「立場」・・・・
「立場」・・・・
第4章・・・
ピーンポンー
ピーンポンー
「はぁ〜い」
玄関にいってみると
ガッチャ、ドアが開いて(夫)泰明が帰ってきた。
「え!今日は早かったのね、どうしたの?。」
「うん、仕事が珍しく早めに終わって飲みに行く予定もなかったから
それに、たまには、由美の顔を見ないと、嫌われそうだしな!」
そういって、由美の元にむかった。
夫は大手の企業に勤務して、かれこれ7年になる。
毎晩朝早くから、夜遅くまで仕事が終れば接待だの、なんだの
週に2、3回出張がある。
だから、家族過ごすのは、めったに出来ない。
私と泰明は同じ職場の営業部に勤務してた。
そこで、知り合い付き合いを重ねて、そのまま
職場結婚することに、なった。
私は、寿退職して、結婚2年目に由美が生まれた。
夫は、仕事がらのせいか、何でも几帳面じゃあないと気がすまない。
子煩悩ではあるが、今ひとつ女性に対しては無頓着である。
私のことも、一人の女性ではなく、お母さんだとしか思って、いないみたいだ。
名前を呼ぶときも、小百合ではなく、ママとよんでいる。
仕方がないだろうけど、せめて2人で、いる時ぐらいは、名前で呼んでほしいもんだ。
私は台所に戻りご飯を用意してた。
トントントン・・・
ジュ〜・・・
「ご飯できたよ。」
そう、いいながら居間に運んで、テーブルに並べていると2人の会話が耳に入ってきた。
「由美はちゃんと、おりこうさんにしていたかな?」
「うん!」
「今日はママとデパートに買い物いって、象さんの乗り物に乗って遊んだの。」
「へぇ〜ママと買い物かぁ〜良かったね。」
そんな、たわいもない会話をはなしてる。
「さぁ〜おしゃべりはそのくらいで、ご飯しましょう。さめちゃうでしょう。」
食事中は3人で会話をしながら、すごしていた。
それから。こうで・・ああ〜で・・・と話が弾んでいた時だった。
由美がいきなり、祐二さんの話をし始めだ。
「今日象さん乗って遊んでた時ね、ママ知らない、おじちゃんとお話ししてたんだよ。」
私はドッキっとした。悪いことはしてないのに、なにかやましい気持ちになっていた。
夫は由美に問いかけた後、案の定、私にきいてきた。
「知らないおじちゃんと、はなしてたの?」
「うん!」由美はニコニコしながら、答えてる。
「ママ、誰知り合い?」っと聞いてきたので、経緯をはなした。
「いいえ〜まったく知らない人よ、」
「私がハンカチを落としてして、わざわざ、届けにきてくれたから
お礼のつもりで、飲み物かって、話してただけよ。」
「ハンカチ?」
「ほら〜薔薇の刺繍が入ったハンカチよ!」
「ああ〜ママがお気に入りのかぁ」
「うん、そのハンカチよ。」
それで、ああ〜だの、こうだのはなすと、
夫は・・・
「ふ〜そっか」その一言だけだった。
「さぁ〜ご飯も食べ終わったし片ずけしないとね。」
そう、いって洗い物を台所にもっていき水道の蛇口を、ひねった。
ジャァ〜・・・・
祐二さんがハンカチを持って帰ったことなど、話してはなかった。
お皿を洗いながら、祐二さんことを思いだしていた。
「小百合さんって、可愛いい人ですね、又小百合さんに会えるから・・・」
笑顔一杯で、答えてくれた祐二さん・・・
私は、そんな彼の言葉を思いだしながら、頬が赤くなっていってるのが分かっていた。
一通り洗い物を済ませ、居間に戻るとソファーで、由美が寝てしまってた。
子供をベットに寝かせソファーで、くつろいでる夫の側にすわった。
すると、私の顔を見るなり、こんな言葉が泰明の口からどびだした。
「ママ、どうしたの顔が赤いけど?」
「え!そう?」
「そんなに、驚かなくても、どうかした?」
「いやぁ〜なんでもないよ。」
さずがに祐二さんのこと思い出して顔が赤くなったなんて、ことは言えない。
相変わらずママと呼んでるし。
「もし私が浮気でもしたら、この人焼きもちやくのかな?」
「ねぇ〜パパ・・・」
「うん、何・・・」
「もし私が他に好きな人できたら、パパだったら、どうする焼きもち妬く?」
そんな話をしてみた。
「いゃぁ〜妬かないよ。」
「え!何で?」
「だってママは、独身女性じゃぁあるまいし、一人母親だし、家庭もあるし
そんな、夢みたいな寝言いってどうするの、他の異性に恋?
馬鹿ことだし、しないでしょう」
そう、夫はこたえた。
私は、なぜが悲しくなった。
結婚したら、誰かに恋をするなんて、馬鹿なこと?
じゃぁ。家庭に入ったら私は、ご飯つくって、子供や夫の面倒だけみてればいいってこと?
母親や妻になったら、恋は・・・
恋愛はしたら、いけないってこと?
「じゃぁ〜泰明は私のこと、どう思ってるの?」
「どうって・・・」
「それは、お母さんでしょう。」
「由美のお母さんではあるけど、僕のお母さんでもあるよ。」
「一人の女性としては、思ってないの?」そう聞いてみると
「それは、そうだよ、何馬鹿なこと聞いてるんだよ、どうかしてるよ。」
やっぱり、この人は私のこと、そんな風にしか見てなかった。
私は、やはり、ママだんだよな、なんだか、涙が出そうになっていたので、
洗面台に行き鏡に写る自分の姿をみていた。