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第31話



リュカの案内のもと、地下室に向かった実彩とクリストファーの三人は目的地までの道中で予想外の事態に見まわれていた。



「………なぁ。コレってさ、どういうこと?」


「……僕に聞かれましても……リュカ殿に聞いてください………………」


「……………………すみません」



地下室への通路の壁には、至るところに絵画が飾られていた。

それだけならば特に可笑しなことではないがその描かれている内容に実彩はドン引きしている。いや、クリストファーもよく見れば引いている。


壁に飾られていたのは現当主であるロイドの肖像画であった。………別に、問題はないように思われる。それだけならば。



「いやだってさ。この数は流石に異様なんだけど。何、この天井から床まで届くほどの特大肖像画の山。指一本分しか絵画同士の隙間なくない?」



ロイドの肖像画の山。山。山。

色々な角度と表情と場面でで描かれている肖像画には一つの共通点があった。



「………しかもこれ、全部視線がこちら側に向いてて、見られているみたいで微妙に怖いんだけど。………うっわ。これなんて鏡越しでこっちを見ているみたいに描かれてる。げっ、目が合っちゃったよ怖っ」



冗談抜きで本当に怖い。想像してみて欲しい、地下室に続く地下道に入った瞬間に現れる肖像画の山を。これが歴代(それでも地下にある時点で可笑しいが)の肖像画だったらまだ理解出来るがたった一人の人物、それも乗馬の最中や湖などといった外の風景から書室や食事風景、身嗜みの最中、仕事中、さらには寝し………止めよう。



「精神を病みそうな場所だな此処は。………リュカ、ちなみにお前は知ってた肖像画コレ?」


「いえ……。私も初めて知りました。地下は、以前父上がまだ屋敷にいらしたときに緊急時の避難経路を教えていただいた時以来です。…………その時には、この様なものはなかったはずのですが……」


「そうか……」


「……ロイド殿、お帰りになられたらさぞ驚かれるでしょうね……」



以前にはなかったというリュカの言葉に視線が遠くなる実彩とクリストファー。リュカ自身の目も死んでいる。



犯人は推して知るべし。



ローゼとジェイルとの決戦前に精神的にダメージを負った三人はその後、出来るだけ周りを見ないように通路を進むのであった。そしてついにローゼとジェイルが居ると思われる地下室の前まで来た。



「……ここが、そうか?」


「はい。この部屋で間違いないと思います」


「何故ここだと分かるのですか? リュカ殿」


「それはその…………。この部屋以外の部屋は、どうやら絵で塞がれているみたいなので…………」


「「………………」」



気まずげに視線を逸らすリュカに同情と憐れみの眼差しが突き刺さる。

実彩の脳裏に一瞬、絵はブラフでローゼ達は絵で入れないと思われている部屋に居るのではと思ったがすぐさま首を軽く振ってその可能性を否定した。


……絵は完全に壁にめり込んでいたし、それは無いだろう。むしろ無くていい。無しの方向で。あってくれるな……!!



「………とりあえず、部屋に乗り込むぞ」



実彩はニトを取り出しす。クリストファーも触媒である腕輪に触れて何時でも魔法を撃てるようにしている。リュカは魔力が目覚めたばかりで制御どころか魔法自体使えないことを考慮して背後に下がらせた。



バァアン!!



実彩が先頭を切り扉を開け放した!


実彩が牽制攻撃を仕掛けようとニトを構えたが、部屋の中の様子を見た瞬間絶句した。



パタン。



実彩は無言で扉を閉めた。

扉の向こうからローゼの金切り声が響いている。

ローゼ達は確かにいた。むしろ部屋の中のローゼに至っては目があった。

クリストファーが何しているんですか!? という非難の声を上げている。リュカも驚いてええっ!!と言っているが実彩はそれどころではない。



「せっかくの不意打ちを! 何をやっているんですかっ。どいてください!! 僕が行きます!」


「………あぁ、逝ってこい。クリストファー…………骨は拾ってやる」


「ミーシャさん……!? どうしたんですか!!」



クリストファーが再び扉を開け放つ。

そして部屋の中を見たクリストファーはそのまま硬直した。いきなり立ち止まったクリストファーを訝しんだリュカも部屋の中を覗いて、絶句。



嗚呼……。やっぱり見間違いじゃなかったんだ────。



ローゼとジェイルが隠れていた地下室には部屋の至るところにロイドの大小の肖像画が天井にまで貼られている。ロイドを象ったと思われる人形各種に、何故か瓶詰め額縁に入っている食べかけの食べ物やハンカチやシーツといったもの。男性用の服。下着。靴下。帽子。細かくラベルの貼られた食器類。万年筆。一部の壁にはたくさんの手紙と思わしき紙。分厚い手製の本が本棚の中に並んでいる。

ちなみにタイトルは、


『ロイド様がお食べになった物集』『ロイド様のお好きな食べ物集』『ロイド様のお嫌いな食べ物集』『ロイド様のお仕事集』『ロイド様のお好きな私服集』『ロイド様のお嫌いな私服集』『ロイド様の散策集』『ロイド様がわたくしに掛けてくれたお言葉集』『ロイド様の就寝時間集』『ロイド様の起床時間集』『ロイド様のご友人集』『ロイド様のご親戚集』『ロイド様の身長・体重集』……Excel。



どこもかしこもロイド、ロイド、ロイド尽くしの部屋に実彩もクリストファーもリュカも全員が戦慄した。



「何なのよ! あんた達!! わたくしとロイド様の愛の記録室に無断で立ちはいるなんて!! この、無礼者っ!!!」



ローゼの怒声に誰も反応しなかった。


『愛の記録室』? むしろ『ロイドを観察・記録室』の間違いだろ。見ろ、予想外の上に気色悪すぎる部屋を直視したせいで生きた石像と化した二人を。



「なによなのよ! 何なのよあんた達!!」



無視されて地団駄を踏んでいるローゼ。

執事のジェイルは部屋の隅で静かに佇んでいる。

冷静にこちらの様子を窺っているのを見て、実彩もジェイルを静かに窺っていたが、生憎とローゼがそれを許さなかった。



「答えなさいよ! わたくしはバズーラ家当主の正妻よ!! そのわたくしの言葉を無視するだなんて不敬以外の何物でもないわ!」


「……正妻じゃなくて第二夫人だろ。そしてその前に罪人だ。んで、お前の愛しのロイド・プファルツ・バズーラはテメェの息子の鍋………コホン。マロリーの犯した罪により今ごろ王都で王城での立場どころか貴族としての地位も追われているだろうよ」


「何ですって!? ロイド様が!! ……いえ、嘘をおっしゃい! あんたのようなならず者の言葉だなんて信じられ「じゃあさ、同じ貴族の言葉なら信用出来るだろ?」………同じ、貴族ですって?」



すかさず実彩は扉の前で未だに硬直しているクリストファーの脳天に手刀を入れる。



「いっっったぁ……」


「気持ちは分かるがいい加減正気に戻れ。ほら。第二夫人・・・・にロイド様と鍋の具モドキの現状を説明してやれよ。同じ貴族の言葉じゃないと信じられねぇてさ」



クリストファーを前に出して自分は後ろに下がった。リュカは扉の裏側にいたらしい。角度からみて、恐らくローゼとジェイルにはリュカの存在は気付かれてないだろう。ちなみにリュカにも手刀を叩き込む。お前も正気に戻れ。



「……初めましてバズーラ家第二夫人ローゼ様。僕はリメスを治めるレタック家が子息、クリストファー・バーグレイツ・レタックです」



クリストファーの名乗りにローゼが息を飲んだのが分かった。リュカも驚いた顔をしてクリストファーを見詰めてた。………そういえば、言ってなかったけ? ────だが、第二夫人ローゼに仕えるジェイルはクリストファーの登場に驚くどころか愉快そうに笑っているだけだ。



「今回、第二夫人のご子息であるマロリーの犯した罪は『魔獣の魔物化』という各国各ギルドが禁じている大陸全土の禁術。……我が国はマロリーの行った禁術に対する弁明と釈明に奔走しています。マロリーは父が治めるリメスにて禁術を行いました。これは当時、事に当たった王宮派遣騎士団団長アレン殿とその配下、そしてリメスを治める一族の者として僕もいました。僕達は直接マロリーから犯行の供述と悪意ある攻撃を受けたので間違いありません」



ローゼは唇を震わせて何か喋ろうとしているがマロリーの犯行を王宮派遣騎士団と同じ貴族であるクリストファーが証人であると知って言葉が出ないようだ。



「………僕がこのスカイに、この地を治める貴女方に知らせず訪れたのは父からバズーラ家に流れる噂の真相を見極めるように言われてきたからです」


「…………」



ローゼの顔色が真っ青になった。

彼女もバズーラ家に対する噂が何か分かっているのだろう。王都──いや、王城に流れるあまりに不名誉な噂を。



「正妻であるソニア様のご子息と、ローゼ様。貴女のご子息が入れ替わっているという、王城で流れている噂です」



クリストファーはきっぱりと言った。

実彩は後ろにいるリュカを密かに窺った。リュカは手を握り締め、何かを耐えるように身体を震わせている。



「僕はここにいる冒険者であるミーシャさんと共にスカイを訪れました。…………驚きましたよ。僕の母がまだ存命のおりに訪れたスカイの、あまりに変わり果てた惨状を。あの、スカイにのみ存在する白黎樹の咲き誇る美しかった街が今では荒れ果て、粗暴者が溢れかえった街に変わっている。僕はミーシャさんとスカイを調べました。その途中、僕達は冒険者もしくは傭兵と思わしき者達に追われているリュカ殿と出会いました」



リュカの名前にローゼの顔色はますます悪くなる。恐らくリュカを自分が差し向けた刺客から守っていたのが実彩達だと気づいたからだろ。全ての罪をリュカに背負わせるつもりが、その宛てが外れかけている。



「僕は定期的にマジックアイテムを使って父に連絡を取っていました。父の手によりこのスカイの現状が王城にも知らされているはずです」



ローゼは気付いているのだろうか? クリストファーがマロリーを第二夫人の子息と言い切っていることを。



「そして僕達は当初の目的である噂の真相についても調べ終わりました。───あの噂が事実だったということを」


「……ま、マロリーは今は亡き正妻のソニアが産んだ子よ! わたくしの子どもはあの出来損ないのリュカよ!!」


「言ったはずです、調べはついていると。僕達は貴女・・が殺したソニア様が亡くなる直前まで書かれていた日記帳を見つけだしました。そこにはリュカ殿がソニア様の実子と証明出来るある記述が記されていた為、僕はレタック家の次期当主としてリュカ殿をソニア様のご子息と断定します。王城の方々もそのように動かれるでしょう」


「嘘よ……。嘘よ嘘よ嘘よ! そんな物、残っているはずがないわ!! あの時、わたくしは確かに証明出来る物は全て消して……」


「はい、ダウト。自供が取れたな」



実彩の嘲笑した声がローゼの耳に突き刺さる。クリストファーの揺さぶりに見事に引っかかったローゼはハッと口を閉じたがすぐにクリストファーをキッと睨みつけた。



「騙したわね!!」


「クリストファーはテメェを騙してなんかねぇよ。今言ったことは全部本当のことだ」



リュカに『妖精の悪戯』がなかったこと以外は。しかしそんな事をローゼとジェイルにバカ正直に教えるつもりはない。


ローゼは屈辱と秘密がバレた恐怖に震えていたのだが、何故か今度は急に笑い出した。



「あっははは!! そうよ、リュカは……あの出来損ないは忌々しいソニアの息子! でも残念ねぇ……。あの出来損ないは今頃、自分の魔力に内から灼かれて跡形もなくこの世から消え去っているわよ!! アレが居なければ、わたくしのマロリーだけがロイド様の唯一の子ども!! わたくしの血を引くあの子だけが「私ならここに居ますよ、母上……いいえ。ローゼ様!」」



リュカが死角になっていた扉の裏側から出てきた。



「り、リュカ……? あんた何で。それにその髪と瞳の色は!?」


「………この髪と瞳に関しては私にも分かりません。でも、魔力の爆発を起こした私はこちらにいるミーシャさんによって助けられました。ミーシャさんがいなかったら、私はきっと自分の暴走した魔力によって死んでいたでしょう。───貴女方の思惑通りに」



真っ直ぐ睨みつけるリュカにローゼの顔色は真っ青どころか白くなっている。ジェイルもリュカが生きていることには驚いたのだろう。髪と瞳の色が最弱の証である色から世界で最高峰の白金に変わっていることも更に拍車をかけている。



「諦めてくださいローゼ様。バズーラ家も国の断罪を受けて終焉を迎えるのはさけれません。……もう、終わりにしましょうローゼ様。貴女の負けです」


「………」



すべてを理解したのかローゼは崩れ落ちるようにへたり込んだ。



「くっ、ふふふ………あっははははははは!!!」



突然ジェイルが声を上げて笑い出した。


肩を震わせてお腹を抱え、ヒィーヒィーいっている姿はローゼの側で佇んでいた執事とは思えないほどの砕けようだった。



「これはこれは………。まったくの予想外でしたよ。………まさかこんな形で全て露見するなんて! 本当に本当に驚きです。いやはや……。こんなに愉快にさせてくれるだなんて!」


「………ジェイル? あんた一体何を笑っているのよ! ロイド様とわたくし、そして可愛いマロリーの危機なのよ!? あんたもバズーラ家の執事ならわたくし達をどうにかして助けなさいよ!!」



ジェイルの変貌にローゼは困惑を覚える。この男は本当に自分の知っているジェイルなのか? 今のジェイルの口調も醸し出している雰囲気もまるで別人のようだ。それどころか声も変わってきているような……?



「そんな事を言われても私としても困っちゃいますよ。私って一介の使用人てだけだし。それにそれに私はちゃ~んと奥様に忠告しましたよ? もっとももっともあんた、見事なまでに無視してたけど!!」



ここでまたジェイルは爆笑する。



「第一に可愛い可愛いマロリーって。マロリー様は奥様がご懐妊したソニア様に対抗するために無理やり身籠もった子どもではありませんか。別にロイド様の血を引いている訳ではないのに奥様はよくマロリー様を可愛がられると。そのことだけは、私は感心しているのですよ?」



…………そして爆弾を投下した。



「……マジか」



実彩の呟きはここにいる全員の心境を表していた。



流石にこれは予想外だった。

マロリーはロイドの実子では無い?

つまり最初からマロリーにはバズーラ家を継ぐ資格はなかった。それどころかマロリーがロイドの実子ではなくローゼの不義の子なのだとしたらバズーラ家は、巧くすれば断絶は免れるだろう。見方によればバズーラ家はローゼとマロリー親子の犠牲者だ。


完全にバズーラ家から責が無くなる訳ではないだろうが、かなり軽くはなる。



本当に、どこまで『知って』いたんだ。あのタヌキ?



「ジェイルーーーーー!!!!」



ローゼの絶叫がジェイルの言ったことが真実であると証明してくれている。

リュカに至っては衝撃が強すぎたようだ。生ける石像再びである。………気をしっかり持て。



「では……。あの愚かも、んん!! マロリーの実の父親は誰なのです?」



当然の疑問である。

マロリーの実の父親は一体誰なのか?


ローゼに問いただしたくともジェイルの裏切りという名の暴露にちょっとした錯乱状態になってしまっており、あれでは話を聞くことは出来損ない。

ジェイルは取り乱しているローゼと困惑している実彩達をニヤニヤ観ている。



「んー……。どうやらアレをふんじばって聞いた方が早いみたいだぞクリストファー?  リュカは許量多過キャバオーバーで使い物にならないからな」


「……随分と酷い言い草ですね。ですがリュカ殿に下がって貰うのには賛成です。これ以上はリュカ殿にとって、負担が過ぎるでしょう」



二人は無言で獲物を構える。


まずは実彩によるニトでの先制。鋭く鈍い光を放ちながら真っ直ぐ飛翔する針は吸い込まれるようにジェイルに向かっていく────。


ニヤリとジェイルは軽々と実彩の放った針をあっさりと避けようとして─────。



「………甘いわ。ボケ」


「なっ……!?」



ジェイルがニトを避けきったと思った瞬間に針が一気に増殖した。



「ちょっとミーシャさん!? やり過ぎではないですか!!」


「……では、無いみたいだな」


「…………………え?」



クリストファーは息を飲んだ。嘘だ。あの大量の針をすべて避けきった……!?



「避けたんじゃねぇ…。あれは、魔法か………?」



針がジェイルに届く瞬間に消えたように見えた。

ジェイルはパンパンと服をはたく。



「嗚呼……。危ない危ないあやうく針山になるところでした。これがなければ大変でしたねー」



ジェイルが取り出して掲げて見せた物は手の平サイズの石版のようなものだった。


────何だ? あれは……。



「ふふふっ。驚いているみたいですねぇ……。それはそれは仕方がありませんよ。これは存在そのものが奇跡のようなものですからねー」



愉しげなジェイルに対して実彩は石版から目が離せなかった。



(なんだ……、あれは………)



実彩の眼には石版から放たれる途轍もない魔力の塊が見えた。放たれる魔力は実彩と暴走したリュカの魔法を軽く凌駕していた。



いや、違う。これは魔力ではない。

これは魔力とは似て非なる力だ。



実彩の中で警報が鳴り響く。あの力に、立ち向かってはいけない。……アレは自分達に手が終える類いのものではないあれは、決して触れてはいけない力だ──。



「オイコラ執事。それは一体何だ! 何なんだ、その力は!?」



取り乱した実彩にクリストファーの方が戸惑っている。実彩と違って石版の力が判らないクリストファーには実彩の慌てようが理解出来ないのだ。

だがジェイルの方は違う。ジェイルは目を丸くして何か感心しているようだった。



「驚いた……。君にはこの石版の力が判るのか………。やはりやはり私の見込み通りだった! 魔物とマロリー様を簡単に退けてただけのことはある」


「なるほどテメェか。リメスで魔物討伐の時にこそこそ私達を見ていたのは………チッ、やっぱりあの時、仕留め損ねてたか」


「一体なんの話ですか?」


「リメスでマロリーを取っ捕まえただろ。あの時、誰かの視線をずっと感じていたんだ。私もあん時は対して気にしていなかったから、今まで忘れてたわ」


「そういう大事な事を何で言わないんですか貴女は!」



あの時に誰かに見られていたなんて思っても見なかったクリストファーは実彩に怒鳴った。



「説教は後でいくらでも聞いてやるから先ずはコイツを拘束するぞ。特にあの石版には気を付けろ。………アレは相当ヤバい」



警戒する実彩にジェイルは愉しげに実彩に笑いかける。



「いいねいいね。やはり君はとてもいい。スカイもバズーラ家も中々楽しめたけどバレてしまった以上はもう潮時だからね。退散しようと思っていたんだけど………手土産はやっぱり欲しいんだよねぇ」



バッと石版を持つ手をジェイルは掲げる。

すると石版が輝きだし、光の刃が実彩達に襲いかかった。



「っつ! クリストファー! リュカと第二夫人を私の側に!!」



クリストファーはリュカと崩れ落ちていたローゼの腕を引っ張りすぐさま実彩の後ろへと回った。



「何をしているんですか、クリストファー殿! 貴方、ミーシャさんを盾にするつもりですか!?」


「貴方は知らないから無理もありませんがミーシャさんには攻撃を防ぐ術があるんです。上だろうが背後からだろうがミーシャさんには傷一つ付けることは適いません」



ローゼは光の刃を見て泣き叫ぶ。死の恐怖に矜持も何もかも殴り捨てて実彩の真後ろで膝を抱えている。リュカも黙って大人しく実彩の後ろに下がった。


全員が後ろに下がったのを確認した実彩はすぐさま結界を張り巡らせた。

ジェイルの光の刃は実彩の結界に弾かれて霧散する。半信半疑だったリュカもその光景に驚き声も出せずにいた。



「知ってますよ~。君のそれもとてもとても興味深いんですよねぇ。………だから、これならどうですか?」



石版から放たれる光は強さを増して光の刃は光の矢と形を変えて────放たれた。


嫌な予感がした実彩は結界に魔力を注いで更なる強化をしたのだが。



ピシッ、ピシピシ………パァアアアン!!



実彩の張った結界は弾け飛んだ。

実彩は目を見開きそして─────光の矢をその全身に受けることになった。

実彩の仮面は弾け飛び、身に纏っていた冒険者ローブは切り刻まれた────。







「ミーシャさぁぁぁん!!!!」







矢を全身に受けるさまを見たリュカが実彩の名前を必死に叫ぶ。

















今年はこれで最後になります。

皆様、来年も是非お会いしましょう。



それでは良いお年を~(^_^)ゞ

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