第24話
私はリュカとクリストファーにニトのことを懇切丁寧に説明した。
「この子は私の使い魔兼武器のニトだ。私が何時も投げている針があるだろ? アレだあれ」
プラーンとニトの首根っこを掴んで2人の前に出す。ニトは首根っこを掴まれたことに怒って私の手から逃れようとバタついている。
そして、私の説明に2人は快く納得───
「何を言っているんですか? 貴女は……」
「えっ…と、ミーシャさん。その言い訳は私もどうかと………。その子、どこから連れて来ちゃったんですか?」
しなかった。
クリストファーの呆れた視線とリュカの困った顔に私は内心、ムッカときた。
ほーう。私の言うことが信じらんねーということか。そうかそうか、では証拠を見せてやろうではないか。
私はニトを針に変えようとしたが………。
「キ、キッ!」
ニトがそれを拒絶した。
いや、ちったあ協力しろや。私は仮にもお前の主なんだが。掴んだこと怒っているのか?
でもさ、このままだとお前の立ち位置、愛玩動物兼非常食扱いにシフトチェンジだぞ?
嫌ならとっとと針に変われ、ニト。
「…………」
「…………」
1人と一匹の無言の対話にリュカとクリストファーはどこか呆れた風情を漂わせていたが、無言の対話に折れたニトがその姿を大量の針へと変えることによって驚愕に変わるのだった。
ふっ、勝った。
「これで納得したか? 2人とも」
文字通りブったまげたリュカとクリストファーの様子に思わず得意げになる実彩。
「「……………………………………………」」
あまりの出来事に飛んでいた魂が最初に戻ったのはクリストファーだ。
「ちょ、ミーシャさん!? 何なんですかコレは! どういうことですか!!」
実彩の両肩を掴んで揺さぶってくるクリストファーに実彩はため息をついて告げる。
「いや、見たまんまだよ。ニトは私の使い魔兼武器だっつーだけの話だ」
リュカは未だに魂が戻ってないのか、ぽへ~としている。
「じゃあ、話をもどすがリュカ。上の服脱いで背中向けろ」
「ほえ゛!」
「流しやがったこの女……!」
クリストファーが引きつり、私のセリフにリュカは正気を取り戻して再びあたふたし始める。
…………なんかもう、めんどくせーな。
「 い い か ら と っ と と 脱 げ 」
「ミーシャさん!?」
「貴女には恥じらいというモノがないんですか!!」
クリストファーの制止を無視し、抵抗するリュカの服を問答無用に剥いたのだった。
廃墟の中にシクシクとすすり泣く声が響く。
実彩の手によって服を剥かれたリュカは、実彩とクリストファーに背を向けて泣いていた。
一応、貴族に生まれたリュカには女性に服を剥かれるという事実にショックを隠しきれないようだ。
「男が何時までシクシク泣いてんだよ……。乙女じゃあるまいし、別に服を剥かれただけだろ。しかも上だけ」
「貴女みたいにおおざっぱで繊細の機敏が分からない人には分かりませんよ………まぁ、僕もちょっとクヨクヨしすぎだとは思いますが」
クリストファーはリュカに憐れみと呆れの視線を向ける。
それはそうと。
「………無いな」
ポツリと実彩はこぼした。
リュカの左肩の後ろには妖精の悪戯がなかった。実彩の予想ではリュカこそが第一夫人であるソニアの実の息子だと思っていたのだが。
(けど、だったらコレは何なんだ?)
左肩の後ろに痣は無かったが、代わりにそこから黒い靄の様なものが溢れ出ていた。リュカが纏っている黒い靄の発生源はここからのようだ。
実彩の目にしか映らない黒い靄に、どうしたものかと頭を悩ませるのであった。
実彩達はリュカに服を着せた後、改めてこれからの行動を決めようと頭を悩ませた。
「スカイを脱出するとしても………やっぱりあの私兵共が邪魔だよな」
「そうですね。第二夫人と亡くなった第一夫人のことも調べなくてはなりませわんし、やらなくてはならないことと比例して問題もたくさんありますし」
「………」
「鍋の具もどき………マロリーが王都に輸送されてから大分経つけど、スカイにはまだその情報が入ってきて無いようだが何故だ? そんなに時間が掛かるものなのか?」
後半はクリストファーに向けての質問だ。
「確かに………もうとっくに届いてもおかしくない筈なんですが、妙ですね」
「…………」
「もしかして、誰かが意図的に情報を止めているのか? だとしならここまであの馬鹿のことが伝わって無いのにも納得いくんだが………」
「でも、誰が止めているというのですか?」
「それは貴族間の事柄だろうが。お前が分からないのに私に分かる訳ないだろう」
実彩とクリストファーが話し合っている最中、リュカは部屋の隅で膝を抱えていた。
………心に負った傷は深かった。
「そもそも…………ん?」
唐突に実彩は眉を寄せて辺りを見回して、次の瞬間、しまった! と、叫んだかと思えば膝を抱えていたリュカに向かって走り出した。
実彩が走り出したと同時にリュカの周りとその下に幾何学模様の魔法陣が浮かび上がった。
「うっわあ!!?」
「これは!? 移転魔法陣!!」
「ちっぃ!」
実彩の伸ばした手は一歩遅く、リュカは魔法陣により放たれた光に捕らわれ瞬く間に姿を消してしまった。
「ちくしょう! やられた!!」
ドカッと床に拳を叩きつける実彩に、クリストファーは焦りと困惑に満ちた様子だ。
「移転魔法なんて、そんな高等魔術、一体誰が。特別なマジックアイテムがなければ使うことは不可能な筈なのに………!」
「知るか。つかアレって移転させるものに目印がなければ使えないはずだろ。いや、印はともかく、そんなもんがあるんだったら何で今まで使わなかったんだ? …………まぁ、いい。それより早くリュカを連れ戻さないとヤバい!」
リュカは第一夫人の子と証明こそ出来なかったが、第二夫人ローゼの口振りからリュカが何かしらの関わりがあるのは間違いない。
何としてもリュカを取り戻さなければ。




