【詩】「大きくなれ」「おいでおいで」
「大きくなれ」
ありふれている、
きのねもとから
はえだした
わかい枝に、
あたらしい葉が
はえている。
うす赤色と
うすみどりいろの
新しい芽。
これから
つよくなっていく
枝と葉は、
つめたいあめに
打たれるままに、
ふるえてよりそい、
ひかりの日をまつ。
夕ぐれに、
かあかあかあと
カラスがないたら、
ひとつせのびの
茜いろ。
めだたない面持ちの
すべての新芽よ、
くりかえす
ぎもんを超えて、
大きくなれ。
「おいでおいで」
おいでおいで。
散り切るまでの桜のきもち。
おいでおいで。
ゆれる海月のゆめごこち。
おいでおいで。
ひざをぬくめる若いねこ。
おいでおいで。
遠ざかっていく近しい思い。
おいでおいで。
かなしみですらなくなった思い。
おいでおいで。
春になったらおいでおいで。