野望
副隊長「冒険者達が通った後だけあって獣もおらんか」
森へ向かう商隊一行と護衛する聖騎士中隊
野営地から森までは馬で西へ一日ほどの距離
騎兵もいれば馬車に徒の者もいる このままのペースで行けば二日もあれば着くだろう。
あまりにも順調過ぎる此度の遠征後について副隊長は思案する。
伐採第一陣が成功すれば野営地は砦へと改造され森への資源採取の最前線基地となるはず。
そして砦は商隊と兵により賑わい莫大な富をもたらすだろう此度の遠征第一功は無論我らが隊長様だ。
第二功は?それはこの第一陣を預かる私だろう。
砦司令官の席と聖騎士長どちらが重みがあるか?
名誉は同等だろう但し利益は?断然司令官だ。
恐らく隊長は司令官の席を領主へ望むだろうそして空いた聖騎士長は私だろう。
副隊長「悪くない」
だが突然ハプニングで隊長が死んだらどうなる?
商隊も領主も一度の失敗で諦めるわけがない。
その後を私が全体を引き継ぎ無事に商隊をケルンへ帰還させれば。。。
思わず口元が弛み端が上がる。
副隊長「何が何でも成功させるぞ」騎士「ハッ!」
。。。。。。野営地
今回の遠征に動員された戦力は300名の騎士に600名の民兵更にはケルン所属と王国各地から集められた冒険者100名と数十の商隊からの大所帯だ。
その大所帯を養う為に幾つもの輜重隊が都市から野営地を往復する 関わる人間の数は数千に昇り。
人口五万人の都市から抽出した戦力にしては大規模遠征となる。
遠征司令官兼聖騎士長
一地方都市で此だけの遠征はまず有り得ない。
滅亡の掛かった総力戦ならばあり得るが指揮は領主が執るだろう。
野営地内ですれ違う者達が皆敬服し自分より地位の高い者が居ない。
こんな状況は今まで一度もなかった。
聖騎士長になるまで身体を鍛え剣槍弓の鍛練をし学問に励み必死にマナーを学び上役に媚び同僚を蹴落とす人生。
漸く報われた。
指を鳴らし従者に酒を注がせる。
今頃は私の命令で冒険者や聖騎士100に民兵300が森で作業をしていることだろう。
更には南には草原が発見されたと報告があり植民も望めるかも知れない。
伝令「失礼します副隊長から夜営地を確保し明日の昼には森につくとの事です」
聖騎士長「うむ下がって休め」
伝令「ハッ」
用件だけ伝えた伝令の後ろ姿を眺めながら一人聖騎士長はグラスを傾け想いに耽る。
聖騎士長「ご苦労なことだ精々私の為に。。。」