアは、横で指揮をしているグリジットに問いかけてみる。

 基本的には騎士団管轄なのだが、都市再生は元老院の仕事。

 なのでグリジットも派遣されていたらしい。


「まあ、この神聖アスタ公国はセシリア王家が代々守っていた地、ですが放置されていた廃墟を復興したのですから、何かしらの恩賞でも与えれば良いのですが」

「そうすれば?」

「求めて来たのは、このティタンの自治権です。ここを独立した国と認めろと」

 はぁ。

 マフィアの縄張り争いでもあるましい。

「自治権ではなく代行統治でいんでない?」

「そうなると、他の都市の復興でも求めてくるでしょう。それに、彼らは魔族を憎んでいます」

 あ、それはダメだ。


「なら、全部殺すか」

「え?」

 目をパチクリとするマチュア。

「しかし……あちらで武器を持っている中には市民もいます。それはマズイのでは」

 心配そうに問いかけるので。

 マチュアはニイッと笑う。

「それは冗談。でも、死ぬほど頑張っているんだから。話ぐらいはさせて欲しいよなぁ」


──シュンッ

 両手にハリセンを持って、マチュアは少し腰を落とす。

「騎士団に下がれって話ししてくれる?」

「はい‼︎騎士団は後方に、悪魔マチュアがでます」

 その言葉で、騎士団が下がる。

 自分達が優勢と勘違いしたバルボアファミリーは、ここぞと前に飛び出してくるが。



──カツーンカツーン

 騎士団の代わりに前に出た悪魔の姿に脚が止まった。


恐慌ディプレッション、前方百八十度に二秒)


 悪魔スキルを少しずつ使いこなせるようになったので、前方のファミリーの面々にニィッと笑って恐慌ディプレッションを発動する。


──ガタガタッ

 その場にしゃがみ込むもの、呼吸が苦しくなるもの、全身が震えて武器を落とすものなどが現れ、誰一人まともに動くことができなくなる。

 ゆっくりとマチュアが前に進むたび、人混みが二つに割れて道ができる。

 その正面に、堂々と立っているバルボアの姿があった。


「へぇ。あれをまともに受けて身動き一つしないとはねぇ。悪いけど、あんたとサシで話しがしたい。ファミリーの奴らはここから出ていってくれないか?」

 その声が届く範囲で、広場から逃げていく。

 一人が逃げると二人、三人と逃走し、この広場にはバルボア一人になっていた。


──ザッ

 それに合わせて騎士団が動こうとするのを、マチュアは右手を横に伸ばして制する。

「サシで話って言ったよね?」

 ザジッ

 すぐさま騎士団も止まり、マチュアの動向を見ている。

 ス〜ッと息を吸って、マチュアは目の前のバルボアを見る。


──ピッ

『ガイル・バルボア:32歳男、半魔族、ツノオレ、冒険者レベル10、状態:気絶』


(へぇ、ツノオレなのに堂々と頭を出しているのか。ツノは残っていたのを自分で根元から切断したのか……)


 マジマジとバルボアを見る。


(それに半魔族の10レベルは人間の50。騎士団が勝てないはずだよ……おや?)


 目をこすってもう一度見る。


『状態:気絶』


 あ、なんか堂々としていると思ったら、目を開けたまま気絶している。


「ふう。覚醒……と、バルボア、私がわかるか?」

 ハッ、と意識を取り戻したバルボアは、いつのまにか目の前に現れた悪魔マチュアを見て恐怖する。

「あ、ま、まさか……悪魔ルナティクスさま」

「あ、その名前くるか。私は悪魔マチュア、ルナティクスの肉体を得た悪魔だよ」

 すると、バルボアは慌てて周りを見る。

 すでに周囲には誰もおらず、その場にはバルボアとマチュア、その奥に騎士団が待機しているだけである。


「悪魔に国を売ったのか……ヒュペリコーン王家……」

 膝から崩れ落ち、拳を握って地面を殴る。

 その光景をながめながら、マチュアは一言。

「私は大地母神ガイアに命じられて、ヒト族を助けるのにやってきた悪魔だよ」


──スッ

 右手を差し出し、砕けそうになっている拳を癒す。

 その光景に、バルボアも目を丸くする。

「これは、ガイアの癒し……」

 みるみるうちに怪我か治っていく。

「まあね。あんたがどこの大陸から来て、どうしてツノオレになったのかなんて知らない。けど、ここは人間の国、ここはヒュペリコーン王家の統治する国。まずは話し合いから始めて良いんじゃない?」

「しかし……」

 バルボアも下を向いて考え込む。

 こうなればマチュアの勝ち。

「グリジット、武力抗争はおしまい。ここからは話し合いだ。お互い対等に話し合って欲しい」

 そのマチュアの決定に異を唱えるものはいない。

 騎士団の前に出たグリジットが、真っ直ぐにマチュアの元に歩いてくる。


「神聖アスタ公国元老院のグリジットです。悪魔マチュアの命により、ここからは話し合いとしましょう。同じ人間です、より良い答えを導き出しましょう」


──スッ

 差し出されたグリジットの手を掴むバルボア。

 そして軽く握ると、後ろを振り返る。

「場所と日時は後で教えてくれ。こっちも代表を出して話し合いに応じる」

 そう話してから、バルボアは広場を後にする。

 そして騎士団も退去準備を始めると、グリジットたちもティタンを後にした。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 神聖アスタ公国・ファストミリオン。

 ララック、ティタンに続く最後の都市で、結界から徒歩で一刻の場所にある危険地域。

 ティタンを後にしたマチュアは、ファストミリオンがどんな街なのか興味を持った。

 先の二つは独自で修復も行なっており、整備するのにはそれほど面倒でない。

 だか、もっとも必要な魔族との窓口となる都市となると、他の二つ以上に重要な都市となる。


 のんびりと箒で飛んでいくと、やがて修繕された城門が見えてくる。

「いきなり悪魔だと、また災いの種になるか」

 すぐさまツノオレに換装し、箒もしまって歩いていく。

 すると、しっかりと修復された城門が目の前に現れた。

 城門の上からは、ヘルメットや帽子、頭にターバンを巻いたような半魔族が大勢立っており、マチュアを上から見下ろしていた。

「貴様は半魔族か、今、門を開けるから待っててください」


──ギリギリギリギリ

 ゆっくりと城門が開くと、マチュアの目の前には普通の都市の姿が広がった。

「ふぁ?どうゆう事?」

 キョロキョロを周りを見渡しながら中に入る。

 すると、城門は再び閉じられた。


──ガッコーン

 やがて、街のあちこちから城門前に人が来る。

 よく見ると、ヒト族の姿もあちこちにある。

 その中でも、年長のヒト族の女性がマチュアの前に来る。

「ようこそ、半魔族の国ミッドガルへ」


 え?

 ええ?

 えええ?


 あまりの事に、マチュアも動揺する。

「あれ?ここ結界の中だよね?」

 思わず問いかけると、目の前の女性や周囲の半魔族も頷いている。

「その話し方ですと、あなたは結界内の集落の生き残りでしたか。ご安心を、この都市まで来られたのならもう大丈夫ですよ」

「は?はぁ……皆さんは結界の外から来たの?」

 そう問いかけると、あちこちから肯定や否定の声がする。

「うちのかあさんは、外から来たのですよ」

「私はこの中で生まれました」

 あちこちから聞いた話を察すると、半魔族はこの結界を超えられるらしい。


「あ〜、あの結界って、半魔族は超えられるのか」

「ええ。ですが、魔族の血が痛みを与えます。それに耐えられず、超えるのを断念するものもいました。ここにいるものは、痛みを超えてやって来たものと、その子孫です」

「へぇ……あ、初めして、私はマチュアと言います」

 ペコッと頭を下げると、目の前の女性もゆっくりと頭を下げる。

「この都市の代表を務めていますイザベラ・マスケットと申します」

 これはこれは丁寧に。

 マスケットさんですか。

 ん?


「あの、マスケットと言いますと、ひょっとしてあなたの旦那はオークですか?」

「ええ。ここ数年は身体を患ってしまい、家から出ることもできません。夫をご存知でしたか」

 えーっと。

 街で噂になっている、フェザーの兄さんがヒト族の女を云々は、単なる噂ではないのか。

 その理屈を考えると、この目の前の女性がマチュアの母親で、その夫がとーちゃんなのか。


「いやいや、ちょっと待ってくださいよ、今、整合性考えますから」

 などと訳のわからないことを呟く。

 これには、その場の全員がキョトンとしている。

「まあ、ちょっとお願いしたいのですが、あなたの旦那さんに合わせてもらえますか?フェザーの娘が来たって話せばわかっていただけるかと」

 突然フェザーの名前を出すと、イザベラは両手を合わせて大喜び。

「フェザーさんの娘さんでしたか。ではこちらへどうぞ、夫からフェザーさんの話はよく伺っていました」

 な。

 なんだこの反応は。

 流石のマチュアもタジタジである。

 そのままイザベラに連れられて、マチュアはイザベラの家まで案内された。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 そこそこに大きな屋敷。

 必要最低限の修繕はされているらしく、内部は綺麗に掃除されている。

 マチュアはイザベラに案内されてそこにやって来ると、すぐさま応接間に案内された。

「今、主人を呼んできますので」

 そう話してからパタパタと何処かへ走っていくと、少しして痩せ細ったオークが部屋に入ってきた。

「貴方がフェザーの娘ですか。はじめまして、フェザーの兄、ウィンドです。兄は元気ですか?」

 その言葉には、マチュアも腕を組む。

 フェザーの身内なら、自分の正体を明かしてしまったほうがいいのか?

 どうするか考えていると。


「やはり、フェザーに何かあったのですね」

「え?ど、どうしてですか?」

 素っ頓狂な声で問い返すマチュア。

「ははぁ。フェザーは娘にも話しはしていなかったのか。この城塞の修繕には、フェザーの経営するマスケット商会の助力もあったのですよ」

「……はぁ?」

 思わず頭を捻って問い返す。

 すると、ウィンドはゆっくりと話を始めた。


 今から結構前。

 マスケット商会はフェザーとウィンドの二人が経営していた。

 ある日、ウィンドは家畜市場で売られていたヒト族の奴隷・イザベラを見初めて、高額で買い取った。

 最初は奴隷として扱われていたイザベラだが、徐々に普通のオークとして接してもらえるようになり、やがてウィンドに好意を持ってしまった。

 だが、たまたまイザベラを見かけたらしい貴族が、ウィンドにイザベラを売れと話を持ちかけたらしい。

 当然ウィンドは断ったのだが、貴族は卑怯な手を使ってイザベラを攫ったらしい。

  それに腹を立てたウィンドが貴族の屋敷まで押しかけ、その貴族を殺害してイザベラを連れ去った。

 当然ながら貴族殺害は重罪だが、ウィンドはマスケット商会に罪が及ばないように予め商人ギルドを脱退し、二人で逃亡した。


 だか、幸せな逃亡生活など続くこともなく、ついにはワルプルギスからの追っ手により、この外の結界まで追いやられてしまった。

 残る手段は、この結界を超えること。

 ウィンドは商会の宝であった結界中和のタリスマンでこれを超えると、この地で生活することになった。


 これ以後、兄の身を案じたフェザーは定期的にこの結界の外に物資を乗せた馬車でやってくると、結界の外にそれを置いてあったらしい。

 それは30の日ごとにやって来たのだが、ここしばらくはそれも無くなり、フェザーの身に何かあったのかと心配していたらしい。


──ブワッ‼︎

 話を聞いているうちに、マチュアの涙腺が崩壊した。

 もう、どうしていいかわからない。

「あの親父……くっそぅ」

 さめざめと泣くマチュア。

 そしてようやく泣き止むと、マチュアは頭を下げる。

「どうしました?」

「ごめん、今からすることを黙って見てて‼︎」

 そう考えると、マチュアは念話でフェザーに話しかける。


『フェザー、二階のいつも使っている部屋まで来い‼︎中から鍵もかけろ』

『うわ、これはマチュアさま……了解しました』


 少しだけ待って、マチュアは立ち上がって掌を部屋の真ん中に向ける。

「ど、どうしました」


──キィィィィィィン

 ゆっくりとゲートを接続すると、そこには二階の商談室の中で立っているフェザーの姿があった。


「おや、マチュアさま、これは一体……ん?」

 マチュアの後ろの人影を見て、フェザーは慌てて走り出す。

 ゲートを越えてウィンドの前にしゃがみ込むと、フェザーは泣きながら話しをはじめた。


「良かった……暫く荷物を送れなかったので心配だったんだ。兄貴が無事でよかった……」

「フェザー、お前こそ立派になったな。こんなに素晴らしい娘まで……」

 感無量のウィンドが、マチュアを見てからそう話す。

「へ……」

 すぐにマチュアの方を見ると、マチュアはコクコクと頷いた。


「そうか。兄貴、マチュアは俺の娘ではない。今はマスケット商会はマチュアに譲って、カナン商会になったんだ」


──プッ

「そっちかーい。私はさっきの話でいいよって頭を下げたのにバラすのかよ」

「え?そうなのですか?」

 フェザーに腹芸は通用していない。

 このやり取りをしばらく見ていたウィンドとイザベラが、マチュアとフェザーに話しかけた。

「何か理由があるのか。フェザー、俺でよかったら力になるが……」

 そう話すと、ウィンドは椅子に座る。

 ゴホゴホと咳をすると、それに血が混ざっている。

「まだ無理しちゃダメだ。マチュア様、何とかなりませんか」

 今までになく真剣なフェザー。

 臣下の頼みは断る必要がない。


──スッ

 マチュアはウィンドの体に掌を向けると、ゆっくりと魔法を発動する。

「完全治療……」

 すると、ウィンドの全身が淡く輝き、体内の病巣が全て消滅する。


「まだ無理はしないで。栄養のあるものを食べていたら体力は戻るから。フェザー、これは貸しだか……」

 そこまで話して、マチュアは会話をやめた。

 ウィンドとフェザー、イザベラが手を取り合って喜んでいるから。


………

……


「ハイオーク……まさかフェザーが進化したとはな」

 自分のように嬉しそうなウィンド。

 一段落してテーブルの上には簡素ながらティーセットも運ばれてきた。

「しかし、マチュア様はどうしてここに?」

 フェザーが問いかけたので、マチュアはトンテキ、いや端的に話をする。


「ヒト族と魔族の交易の件だよ。ヒト族の候補地がここの都市なんだ。その偵察で来たんだけど、どうすっかなぁ」

 腕を組んで考えるマチュアと、今の話に驚くウィンド。

「それはどういう事ですか?詳しく聞かせて欲しいのですが」

 ならばと、マチュアはこれまでの話を説明する。


 ヒト族にマチュアがやって来たこと

 文明復興の手伝いをしたこと

 その中で始まった、ヒト族と魔族の共存の話。

 その最初の手がかりとして、三王とマチュアが話をつけて、ヒト族の都市に交易に来るようにすること。


 全てを話してから、マチュアはツノオレから悪魔に変化する。

「あ、悪魔ルナティクス様……マチュア様がそうだとは、お許しを……」

「どうかご慈悲を……」


 ウィンドとイザベラが身動き取れなくなったので、慌てて帽子をかぶりツノオレに換装する。

「いやいや。身内を手にかけることはしないし、フェザーの思わぬ一面を見だからいいよ。あのフェザーがねぇ」

「そ、そんな昔の事は……お許しください」

「あと、ツノオレの姿の時は普通の半魔族として接してください。何処から正体がバレるか心配でね……」

 その話には、ウィンドとイザベラもコクリと頷く。

「わかりました。では、ツノオレの時は、ふつうにフェザーの娘として接しますよ」

「あ、兄貴、その事なんだが……」

 汗を拭いながら、フェザーが今のマチュアの立場を説明した。


 フェザーの兄のウィンドがイザベラとの間に設けた子、その後、奴隷商人にさらわれてツノオレにされた所をフェザーが救って養子にして、カナン商会として全権を譲ったと。


 この話には、街の人々の噂も混ざったらしいが、ついフェザーがそうですと話してしまったらしい。

「つまりはあれか?俺がイザベラ以外の女性をはべらせていると……」


──ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 あらウィンドまじ怒りモード。

「最初にその噂を流したのは、あの貴族の息子、ライオネルだ。に、にいちゃん、俺は悪くない‼︎」

「ならば、なぜ否定しなかったぁぁぁ‼︎」


──ドゴォォォォォッ

 全力のアッパーカット。

 これにはフェザーも吹っ飛んでいく。


「うわ、ハイオークを一撃で。うちの配下に欲しいわ」

「マ、マチュア様ご慈悲を。これで兄貴も配下になったら、私の立場が……」

 マチュアの足元で懇願するフェザー。

「しないしない。だって、この後はウィンドにも頑張ってもらわないとならないから」

 そう告げると、ウィンドは椅子に座って腕を組む。

「ヒト族にこの街を明け渡すのか……ようやく手に入れた安住の地を明け渡すことになるとは」

「それは早急。このままの状態で、ウィンドがこの都市の領主となり、国に忠誠を誓ってくれると話しは早いんだけど……駄目?」

 少しだけ考えて。

 ウィンドの結論は一つ


「この国の女王や元老院と謁見したい。その場で、我々の立場を表明する、あとは交渉したい」

 あ、建設的。

 思ったよりも話が早い。

「なら、一旦国の方に向かいますか。フェザーは帰っていいよ、あとはこっちでやるから」

「私は単独で帰れませんよ」


──ドッ‼︎

 全員が笑う。

 そしてマチュアはゲートを作ってフェザーを返すと、今度はアスタードの酒場の裏の建物にゲートを繋ぎ、ウィンドとイザベラを連れて行くことにした。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 前回のようにアマルテアとグリジットの元に使いを送ると、マチュアとウィンド、イザベラはテーブルについて座っている。

 やがて、アマルテアとグリジットが店内に入ると、マチュアは鍵をかけて部屋を明るくする。


 その場にオークと人間が座っている。

 これには元老院の二人も驚いたが、隷属の首輪をつけていないのでひとまずは安心したらしい。

「二人に紹介するよ、ミッドガルを収めているウィンド夫妻だ。こちらは元老院代表のアマルテアとグリジット」

 その紹介に、ウィンド夫妻は深々と頭を下げる。

 そしてアマルテアたちも頭を下げて、今日はテーブルについての話し合いとなる。


「悪魔マチュア様、ミッドガルとはどこの都市で?」

 初めて聞く名前の都市。

 それがどこか知り合いらしい。

「ララックからティタンを通って結界に向かう。そこの最終地点だよ」

 するとアマルテアも分かったらしい。

「ほほう、交易都市ファストミリオンの事でしたか。と言うことは、そこがミッドガルとなって魔族が占拠していると」

 そう問いかけると、ウィンドが話し始める。

「誤解なきように話します。住んでいる魔族は俺一人、あとはヒト族の女性と半魔族です」

「そのヒト族全てを孕ませて、ハーレムでも作っているのか」

 グリジットが問いかけるが、ウィンドはやれやれと言う顔で聞き流す。

「私の妻はイザベラのみ。他のヒト族は逃げてきたり、孕んだので捨てられた女性たちです。私の都市は、そのような方々を受け入れているだけです」

 この穏やかな物言いには、グリジットも頭を下げる。

 マチュアには、グリジットがウィンドを試しているのだと分かったから何も言わない。

 そしてウィンドも、腹を立てることなく冷静に返答していた。


「事情を知らずに無礼なことを話して申し訳ない。深く謝罪する」

「構いませんよ。オーク一人にヒト族女性が大勢と聞くと、そう考えるのも無理はありません」

 そう互いに話をするので、空気が穏やかになる。


「さて、問題はミッドガルの立場ですな。一度街道を整備してから視察に向かい、都市の整備状況を確認しましょう。その結果としては、ウィンド殿にミッドガルを任せるのもアリかと」

 突然のアマルテアの言葉には、グリジットも驚いている。

「そ、それは……いや、それでも良いのか」

「マチュア様。実はですね、王国領内のある都市から先日使者が参りまして。そこも結界に近い都市でして、グランドリ一家の交易ラインの一つなのですが。ケンタウロスの集落なのですよ」

 ふぁ。

 なんだそれ?

「へぇ。それでなんと?」

「王国に保護を求めてきました。どうやらグランドリから話を聞いたらしく、都市は開放するしヒトの決めた法も守る、だから国の民として認めて欲しいと」

「またセシリアの好きそうな話だなぁ。二つ返事だろ?」

「いえ。細かい決まり事を元老院と彼らの代表で取り決め、そこから話し合いをすると。まあ、人と魔族の共存の一つとなれるのならとセシリア女王も喜んでいました」

 まあ、今回の半魔族の街も、それと同じ状態か。

 それなら良いのかな?


「ん、なら、このあとは元老院に任せるわ。ウィンドもそれで良い?」

「我々は、今の平和が続くのなら構いません」

 ウィンドも頭を縦に振る。

 なら、これ以上マチュアの絡む余地はない。

「さて、そんじゃあミッドガルに帰りますか。細かい話は任せたから」


──ブゥゥゥン

 ゲートを開いてウィンドの家に繋げると、二人はアマルテア達と握手して帰っていった。

 そしてゲートを閉じると、アマルテアとグリジットも帰って行く。


 あとは、細かい調整を行なって、いよいよ交易を開始するだけである。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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